ミツカン新納豆トレーは3年半の開発で納豆容器の常識を変えた
2026年9月30日放送のテレビ朝日系『伝説の社員』では、「納豆パックの常識を覆し世界的な賞を受賞したアイデア」が取り上げられます。
その技術として注目されるのが、ミツカンと容器メーカーのコバヤシが共同開発した新しい納豆トレーです。
一見すると白い発泡トレーですが、従来の納豆容器で当たり前だった「リブ」と呼ばれる凹凸を減らし、持ちやすさ、混ぜやすさ、強度、環境負荷軽減を同時に実現しました。
中心となったミツカンの篠原正典さん、町川司さんらは、約130人の関係者と約3年半をかけて開発。20万個以上の検証を重ね、2025年9月の導入へつなげています。さらに2026年には世界包装機構の「ワールドスター賞」を受賞しました。
この記事でわかること
- ミツカン新納豆トレーが2025年9月に導入された理由
- 篠原正典さん・町川司さんらが開発で担った役割
- 約3年半かけて「必要」とされてきた凹凸を減らした経緯
- 世界賞の受賞と年間159トンのプラスチック削減につながる仕組み
新納豆トレーは2025年9月導入、混ぜやすさ・持ちやすさを改善

ミツカンが新しい納豆トレーを導入したのは2025年9月です。
開発の出発点にあったのは、納豆を食べる人が日常的に感じていた小さな使いにくさでした。
従来のトレーには、
- 容器が柔らかく持ちにくい
- 混ぜるときに安定しにくい
- 箸が底の凹凸に引っかかる
- 箸でトレーを突き破ることがある
- 納豆があふれて手につきやすい
- 内側の凹凸にネバネバが残って洗いにくい
といった課題がありました。
新トレーでは、内側と側面をより平らな形へ変更。底面がフラットになったことで箸が引っかかりにくくなり、側面にも指を当てやすいスペースが生まれています。
さらに内側の凹凸が減ったことで実質的に容器内の余裕も増え、納豆をかき混ぜたときに豆が外へあふれにくくなりました。洗うときにもネバネバが残りにくい構造です。
実用情報
新容器はミツカンの納豆商品に広く導入されていますが、公式サイトでは「北海道エリア生産品・丹精・味道楽・カップ」を除くと案内されています。
普段ミツカンの納豆を食べている人なら、以前の容器と比べて底面や側面の凹凸が少なくなっていることに気づきやすいでしょう。
篠原正典・町川司ら開発チームの役割
新容器の開発で中心となった1人が、ミツカン家庭用事業本部開発技術部開発技術4課の主任・篠原正典さんです。
ワールドスター賞の授賞式には、同じ開発技術4課の町川司さん、課長の佃知彦さんも出席しています。共同開発したコバヤシからは、代表取締役社長の小林剛さんと製造本部技術2部グループリーダーの及川政人さんが参加しました。
中でも町川さんの存在は、新容器の方向性を決める重要なポイントになりました。
町川さんは納豆チームへの配属直後から容器開発に参加。利用者へのグループインタビューを聞く中で、「容器が滑る」「ふにゃふにゃする」という声に注目しました。
そして容器の側面に縦方向のリブが入っていることに疑問を持ちます。
滑り止めなら横方向にあった方が自然ではないか。容器メーカー側からは、縦リブは強度を保つために必要だと説明されました。
それでも「持ちやすさ」を優先したい町川さんが篠原さんに相談したことから、「それならリブをなくしてみる」という発想へ進んでいきました。
篠原さんは技術面だけでなく、納豆工場、調達、SCM、マーケティングなど社内外の関係者との調整も進めました。
このプロジェクトに関わった人数は約130人。
1人の発明家が突然思いついた容器ではなく、利用者の声を拾った担当者、技術部門、商品開発部門、工場、容器メーカーなどが積み重ねた改良だったことが、新トレー開発の大きな特徴です。
約3年半かけて「必要だった凹凸」を減らした開発の転機
新トレー開発の最大の転機は、納豆容器では必要不可欠とされていた「リブ」を疑ったことでした。
従来の納豆トレーにある凹凸には、
強度を高める、空気を通しやすくして発酵を助ける、納豆を混ぜやすくするといった役割があると考えられていました。
そのため、「リブをなくす」という発想は単純なデザイン変更ではありません。
納豆の発酵や容器強度そのものに関わる変更でした。
ところが開発チームは、紙カップの納豆にはリブがなくても正常に発酵していることに着目します。
実際に検証を進めると、リブを減らして平らにしても発酵品質を保つことができ、さらに設計を工夫することで従来より強度を高められることも分かりました。
従来の容器は、PS(ポリスチレン)のシートを引き延ばして成形する過程で柔らかくなりやすい部分がありました。
そこで容器の形状や樹脂の使い方を見直し、少ない材料でも強度を確保できる形へ変更しています。
ただし、容器を変えれば完成というわけではありません。
納豆は容器の中で発酵する食品です。
新しい形でも工場で安定して生産できるのか、これまでと同じ品質で発酵するのかを確かめる必要がありました。
そのため20万個以上を使った検証が行われ、導入判断までに約3年。その後、実際の商品へ切り替えるまでさらに約半年を要し、約3年半のプロジェクトとなりました。
「ずっと使われている形だから必要なのだろう」で終わらず、本当に必要なのかをゼロから確かめ直したことが新容器誕生につながったのです。
2026年ワールドスター賞を受賞した納豆トレー
新しい納豆トレーは、使いやすさだけでなく国内外の包装コンテストでも評価されています。
まず2025年、日本包装技術協会が主催する「日本パッケージングコンテスト」で、最高賞「ジャパンスター賞」の1つである「共用品推進機構理事長賞」を受賞しました。
身体的な特性などにかかわらず、多くの人が操作・利用しやすく、安全にも配慮された包装として評価される賞です。
さらに2026年には、世界包装機構が主催する国際的なパッケージコンテスト「ワールドスター」で「ワールドスター賞」を受賞しました。
2026年のコンペには36か国から481件が応募し、そのうち234件がワールドスター賞を受賞しています。
審査では内容物の保護・保存性だけでなく、人間工学、持続可能性、取り扱いやすさ、材料の効率的利用、創造性、革新性などが評価されます。
ミツカンとコバヤシの新トレーは、持ちやすさや混ぜやすさだけではなく、軽量化と強度向上という一見すると相反する条件を両立させたことがポイントでした。
日本で日常的に使われている「納豆の白いトレー」が、世界的な包装賞へつながったことになります。
プラスチック159トン・CO₂958トン削減につながった新構造
新トレーのもう1つの大きな特徴が環境負荷の軽減です。
ミツカンの公表値では、トレーを軽量化したことで、2024年度の仕入実績を基に換算すると年間約159トンのプラスチック使用量削減につながります。
CO₂排出量では年間約958トンの削減です。
重要なのは、単純にトレーを薄くしたわけではないことです。
食品容器は材料を減らせば、その分だけ柔らかくなったり壊れやすくなったりする可能性があります。
今回の開発では形状そのものを見直し、樹脂を効率よく配置することで、軽量化しながら強度を高めました。
さらに新トレーの導入に合わせて、商品を束ねる帯フィルムも小型化。
こちらでも年間約18トンのプラスチックと、年間約151トンのCO₂削減が見込まれています。
つまり今回の新容器は、
「使いやすくしたら材料が増えた」のではなく、持ちやすく、混ぜやすく、強くしながら、使うプラスチックも減らしたことに技術的な価値があります。
利用者の小さな不満から始まった改善が、年間100トン単位の資源削減へつながったわけです。
まとめ
ミツカンとコバヤシが共同開発した新納豆トレーは、2025年9月から導入されました。
開発の中心となった篠原正典さん、町川司さんらは、「納豆容器には凹凸が必要」という業界の常識を疑い、約130人の関係者と約3年半をかけて形状を見直しました。
20万個以上の検証を経て、持ちやすさ、混ぜやすさ、洗いやすさを改善しながら、強度向上と軽量化も実現しています。
その成果は2025年の日本パッケージングコンテストに続き、2026年のワールドスター賞でも評価されました。
さらに年間約159トンのプラスチック、約958トンのCO₂削減につながる設計となっています。
普段は中身の納豆に目が行きがちですが、その下にある白いトレーにも、約3年半にわたる開発と「当たり前を疑う」発想が詰まっています。
参考リンク
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