3Dプリンターで「家をつくる」セレンディクスは量産段階へ
2026年9月26日放送のカンテレ『カズレーザーのウェルいいね!~あなたの企業のWELLを探します~』に登場するのが、3Dプリンター住宅を手掛けるセレンディクス株式会社と、共同創業者・CTOの飯田國大さんです。
セレンディクスは2022年、日本初となる3Dプリンター住宅を完成。続いて2人世帯向けの「serendix50」を開発し、愛知県小牧市では50㎡の住宅を44時間30分で施工しました。
さらに2024年には石川県珠洲市に販売第1号棟が完成。本体価格は税別550万円でした。
そして2026年、同社は研究開発中心の段階を抜け、3Dプリンター建築を「量産フェーズ」へ移しています。
この記事でわかること
- serendix50の本体価格と広さ
- 44時間30分で住宅を施工できた仕組み
- 3Dプリンター住宅が実際にどこまで普及しているのか
- セレンディクスが2026年に量産へ進んだ背景
セレンディクスは日本初の3Dプリンター住宅メーカー

出典:セレンディクス株式会社「serendix50販売第1号棟」
セレンディクス株式会社は、2018年に設立された兵庫県西宮市の企業です。
目指しているのは、建設用3Dプリンターを使って住宅建築のコストと時間を大きく減らすこと。
2022年3月、愛知県小牧市で日本初となる3Dプリンター住宅「serendix10」を完成させました。
このとき施工開始から完成までにかかった時間は23時間12分。
約20トンの躯体を組み上げる工程だけなら約3時間で完了しました。
住宅というと、基礎工事から大工による建築まで数カ月かけて完成させるイメージがあります。
セレンディクスが取り組んでいるのは、その工程の多くをデジタル化・ロボット化する新しい建築方法です。
serendix50は50㎡の1LDKで本体価格550万円
セレンディクスが次に開発したのが、2人世帯向けの「serendix50」です。
名前の「50」が示す通り、延床面積は約50㎡。
販売第1号棟となった石川県珠洲市の住宅は、平屋建ての1LDKで、
- リビング・ダイニング
- ベッドルーム
- キッチン
- トイレ
- バスルーム
を備えています。
建築基準法に適合した壁式鉄筋コンクリート造で、検査済証も発行されています。
この販売第1号棟で公表された本体価格は、税別550万円です。
ただし、この550万円だけで土地を含めた住宅一式が完成するという意味ではありません。
基礎、内装、電気工事などは別途必要とされています。
そのため「550万円で土地も工事も含めて家が手に入る」と捉えないことが重要です。
それでも50㎡の1LDKという住宅を、従来とはまったく違う製造方法で低価格化しようとしている点がserendix50の大きな特徴です。
愛知県小牧市では44時間30分で施工した
serendix50を大きく知らしめたのが、2023年に愛知県小牧市で行われた建設です。
完成したのは50㎡の平屋住宅。
施工開始から完成までは、わずか44時間30分でした。
3Dプリンター住宅という名前から、巨大なプリンターが建設予定地へやって来て、その場で家全体を一気に印刷する姿を想像するかもしれません。
実際には、3Dプリンターで作った建築部材を活用しながら、現場で組み上げて住宅にしていきます。
デジタルデータをもとに形を出力できるため、複雑な曲面なども作りやすいことが特徴です。
serendix50の外壁を見ると、一般住宅とは違う独特の横方向の模様があります。
これは建設用3Dプリンターで材料を一層ずつ積み重ねた際に生まれる「積層痕」です。
販売第1号棟では、この積層痕を隠すのではなく、外観デザインの一部として生かしています。
なぜ3Dプリンター住宅は短時間で作れるのか
セレンディクスが目指しているのは、単に珍しい形の住宅を作ることではありません。
大きな狙いは建築工程の省人化です。
従来の住宅建築では、多くの職人が現場へ入り、それぞれの工程を順番に進めていきます。
一方、3Dプリンター建築ではデジタルデータを使って部材を自動的に製造できます。
工場であらかじめパーツを出力しておけば、現場ではそれを組み立てる工程へ集中できます。
建設現場で作業する時間を短縮できれば、
- 職人不足への対応
- 人件費の削減
- 工期短縮
- 品質の安定
- 複雑な形状への対応
といった効果が期待できます。
住宅を「職人が一から作るもの」から、「デジタルデータから製造するもの」へ変えようとしているわけです。
最初の販売住宅は能登半島・珠洲市に建てられた
serendix50の販売第1号棟が完成したのは2024年。
場所は石川県珠洲市でした。
能登半島地震の被災地域です。
建てられた住宅は、夫婦2人程度の生活を想定した50㎡の1LDK。
セレンディクスは、この建物を復興住宅のモデルとして位置づけました。
3Dプリンター住宅には「短時間で建設できる」という特徴があります。
このメリットは、一般住宅を安く作る場合だけでなく、災害後に大量の住宅や施設が必要になる場面でも生かせる可能性があります。
セレンディクスは現在、住宅以外にも災害対応施設を3Dプリンター建築の対象分野としています。
2026年に「研究開発」から「量産」へ移行
セレンディクスにとって大きな転換点となったのが2026年です。
同社は2026年6月、3Dプリンター建築事業について、研究開発フェーズから量産フェーズへ移行したと発表しました。
つまり、「3Dプリンターで本当に建物を作れるか」を実証する段階から、実際に数を作って供給する段階へ進んだということです。
2026年7月末までの期では、住宅とインフラ関連施設を合わせた受注数を38件、竣工棟数を10数件以上と見込んでいます。
さらに今後、
- 1~2年で累計100棟超
- 5年で年間1000棟超
の建築を目標としています。
数年前までは「未来の住宅」として紹介されることの多かった3Dプリンター住宅ですが、セレンディクス自身はすでに量産を前提とした事業へ移り始めています。
住宅だけでなく駅舎やインフラへ広がっている
3Dプリンター建築の用途も変化しています。
当初は住宅が中心でしたが、現在は住宅だけを狙った技術ではありません。
セレンディクスが対象としている分野には、
- 3Dプリンター住宅
- 公共インフラ
- 商業施設
- 橋梁・高速道路関連
- 災害対応施設
- 防爆施設・防爆シェルター
などがあります。
2025年にはJR西日本グループと共同し、和歌山県有田市のJR紀勢本線・初島駅で3Dプリンター技術を使った駅舎も建設しました。
住宅を短時間で作るために開発した技術が、社会インフラそのものを作る技術へ広がっています。
50㎡330万円からの「serendix5」は完成住宅の価格ではない
セレンディクスには、もう一つ注目される価格があります。
それが330万円からです。
2025年12月、同社は大阪・関西万博で使ったモデルをベースにした「serendix5」シリーズのキット販売を開始しました。
50㎡モデルは税込330万円から。
ただし、ここはserendix50の550万円と混同しないよう注意が必要です。
330万円からという価格は、50㎡モデルの壁10パーツを提供する住宅キットの価格です。
完成住宅そのものが330万円という意味ではありません。
セレンディクスはこうしたキット販売も通じ、3Dプリンター建築を各地の建築会社が導入できる仕組みを広げようとしています。
完成住宅を自社だけで大量に建てるのではなく、デジタル建築技術そのものを全国へ広げる方向にも進んでいます。
飯田國大さんはセレンディクス共同創業者・CTO
『カズレーザーのウェルいいね!』に登場する飯田國大さんは、セレンディクスの共同創業者でCTO、最高技術責任者です。
番組では、世の中を良くするユニークなサービスを展開する企業の一人としてリモート出演します。
セレンディクスが掲げてきた大きなテーマの一つが、住宅ローンに長期間縛られない住宅を作ることです。
住宅価格を下げるため、建設現場のロボット化とデジタル化を進めてきました。
2022年には1日以内で住宅を施工。
2023年には50㎡の2人世帯向け住宅を44時間30分で施工し、2024年には販売第1号棟が完成。
そして2026年には量産段階へ入りました。
わずか数年で「実験的な住宅」から「実際に供給する建築事業」へ進んできたことになります。
セレンディクス・serendix50の実用情報
- 会社名:セレンディクス株式会社
- 設立:2018年8月
- 本社:兵庫県西宮市甲陽園目神山町1番1号
- 代表取締役CEO:小間裕康
- 共同創業者・CTO:飯田國大
- 事業内容:3Dプリンター住宅・建築物の開発、販売
- serendix50:2人世帯向け3Dプリンター住宅
- 延床面積:約50㎡
- 間取り:1LDK
- 販売第1号棟の本体価格:税別550万円
- 基礎・内装・電気工事など:別途
- 小牧市モデル施工時間:44時間30分
- 販売第1号棟:石川県珠洲市
- 2026年:3Dプリンター建築事業を量産フェーズへ移行
まとめ
セレンディクスの「serendix50」は、約50㎡・1LDKの2人世帯向け3Dプリンター住宅です。
愛知県小牧市では44時間30分で施工し、2024年に完成した石川県珠洲市の販売第1号棟では、本体価格が税別550万円とされました。
ただ安い住宅を作るだけではなく、建設用3Dプリンターによって建築現場の省人化と工期短縮を進めることがセレンディクスの狙いです。
2026年には研究開発段階を終え、量産フェーズへ移行。
今後1~2年で累計100棟超、5年後には年間1000棟超という目標を掲げています。
数年前まで「未来の住宅」として注目されていた3Dプリンター住宅が、住宅、復興、駅舎、インフラへと実際の建築物として広がり始めています。
『カズレーザーのウェルいいね!』で紹介されるセレンディクスは、家そのものだけでなく「家の作り方」を変えようとしている企業です。
参考リンク
・セレンディクス「serendix50販売第1号棟が珠洲市に完成」
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