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Carbon Xtractの30nm膜CO2回収技術、会議室の空気でレタスを育てるm-DAC【アンパラレルド】

企業・新技術

Carbon Xtractが30nmの膜で変えるCO2回収の常識

2026年10月7日放送のテレビ東京系「アンパラレルド~ニッポン発、世界へ~」に登場するのが、九州大学発のスタートアップ「Carbon Xtract(カーボンエクストラクト)」です。

同社が実用化を進めているのは、空気中のCO2を極薄の分離膜で直接取り出す「m-DAC®」。食品用ラップの約300分の1にあたる30nmほどの膜を使い、巨大プラントではなく、ビルや駅など身近な場所に置ける小型のCO2回収装置を目指しています。

すでに東京都内では、会議室の空気から回収したCO2を植物栽培へ利用する実証も進行中です。研究室で生まれたナノ膜が、CO2を「捨てるもの」から「その場で使える資源」へ変えようとしています。

この記事でわかること

  • Carbon Xtractとm-DAC®がどんな技術なのか
  • 30nmの分離膜で空気中のCO2を回収できる仕組み
  • 藤川茂紀CTOと森山哲雄CEOが事業化へ進んだ経緯
  • 会議室・植物工場などですでに始まっている実証

Carbon Xtractは空気中のCO2を膜で取り出す九州大学発スタートアップ

出典:Carbon Xtract公式「m-DAC技術イメージ」

Carbon Xtractは、2023年5月26日に設立されたスタートアップです。主要な活動拠点は福岡市西区の九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所に置かれています。

事業の核となるのが「m-DAC®(membrane-based Direct Air Capture)」です。DACは大気からCO2を直接回収する技術ですが、Carbon Xtractはその回収に分離ナノ膜を使います。九州大学は、空気を膜でろ過するだけでCO2を回収・濃縮するm-DAC®を「世界で初めて」の技術としています。

従来のDACは、大規模な設備を設置して大量の空気を処理する方式が中心です。一方、m-DAC®は小型モジュール化し、必要な場所に分散して置くことを目指しています。

つまり「CO2を集める巨大工場へ運ぶ」のではなく、ビルや駅、農業施設などで空気からCO2を取り出し、その近くで使うという発想です。Carbon Xtractはこれを「小型・分散型」のDACとして事業化しようとしています。

約30nmの分離膜がCO2を選択的に通す

技術の大きな特徴が、膜の薄さです。

藤川茂紀氏の研究室では、厚さ約30nmという極めて薄い分離膜を作り、CO2を選択的に透過させることに成功しています。研究室の説明では、そのCO2透過性は、それまで世界で報告されていた水準を20倍以上上回るとされています。

テレビ東京は今回使われる膜を、食品用ラップの約300分の1にあたる30nmのシリコーン樹脂膜と紹介しています。

膜を薄くするとガスが通過する距離を短くできます。ただ薄いだけでは破れやすく、実際の装置には使えません。藤川氏らが研究してきたのは、ナノメートル級の薄さを持ちながら、実際に扱えるサイズへ広げる分離膜です。

空気にはCO2だけでなく、窒素や酸素などさまざまな気体が含まれています。その中からCO2を選択的に通過させて濃縮できれば、空気そのものを原料にCO2を集められます。

この高い透過性が、装置を小さくするための重要なポイントになっています。

藤川茂紀は2012年から九州大学で分離ナノ膜を研究

Carbon XtractのCTOを務める藤川茂紀氏は、九州大学の主幹教授でもあります。

藤川氏は1999年に九州大学大学院工学研究科を修了。その後、米イェール大学で分子認識、理化学研究所でナノ材料の研究に携わり、2012年から九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所で新しい分離ナノ膜の研究を進めてきました。

研究の背景にあるのが「ユビキタスCO2回収」という考え方です。

CO2を特定の巨大施設だけで回収するのではなく、場所を選ばず空気から取り出せるようにする。そのためには、大型設備ではなく、小さくて扱いやすい回収技術が必要になります。

長年のナノ材料研究と分離膜研究がつながり、空気からCO2を直接回収するm-DAC®へ発展しました。

森山哲雄は双日の新規事業からCarbon Xtract設立へ

研究技術をビジネスへつなぐ役割を担うのが、代表取締役社長の森山哲雄氏です。

森山氏は2009年に筑波大学大学院システム情報工学研究科を修了し、同年に双日へ入社しました。情報システムや金属資源事業で投資管理、トレード、新規開拓などを経験した後、脱炭素分野の新規事業開発を担当しています。

九州大学と双日は2022年2月、m-DAC®とCO2転換技術の社会実装に向けた検討を開始しました。

研究を装置や事業へ発展させるには、技術開発の段階から実際に利用する企業との連携が必要になります。そこで2023年5月、双日を中心に九州大学の技術や株式会社ナノメンブレンとの連携を背景としてCarbon Xtractが設立され、森山氏は同年6月に代表取締役社長へ就任しました。

藤川氏が長年積み上げてきた「膜」と、森山氏が商社で培った事業開発が組み合わさったことが、研究室の技術を社会実装へ動かす大きな転機になっています。

会議室の空気からCO2を回収して植物へ戻す実証が進む

m-DAC®は研究段階だけにとどまっていません。

Carbon Xtractは清水建設、双日と連携し、東京都江東区にある清水建設の「温故創新の森NOVARE」でm-DAC®を試験導入しています。実証は2025年秋に始まり、最長で2028年度末まで行われる計画です。

ここで行われているのが、まさに「会議室の空気を資源にする」試みです。

会議室から取り込んだ空気をm-DAC®へ送り、CO2を選択的に分離・回収。そのCO2を同じ施設内の植物栽培プラントへ供給します。

人が呼吸によって吐き出したCO2を、その建物の中で植物の光合成に利用するという、閉じた炭素循環をつくろうとしているのです。

将来的にはオフィスビル、商業施設、駅などに小型装置を分散配置し、都市そのものをCO2の回収・利用拠点にする構想も描かれています。

JR弁天町駅では空気から回収したCO2で野菜を栽培

都市での実証は大阪でも行われました。

Carbon Xtract、JR西日本、スパイスキューブの3社は、JR大阪環状線・弁天町駅でm-DAC®と屋内植物工場を組み合わせた「Farmarium」を開発し、2025年3月から実証を開始しました。

空気中から回収したCO2を植物へ与えて光合成を促し、その場で野菜を育てる仕組みです。3社は、小型分散型DACで回収したCO2を植物工場で利用する取り組みを世界初としています。

ここがm-DAC®の将来像を理解するうえで重要です。

Carbon Xtractが目指しているのは、単に大気からCO2を減らす装置ではありません。回収したCO2を農業、炭酸飲料、微細藻類、炭酸泉などへつなぎ、「その場所で回収して、その場所で使う」仕組みまで含めて事業化しようとしています。

Carbon Xtractは研究から社会実装の段階へ

会社設立から約3年で、Carbon Xtractの取り組みは研究室から実際の都市空間へ移り始めています。

2026年6月には清水建設のNOVAREで都市実装実証の進捗を公表。8月にはプレシリーズAの資金調達を実施し、9月には「m-DAC®による低エネルギー・小型分散型CO2回収システム」の開発が評価され、第16回ちくぎんバイオベンチャー研究開発大賞を受賞しました。

現在の会社概要は次の通りです。

  • 社名:Carbon Xtract株式会社
  • 設立:2023年5月26日
  • 代表取締役社長:森山哲雄
  • 取締役兼CTO:藤川茂紀
  • 主要活動拠点:福岡市西区元岡744 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所第1研究棟
  • 事業内容:分離ナノ膜を使い、大気からCO2を選択的に回収する装置・製品の開発・販売
  • コア技術:m-DAC®
  • 主な実証分野:都市建物、植物工場、施設園芸など

30nmという目に見えないほど薄い膜から始まった技術が、駅、オフィス、農業へと実際の用途を広げています。

まとめ

Carbon Xtractのm-DAC®は、空気中のCO2をナノレベルの分離膜で直接回収し、小型・分散型の装置として使うことを目指した技術です。

その出発点には、藤川茂紀氏が長年続けてきた分離ナノ膜の研究があります。そこへ森山哲雄氏らによる事業開発が加わり、2023年にCarbon Xtractが誕生しました。

現在は、会議室の空気からCO2を回収して植物栽培へ利用する実証や、駅に設置した植物工場まで進んでいます。

「空気からCO2を取り出し、同じ街の中で再び資源として使う」。巨大なCO2回収施設とは異なるこの小型分散型の仕組みが、Carbon Xtractが描くm-DAC®の大きな特徴です。

参考リンク


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