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UJ-CrystalのSiCウェハはAI×溶液成長法で高品質化 宇治原徹が進める名大発半導体技術|START UP!!

企業・新技術

UJ-Crystalが名古屋大学の研究からSiCウェハの実用化へ進むまで

2026年9月30日放送の東海テレビ「START UP!!」では、名古屋大学発のスタートアップ「株式会社UJ-Crystal」が登場します。

UJ-Crystalが取り組んでいるのは、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーなどで重要性が増しているパワー半導体向けのSiCウェハです。名古屋大学で長年研究されてきた「溶液成長法」にAI・機械学習を組み合わせ、高品質なSiC結晶を短期間で開発する技術を実用化へつなげています。

2025年には6インチP型SiCウェハなどの試作に成功し、2026年4月には溶液成長法による6インチP型SiCウェハのサンプル提供まで進みました。研究成果を論文だけで終わらせず、実際に産業で使えるウェハへ変えていく段階に入っています。

この記事でわかること

  • UJ-Crystalがどんな会社なのか
  • 宇治原徹教授が会社を設立した背景
  • 溶液成長法とAIを組み合わせたSiC開発の特徴
  • SiCウェハがEVや再生可能エネルギーで注目される理由

UJ-Crystalは名古屋大学発のSiCウェハ企業

出典:株式会社UJ-Crystal公式サイト

株式会社UJ-Crystalは、名古屋大学で培われてきた研究成果をもとに、パワー半導体用SiCウェハの開発・製造・販売を進めるスタートアップです。

会社は2021年6月25日に設立。本社は名古屋大学インキュベーション施設内にあり、代表取締役を宇治原徹さんが務めています。

SiCとは「Silicon Carbide(炭化ケイ素)」のことです。

現在の半導体で広く利用されているシリコンと比較すると、SiCは高温でも安定して動作しやすく、大きな電力を効率的に制御できる特徴があります。

そのため、

  • 電気自動車(EV)
  • 鉄道
  • エレベーター
  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 大電力を扱う産業機器

などで使用するパワーデバイスの材料として期待されています。

ただしSiCは、高性能である一方、結晶に欠陥が生じることで製造コストや歩留まりが課題になってきました。

UJ-Crystalが狙っているのは、その根本となるSiCウェハそのものを高品質化することです。

宇治原徹教授が2021年にUJ-Crystalを設立

代表取締役の宇治原徹さんは、名古屋大学で長年にわたりSiCの「溶液成長法」を研究してきた研究者です。

名古屋大学未来材料・システム研究所などでSiC結晶成長の研究開発を続け、その成果を社会へ届けるためにUJ-Crystalを設立しました。公式プロフィールでは、UJ-Crystalは宇治原さんにとって3社目のベンチャー企業とされています。

大きな転機となったのが、2021年に発表された直径6インチSiC単結晶の開発です。

当時、溶液成長法は欠陥の少ない高品質な結晶を作れる一方、大口径化が難しいという課題がありました。

実用化で求められる6インチサイズまで大きくするには、温度や材料、結晶成長条件など膨大なパラメータを最適化する必要があり、従来は10~20年ほどの開発期間が必要と考えられていました。

そこで名古屋大学の研究グループが導入したのがAIでした。

その研究成果を製造・販売へつなげる会社として誕生したのがUJ-Crystalです。

溶液成長法で欠陥の少ない高品質SiC結晶を作る

UJ-Crystalの核となる技術が溶液成長法です。

SiC結晶の製造では「昇華法」が広く利用されていますが、溶液成長法では高温で液化したシリコンを含む溶液から、種となる結晶の上へ少しずつSiCを成長させていきます。

名古屋大学の研究では、溶液成長法で作ったSiC単結晶は、従来の昇華法による結晶と比べて欠陥密度を1桁以上低くできることが示されています。

結晶の欠陥が少なくなることには大きな意味があります。

半導体デバイスを作る土台となるウェハの品質が上がれば、その上に作られるパワーデバイスの性能向上や製造時の歩留まり改善、コスト低減につながる可能性があるためです。

UJ-Crystalは公式サイトでも、溶液成長法によるSiCウェハについて、パワーデバイスの性能向上とコストダウンにつながる技術として位置付けています。

つまり、完成した半導体だけを改良するのではなく、半導体を作る最初の「結晶」から品質を上げるのがUJ-Crystalのアプローチです。

AI・機械学習で結晶成長条件を最適化

高品質な結晶を作れる溶液成長法にも、大きな難点があります。

結晶のサイズを大きくしながら品質を安定させるには、数多くの条件を調整しなければなりません。

そこでUJ-Crystalと名古屋大学が活用しているのが、AI・機械学習を使ったプロセスインフォマティクスです。

実験データを機械学習で解析し、有望な条件を効率的に絞り込みます。

さらにシミュレーションによって、実験中には直接見ることのできない炉の内部まで可視化。実験、AI、シミュレーションを組み合わせながら、より適切な結晶成長条件を探していきます。

この方法によって、かつて10~20年かかると考えられていた6インチSiC結晶の開発を、名古屋大学の研究グループは約2年で実現しました。

AIそのものがSiCを作るわけではありません。

職人のように条件を一つずつ試すだけでは膨大な時間がかかる材料開発で、AIを使って有望な条件を絞り込み、実験回数と開発期間を減らしているところがポイントです。

UJ-CrystalにとってAIは流行のために付け加えた技術ではなく、SiCを大口径化し、社会実装を早めるための重要な開発手段になっています。

6インチP型SiCウェハのサンプル提供を2026年に実現

研究成果が実際の製品へ近づいた大きな節目が2025年から2026年にかけて訪れました。

2025年9月、UJ-Crystalや名古屋大学などの開発グループは、

  • 6インチP型SiCウェハ
  • 6インチN型SiCウェハ
  • 8インチN型SiCウェハ

の試作成功を発表しました。

特に注目したいのがP型SiCです。

半導体には主にN型とP型があり、組み合わせることでさまざまなデバイスが作られます。

UJ-Crystalが採用する溶液成長法では、従来法では製造が難しかったP型SiCウェハにも取り組めることが強みの一つです。

そして2026年4月23日、UJ-Crystalは溶液成長法による6インチP型SiCウェハのサンプルを初提供したと発表しました。

「試作できた」段階から、外部へサンプルを提供する段階まで進んだことになります。

大学での基礎研究から始まった技術が、スタートアップを通じて実際の半導体産業へ近づいていることを象徴する動きです。

SiCウェハがEVや再生可能エネルギーの省電力化につながる理由

SiCが注目される理由は、単に新しい半導体材料だからではありません。

電気を変換・制御するときに発生するエネルギーロスを減らせる可能性が大きな理由です。

EVでは、バッテリーに蓄えられた電力をモーターへ送る際などにパワー半導体が使われます。

太陽光発電や風力発電でも、発電した電気を実際に利用できる状態へ変換・制御するためにパワー半導体が欠かせません。

SiCは従来のシリコンと比べ、

  • 高温で動作しやすい
  • 高い電圧を扱いやすい
  • 電力損失を抑えやすい
  • パワーデバイスを高性能化しやすい

といった特性があります。

自動車1台だけで考えれば小さな差に見えても、EV、鉄道、工場設備、電力網、再生可能エネルギーなど社会全体へ広がれば、電力損失削減の効果は大きくなります。

だからこそUJ-Crystalは、自社のSiCウェハ開発を単なる半導体ビジネスではなく、低炭素社会につながる技術として位置付けています。

UJ-Crystalの会社情報とSiCウェハの現在

UJ-Crystalは一般消費者向けの商品を販売するメーカーではなく、半導体産業向けにSiCウェハの開発・製造・販売を進める企業です。

現在確認できる基本情報は次の通りです。

  • 会社名:株式会社UJ-Crystal
  • 設立:2021年6月25日
  • 代表取締役:宇治原徹
  • 所在地:愛知県名古屋市千種区不老町・名古屋大学インキュベーション施設
  • 事業内容:パワー半導体SiCウェハの開発・製造・販売
  • コア技術:溶液成長法、AI・機械学習、シミュレーション
  • 2025年:6インチP型、6インチ・8インチN型SiCウェハの試作に成功
  • 2026年:6インチP型SiCウェハのサンプルを初提供

研究室で生まれた技術を、ウェハとして製造し、実際の産業へ届けるところまで担うのがUJ-Crystalの役割です。

まとめ

UJ-Crystalは、名古屋大学で長年研究されてきたSiCの溶液成長法を社会実装するため、2021年に設立された大学発スタートアップです。

中心となるのは、宇治原徹さんらが培ってきた欠陥の少ないSiC結晶を作る溶液成長法と、AI・機械学習によって膨大な結晶成長条件を効率的に探索する技術です。

約2年という短期間で6インチSiC結晶の開発を実現し、2025年には6インチP型などの試作、2026年には6インチP型SiCウェハのサンプル提供へ進みました。

EVや再生可能エネルギーの普及が進むほど、電力を効率的に制御するパワー半導体の重要性も高まります。

9月30日の「START UP!!」で注目したいのは、完成した半導体だけでは見えにくい、その土台となるSiC結晶そのものを変えようとしている名古屋発の技術です。

参考リンク


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