成年後見人として預かった財産を横領した元弁護士の事件
2026年9月29日放送の「ザ!世界仰天ニュース」では、老後の資産を守る社会制度と、その財産管理を任された弁護士らによる使い込みが取り上げられます。日本テレビは、弁護士・司法書士・社会福祉士など社会的信用のある立場の人物による財産の使い込みをテーマにしています。
成年後見制度をめぐって近年大きな事件となったのが、広島の久行康夫元弁護士による業務上横領事件です。
久行元弁護士は、成年後見人などとして管理を任されていた財産から計6487万円を横領した罪に問われ、2026年6月1日に広島地裁から懲役5年の実刑判決を受けました。さらに刑事裁判に先立つ2026年3月には、広島弁護士会から除名されています。
この記事でわかること
- 久行康夫元弁護士が横領したと認定された金額
- 成年後見人という立場がどのように利用されたのか
- 広島弁護士会が除名に至った理由
- 捜査段階の約1億7000万円と判決の6487万円の違い
久行康夫元弁護士は6487万円横領で懲役5年
公式動画:Hiroshima News TSS「成年後見人として管理の財産6500万円を横領」
2026年6月1日、広島地裁は久行康夫元弁護士に懲役5年の実刑判決を言い渡しました。
判決で対象となったのは、成年後見人として資産管理を担当していた30代女性の口座から400万円を横領するなど、複数の人から合わせて6487万円を横領した事件です。
テレビ新広島の報道では、2018年から約6年間にわたり、成年後見人を務めていた女性などから業務上管理を任された財産、約6500万円を横領したとされています。
広島地裁は犯行について、約5年8か月という長期間にわたり常習的に行われたことを指摘しました。
さらに重要なのが、単なる金銭犯罪としてだけではなく、弁護士という立場と成年後見制度そのものへの信頼を損なった事件として評価されたことです。
成年後見人として女性の財産を管理していた
久行元弁護士は、成年後見人として本人の財産を管理する立場にありました。
成年後見制度では、認知症や知的障害などによって判断能力が十分でない人を支援するため、家庭裁判所が成年後見人などを選任します。
成年後見人は本人の預貯金などを管理するため、大きな権限を持つ一方、家庭裁判所による監督を受け、財産目録や後見事務報告書などを提出する必要があります。裁判所も専門職後見人に定期的な報告を求めています。
つまり、他人の財産を安全に守ることそのものが役割です。
久行元弁護士の事件では、その立場が逆に横領へ利用されました。
通帳の写しを偽装し家庭裁判所へ虚偽報告
事件をさらに重大なものにしたのが、財産管理状況を隠すための行為です。
広島弁護士会によると、久行元弁護士は2022年8月19日から2023年9月19日にかけ、成年被後見人の預金から合計836万1600円を着服しました。
そのうえで、財産が適切に保全されているように見せる報告書を作り、偽装した預金通帳の写しを添付して広島家庭裁判所へ虚偽の報告を繰り返していたとされています。
成年後見制度では、家庭裁判所への報告が財産管理をチェックする重要な仕組みになっています。
その報告自体が偽装されていた点は、この事件を考えるうえで非常に大きなポイントです。
広島弁護士会が久行康夫元弁護士を除名
広島弁護士会は2026年3月18日、懲戒委員会の議決に基づいて久行元弁護士を除名とする処分を決定しました。
処分は3月24日に効力を生じています。
広島弁護士会は、成年後見人として管理していた財産を着服し、さらに虚偽の報告を繰り返した行為について、弁護士としての品位を失う行為だとして除名処分を行いました。
そして約2か月後の6月1日、広島地裁で懲役5年の実刑判決が言い渡されました。
広島弁護士会も同日、元会員が業務上横領罪で懲役5年の判決を受けたことを受け、「弁護士の社会的信用を回復できるよう」再発防止に取り組むとの会長談話を公表しています。
約1億7000万円と6487万円は何が違うのか
この事件を調べると、「約6500万円」と「約1億7000万円」という2つの金額が出てきます。
ここは分けて考える必要があります。
2026年3月に広島県警が捜査を終結した段階では、警察が把握した一連の事件の被害総額は約1億7000万円に上るとされました。
追送検された容疑には、2015年から2023年に成年後見人として管理していた預金から計約9950万円を出金するなどした疑いも含まれています。警察は、横領した金が知人女性への援助や飲食代などに使われたとしていました。
一方、2026年6月1日の刑事判決で有罪認定の対象として報じられた横領額は6487万円です。
したがって、
- 警察が捜査段階で把握した一連の被害総額:約1億7000万円
- 6月1日の刑事判決で対象となった横領額:6487万円
という違いがあります。
「1億7000万円を横領して懲役5年」と単純につなげてしまうと、判決内容とは一致しません。
なぜ長期間続けることができたのか
この事件で大きな疑問となるのが、成年後見人には家庭裁判所への定期報告があるにもかかわらず、なぜ不正が長期間続いたのかという点です。
成年後見人は、本人の預貯金や収支などをまとめた財産目録や後見事務報告書を提出します。専門職後見人についても定期報告が必要です。
久行元弁護士のケースでは、広島弁護士会が認定した懲戒事実の中に、偽装した通帳の写しを家庭裁判所へ提出していたことが含まれています。
本来チェックのために存在する書類そのものが偽装されていれば、通常の報告確認だけでは異常を発見しにくくなることがあります。
だからこそ、この事件は「弁護士個人の横領」という問題だけでなく、他人の財産を専門職に預ける制度をどう監督するかという問題にもつながっています。
成年後見制度そのものが危険な制度という意味ではない
成年後見制度は、本人の判断能力が低下したときに財産や生活を守るための制度です。
後見人による不正を防止するため、家庭裁判所への定期報告に加え、ケースによっては後見監督人や後見制度支援信託・支援預貯金などを利用する仕組みもあります。
重要なのは「弁護士だから無条件に信用する」「家族だから安全」と考えることではありません。
本人の財産がどこに保管され、誰が動かすことができ、誰がチェックしているのかという仕組みそのものを確認できる状態にすることが、不正を防ぐうえで重要になります。
まとめ
久行康夫元弁護士は、成年後見人などとして管理を任された財産を横領した罪に問われ、2026年6月1日に広島地裁から懲役5年の実刑判決を受けました。
判決で対象となった横領額は6487万円。犯行は約5年8か月の長期間にわたり、裁判所は弁護士や成年後見制度に対する信頼を害したと指摘しました。
また、広島弁護士会が確認した事実では、成年被後見人の預金を着服したうえ、偽装した通帳の写しを使って家庭裁判所へ虚偽報告を繰り返していました。
2026年3月24日には弁護士会から除名されています。
財産を守るために選ばれた専門家が、その権限を利用して財産を奪う――成年後見制度における「信頼」と「監督」の両方の重要性を突きつけた事件です。
参考リンク
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