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ジェコス「モバイルブリッジ」約70分で架ける17.3mの緊急仮設橋!山留工事と広島大学との開発秘話|知られざるガリバー

企業・新技術

ジェコスのモバイルブリッジは油圧で伸びる災害復旧用の緊急仮設橋

地震や豪雨で橋が流され、道路が寸断されたとき、折り畳んで運んできた橋を現場で伸ばして架ける。そんな技術を実用化へと進めている企業が、東京都文京区に本社を置く「ジェコス株式会社」です。

2026年10月10日放送の『知られざるガリバー』では、建設現場を地下から支えるジェコスの「山留工事」や精密な鉄骨加工、さらに災害時の緊急仮設橋「モバイルブリッジ」が取り上げられます。

モバイルブリッジは、はさみのように連結した構造を油圧で広げ、約17.3mの距離をつなぐ橋です。架設準備を含め約70分、最少2人という施工例が示されています。

一般にはあまり知られていない会社ですが、建設現場の安全から災害復旧まで、私たちの暮らしを足元から支える技術を持っています。

この記事でわかること

  • モバイルブリッジの大きさ・設置時間・必要人数

  • 油圧で伸びる橋の仕組みと災害時の利用方法

  • 広島大学の有尾一郎さんとジェコスによる開発の歩み

  • ジェコスの会社概要と山留工事・鉄骨加工の技術

モバイルブリッジは約70分で設置できる伸縮式の橋

公式動画:広島大学によるモバイルブリッジ4号機の架設・車両走行実証実験

ジェコスが扱う「モバイルブリッジ」は、災害などで橋が使えなくなった場所に、短時間で通行経路を確保するための緊急仮設橋です。

最大の特徴は、現場で橋の部材を1本ずつ組み立てるのではなく、折り畳んだ状態から油圧で伸ばして橋を架けられることです。

ジェコスが公開している仕様は次のとおりです。

  • 正式名称:緊急仮設橋 モバイルブリッジ®

  • 取り扱い企業:ジェコス株式会社

  • スパン(支点間の距離):17.3m

  • 橋の全長:20.8m

  • 通行可能な幅:1.88m

  • 有効高さ:1.92m

  • 本体重量:13t(発電機を除く)

  • 架設作業の最少人数:2人(機械オペレーターを含む)

  • 架設準備の目安:約60分

  • 橋の展開・収縮:約10分

  • 施工時間の目安:合計約70分

  • 耐荷重の目安:1スパンに乗用車3台

約70分という数字は、ジェコスの設置フローに示された施工例です。

現地確認や搬入、地盤・支持部の条件を整える工程まで含め、どの災害現場でも70分で開通できるという意味ではありません。

それでも、現場で大がかりな組み立てを行うことなく、橋そのものを伸ばして架設する仕組みは、従来の仮設橋と大きく異なります。

片側の岸から展開できるシザーズ構造

モバイルブリッジの中心となるのが「シザーズ構造」です。

シザーズは英語で「はさみ」を意味します。

橋の骨組みには、X字形に組み合わされた部材が連続して使われています。

折り畳んだときには部材が重なってコンパクトになり、油圧装置を動かすと、はさみが次々に開くように橋が伸びていきます。

昔からある伸縮式のマジックハンドを、橋の構造に応用した形です。

この仕組みには、災害時に役立つ重要な特徴があります。

対岸に作業員や大型の架設機械を配置しなくても、片側の岸から橋を伸ばせることです。

災害で橋が壊れた場所では、向こう岸へ渡ること自体が困難になります。

通常の橋梁工事では、橋桁を支える大型クレーンや、両岸での作業が必要になる場合があります。

一方、モバイルブリッジは片側から展開できる構造を採用しています。

橋の骨組みと通行部分が連動して伸びるため、展開後には車両が通行できる経路を確保できます。

また、主要な構造部材にはアルミ合金を採用し、重量を抑えています。

鉄だけを用いた重い構造ではなく、必要な強度を確保しながら運搬や展開をしやすくしている点も特徴です。

橋の架設に必要な4.4mの幅と6mの高さ

モバイルブリッジは、どこでも自由に伸ばせる橋ではありません。

ジェコスの資料では、架設条件の例として次の数値が示されています。

  • 橋を設置する区間:約17m

  • 機械を設置するために必要な幅:4.4m

  • 搬入・架設時に確保する高さ:6m

  • 橋を支える場所:盛土や土のうなどで支持条件を整える

橋の本体は自立式で、現場での荷降ろしに重機を必要としない構造です。

ただし、橋を支える地盤が安全かどうか、必要な長さが確保できるか、通行させる車両に対応できるかといった確認は欠かせません。

モバイルブリッジは、恒久的な道路橋に置き換わるものではなく、災害発生後に必要な交通経路を早く確保するための技術です。

この役割の違いが、開発の出発点にもつながっています。

広島大学の有尾一郎が2009年に折り畳める橋の原型を開発

モバイルブリッジの研究は、ジェコスが製品化に関わる以前から続いてきました。

技術の出発点となったのは、広島大学の研究者・有尾一郎(ありお・いちろう)さんらによる研究です。

2009年、広島大学は、折り畳みと伸縮ができる橋の原型プロトタイプを完成させました。

当時の試作橋は幅約0.5mで、長さを約0.5mから6mまで伸縮できるものでした。

現在のように乗用車が通行できる大きな橋とは異なり、伸縮構造が実際の橋として成立することを確かめるための研究段階でした。

しかし、この段階ですでに、災害復旧という明確な目的がありました。

地震や豪雨によって道路や橋が使えなくなった際、救援活動や物資輸送に必要な経路をできるだけ早く確保することです。

一般的な橋を新たに架けるには、資材の搬入、橋の組み立て、支持部分の施工などが必要になります。

災害直後には大型重機が現場へ入れない場合もあり、通常の方法では時間がかかります。

そこで、あらかじめ折り畳んでおいた橋を運び、短時間で伸ばすという発想が研究されてきました。

2013年の公開実験から2015年の4号機へ

2009年の原型完成後も、モバイルブリッジの開発は続きました。

2013年には、油圧システムを備えた実験橋の公開実験が行われています。

X字形の部材を連続させた構造によって、橋の伸縮と強度を両立する技術が試されました。

さらに2015年には、広島県福山市本郷町の本郷川河川敷で、モバイルブリッジ4号機の実証実験が実施されました。

この実験では、実際に現場へ橋を搬入し、架設して車両を通行させ、撤収するまでの工程が確認されています。

特に重要だったのが、クレーンを使わない自立展開です。

災害時の現場を想定し、片側の岸から少人数で橋を伸ばして架ける方法が実証されました。

橋が伸びるだけでなく、実際の車両が渡れることまで確認された段階です。

この研究には、広島大学に加えて日本建設機械施工協会施工技術総合研究所、アルミ関連企業などが参加してきました。

大学の研究成果を、災害復旧に使う実用的な設備へ近づけていく取り組みが長年続いています。

ジェコスが2020年から実用化の共同研究に参加

モバイルブリッジの開発が新たな段階へ進んだのが2020年です。

ジェコスは広島大学とともに、モバイルブリッジの実用化に向けた共同研究を進めました。

ジェコスには、工事現場の仮設橋や鋼材を扱ってきた経験があります。

研究室で橋を伸ばせることと、実際の道路や河川で安全に使えることは同じではありません。

どのような場所へ搬入するか、どのように橋を支えるか、必要な施工条件をどう整えるか。

こうした実際の工事で必要になる技術や知識が、製品化には欠かせません。

ジェコスは長年培ってきた仮設橋梁の経験を生かし、研究段階から実用化へ向けた開発に取り組みました。

2025年には、広島大学・信州大学との共同研究開発案件として、モバイルブリッジの実機を防災関連の展示会へ出展する取り組みも進めています。

長年の大学研究で生まれた伸縮する橋が、建設会社や自治体などの防災需要に応える技術へと発展してきました。

ジェコスは何の会社か、1968年創業の重仮設の専門企業

ジェコス株式会社は、建設現場で使われる仮設鋼材のリースや販売、加工、施工を手がける企業です。

会社の基本情報は次のとおりです。

  • 会社名:ジェコス株式会社

  • 英文社名:GECOSS CORPORATION

  • 設立:1968年6月20日

  • 本社:東京都文京区後楽2-5-1

  • 代表取締役社長:野房喜幸さん

  • 上場市場:東京証券取引所プライム市場

  • 証券コード:9991

  • 従業員数:単体764人、連結1,762人(2026年3月31日現在)

  • 主な事業:仮設鋼材の賃貸・販売、加工製品の製作、仮設橋梁、基礎工事など

1968年に「山本建材リース」として事業を始め、建設現場へ資材を供給する仕事を発展させてきました。

ジェコスが扱うのは、一般家庭で目にする商品ではありません。

ビルや駅、道路などを建設するために必要な鋼材や設備です。

完成した建物からは見えなくなるものも多く、会社名が一般に知られる機会は限られています。

しかし、高層ビルを建てるための地下工事や、道路・鉄道の整備では、こうした仮設資材が重要な役割を担います。

山留工事は地下を掘る際に周囲の土を支える仕事

ジェコスの中心事業の1つが「山留工事(やまどめこうじ)」です。

山留工事とは、建物の地下部分などを造るために地面を深く掘ったとき、周囲の土が崩れないように支える工事です。

例えば、地下駐車場のある大きなビルを建設する場合、建物の基礎や地下階を造るために地盤を掘り下げます。

何も対策をせずに掘ると、周囲の土が崩れたり、近くの道路や建物に影響を与えたりする危険があります。

そこで、鋼矢板やH形鋼、山留材と呼ばれる資材を組み合わせ、土を支える構造を造ります。

ジェコスは、その資材の供給だけでなく、工事の設計や施工も担っています。

つまり、単に鉄を貸し出す会社ではありません。

地下工事を安全に進めるための仕組みを、計画から施工まで支える会社です。

都市部の再開発では、周囲に建物や道路がある状態で地下深くを掘ることもあります。

そのため、現場ごとの地盤条件や建物の配置に応じた施工技術が求められます。

長沼工場と大阪工場で担う精密な鉄骨加工

ジェコスは、鋼材の加工にも力を入れています。

加工事業の主な拠点は、千葉県の長沼工場と大阪府の大阪工場です。

全国の提携工場とも連携し、工事現場に必要な加工製品を提供しています。

建設現場で使われる鉄骨は、ただ大きく頑丈であればよいわけではありません。

部材同士を正確につなぎ、設計どおりの位置へ設置できる精度が必要です。

ジェコスでは、ミリ単位の精度が求められる鉄骨加工にも対応しています。

扱う製品には、仮設橋梁の部材、駅のプラットホームに関わる鋼製部材、トンネル工事用の設備、橋梁関連の加工品などがあります。

また、山留工事だけでなく、老朽化した橋の架け替えやメンテナンスにも事業を広げています。

モバイルブリッジのような緊急用の橋と、長期間使う本設橋梁では用途が異なりますが、どちらにも鋼材加工や橋梁施工の技術が関わっています。

地下を支える仕事から橋を架ける仕事へ。

ジェコスの事業が広がっている背景には、仮設鋼材を扱い続けてきた技術の蓄積があります。

実用情報|モバイルブリッジの問い合わせ先と一般販売

モバイルブリッジは、防災・建設分野で使う専門設備です。

家庭向けの商品として通販サイトなどで購入するものではありません。

製品・施工に関する問い合わせ

  • 企業:ジェコス株式会社

  • 担当部門:加工・橋梁事業本部 橋梁事業部

  • 電話番号:03-6699-7416

  • 製品名:緊急仮設橋 モバイルブリッジ®

  • 主な用途:災害時の緊急通行経路の確保

  • 橋の規模:スパン17.3m、橋長20.8m

  • 施工時間:設置条件を整えた施工例で約70分

  • 価格:一律の公開販売価格はなく、具体的な条件は問い合わせが必要

使用を検討する場合には、橋を架ける区間の長さ、地盤の状態、搬入経路、通行させる車両など、現場ごとの条件確認が必要です。

企業の詳細や採用情報は、ジェコス公式サイトで確認できます。

まとめ

ジェコス株式会社は、建設現場の仮設鋼材や山留工事、精密な鉄骨加工を通じて、日本の都市開発やインフラを支える企業です。

その技術を災害復旧へ応用した取り組みの1つが「モバイルブリッジ」です。

折り畳んで運搬できる橋を、油圧によって片側の岸から伸ばして架ける仕組みを持ち、最少2人、準備を含め約70分という施工例が示されています。

開発の源流には、2009年から原型の研究を進めてきた広島大学の有尾一郎さんらの取り組みがあります。

ジェコスは2020年から実用化の共同研究に加わり、大学で生まれた技術を現場で使える設備へ発展させてきました。

普段は完成した建物や橋の陰に隠れている技術が、災害時には失われた交通経路をつなぎ直す役割も担います。

建設現場を支えてきた専門企業が、防災・減災という新しい分野へ技術を広げている事例です。

参考リンク

  • テレビ東京『知られざるガリバー』2026年10月10日放送・ジェコス特集

    テレ東・BSテレ東 7ch(公式)

     

  • ジェコス公式|緊急仮設橋モバイルブリッジ製品資料・設置条件(PDF)

    ジェコス株式会社

     

  • 広島大学|モバイルブリッジ4号機の実証実験と開発の歩み

    広島大学

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