アークエッジ・スペースは超小型衛星を年間9機も宇宙へ送り出した日本の宇宙ベンチャー
宇宙へ人工衛星を打ち上げるには、莫大な費用と長い開発期間が必要。そんな常識を変えようとしている日本企業が、東京都江東区に本社を置く「株式会社アークエッジ・スペース」です。
2026年10月10日放送の『MIRAI JAM』では、1年間に9機の超小型衛星を軌道投入・運用開始した同社と、代表取締役CEOの福代孝良(ふくよ・たかよし)さんが登場します。
開発を支えているのは、衛星の設計を共通化して効率よく製造する仕組みと、高価な宇宙専用部品への依存を減らす技術です。
さらに福代さんは、かつて南米のアマゾンで森林管理に携わり、アフリカでの国際協力にも取り組んできた異色の経歴を持っています。
人工衛星を作ること自体ではなく、宇宙技術を使って地上の問題を解決する。その考え方が、現在の事業へとつながっています。
この記事でわかること
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アークエッジ・スペースが1年間で衛星9機を運用開始した実績
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車載用電子部品を利用して開発コストを抑える仕組み
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CEO福代孝良さんの経歴と宇宙事業を始めた転機
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衛星の製造拠点・事業内容・地球観測や海洋通信への活用
アークエッジ・スペースは2024年12月から1年間で衛星9機を運用開始
公式動画:アークエッジ・スペース公式会社紹介動画
アークエッジ・スペースが注目される大きな理由は、超小型衛星を継続的に開発し、打ち上げる体制を作り上げたことです。
同社は2024年12月から2025年11月までの12か月間に、合計9機の衛星を軌道へ投入し、運用を開始しました。
日本の機関・組織による12か月間の軌道投入・運用開始数として、同社調べで過去最多の実績です。
さらに2026年4月時点では、開発・運用に携わった衛星が累計18機に達しています。
主な実績
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会社設立:2018年7月
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2024年12月~2025年11月:衛星9機を軌道投入・運用開始
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2025年1月:シリーズBで約80億円を調達
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2025年11月:福代孝良さんが「日本の起業家ランキング2026」1位に選出
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2026年4月:第7回宇宙開発利用大賞でJAXA理事長賞を受賞
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2026年9月:自社開発コンピューターの宇宙実証成功を発表
従来の大型人工衛星は、専用部品を数多く使い、長期間かけて開発するのが一般的でした。
それに対してアークエッジ・スペースは、超小型衛星の設計を標準化し、異なる用途の衛星でも共通の技術を利用できる仕組みを構築しています。
この方法によって、毎回すべてを一から設計する負担を減らし、複数機を並行して開発・製造できるようにしています。
高価な宇宙専用部品の代わりに車載用部品を活用
アークエッジ・スペースの技術で特徴的なのが、人工衛星の内部に搭載するコンピューターです。
2026年9月7日、同社は自社開発した「オンボードコンピューター(OBC)」の軌道上実証に成功したと発表しました。
OBCとは、人工衛星の機器を制御し、地上から送られてくる指令を処理する重要なコンピューターです。
人工衛星は宇宙へ打ち上げると、地上の工場へ戻して簡単に修理することはできません。
また、宇宙空間では放射線や大きな温度変化にさらされるため、電子部品には高い信頼性が求められます。
そのため、通常は高価な宇宙用電子部品が使われることがあります。
しかし、アークエッジ・スペースは、新たに開発したOBCで別の方法を採用しました。
高価で入手しにくい宇宙用部品への依存を減らし、品質と供給体制が整った車載グレードの電子部品を利用したのです。
車載グレードとは、自動車などで使うことを想定し、品質や信頼性について一定の基準を満たす部品のことです。
この部品選定と独自の設計によって、部品の安定調達と製造コストの削減を実現しています。
ただし、人工衛星のすべてを安価な自動車部品で作っているわけではありません。
車載グレードの部品を採用したのは、自社開発OBCの重要な特徴です。
宇宙という厳しい環境に対応できるかどうかは、実際の運用で確かめる必要があります。
1年以上宇宙で安定動作、地上からソフトウェアの全面更新にも成功
新しいOBCが搭載されたのは、2025年6月24日に打ち上げられた超小型衛星「AE2a」です。
AE2aは、SpaceXのFalcon 9ロケットによって軌道へ運ばれました。
アークエッジ・スペースは、この衛星に開発したOBCを実証機器として搭載し、宇宙空間での動作を確認してきました。
実証では、次の成果が得られています。
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1年以上にわたる軌道上での安定動作
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OBCに起因する異常リセットが発生しないことを確認
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放射線によるメモリエラーへの訂正機能を確認
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温度上昇による動作上の問題がないことを確認
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地上から送信したデータによるソフトウェアの全面更新に成功
特に注目したいのが、打ち上げ後のソフトウェア更新です。
宇宙にある人工衛星へ地上からデータを送り、コンピューターのソフトウェアを書き換える技術です。
アークエッジ・スペースのOBCは、ソフトウェアを保存する領域を2系統備えています。
使用していない側の領域へ新しいソフトウェアを書き込み、内容を確認した後に切り替えることで、更新時のリスクを減らします。
この技術があれば、打ち上げ後でもソフトウェアの修正や機能追加ができます。
開発した技術を実際の宇宙空間で試し、その結果を次の人工衛星へ反映できることも、開発速度を高める重要な要素です。
福代孝良は東京大学大学院から南米の森林研究へ進んだ経営者
アークエッジ・スペースを率いる福代孝良さんは、もともと人工衛星の製造を専門としてきた技術者ではありません。
東京大学大学院を修了後、JICAの専門家として南米で自然資源管理に携わりました。
アマゾン地域の森林管理など、自然環境に関わる国際協力の仕事を経験しています。
その後は外務省を経て、内閣府の宇宙政策関連部門でアジアやアフリカ、中東、南米との国際協力に携わりました。
福代孝良さんの主な経歴
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東京大学大学院修了
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JICA専門家として南米で自然資源管理に従事
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外務省で国際協力に関わる
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内閣府で宇宙分野の国際協力を推進
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東京大学特任准教授などを歴任
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2018年に宇宙関連スタートアップを設立
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現在はアークエッジ・スペース代表取締役CEO
福代さんの経歴には、自然環境の研究と国際協力、そして宇宙政策という異なる分野がつながっています。
その経験のなかで取り組んできたのは、社会インフラが十分に整備されていない地域の問題です。
世界には道路や通信網が行き届かず、森林や海の状況を継続的に把握することが難しい場所があります。
こうした地域では、人工衛星による通信や観測が重要な手段になります。
福代さんが宇宙事業へ進んだ背景には、地上で経験してきた社会課題がありました。
ルワンダとの出会いが衛星ビジネスの転機に
福代さんの事業の方向性を変えるきっかけの1つになったのが、アフリカのルワンダとの出会いでした。
2018年に設立した会社は、当初「スペースエッジラボ」という名称でした。
最初に考えていたのは、衛星データを活用するためのプラットフォーム事業です。
しかし、IT人材の採用を目的にルワンダへ足を運んだ際、現地から人工衛星そのものの製造に関する相談を受けました。
日本の町工場のようなものづくりを、ルワンダでも実現したいという話でした。
この経験が、衛星データを利用する事業から、超小型衛星を開発・製造する事業へと進む転機の1つになりました。
当時、東京大学では世界に先駆けて超小型衛星の研究開発が進められていました。
福代さんは、東京大学の中須賀・船瀬研究室で培われた技術を基盤に、衛星を小型化し、より多くの国や企業が使えるようにする事業を発展させます。
その後、社名をアークエッジ・スペースへ変更し、現在の超小型衛星事業を拡大してきました。
東京大学とセーレンが支える超小型衛星の量産技術
アークエッジ・スペースは、自社だけですべての技術を完結させるのではなく、大学や製造企業と連携してきました。
重要な協力先が、東京大学と福井県に本社を置く繊維・電子材料メーカーの「セーレン株式会社」です。
3者は、多用途に対応できる6U級超小型衛星の量産モデルを開発してきました。
6Uとは、超小型衛星の規格であるCubeSatの大きさを示す単位です。
1Uはおよそ10cm四方の立方体を基本とし、6U級の衛星はおよそ10cm×20cm×30cmという非常に小さなサイズです。
この小さな箱の内部に、通信装置、コンピューター、電源などの機器が収められています。
アークエッジ・スペースが取り組んでいるのは、こうした衛星の共通基盤を作ることです。
人工衛星には、ミッションに応じて搭載する観測装置や通信機器が異なる一方、電力供給や機器制御など共通する部分もあります。
共通する機能を標準化することで、用途ごとに必要な部分を変更しながら、異なる衛星を効率的に作れます。
この仕組みが、1年間で9機を運用開始する開発・製造体制につながりました。
2026年4月には、この量産モデルが評価され、第7回宇宙開発利用大賞でJAXA理事長賞を受賞しました。
超小型衛星は海上通信・森林監視・農業にも活用される
アークエッジ・スペースの事業は、単に人工衛星を宇宙へ打ち上げることではありません。
衛星を使って、地球上のさまざまな問題へ対応する仕組みを構築しています。
主な事業分野は次のとおりです。
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海上通信:船舶の位置情報や通信データのやり取り
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海洋状況把握:船舶の動きや海域の状況を監視
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地球観測:森林や土地利用、環境変化を衛星から観測
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衛星IoT:地上のセンサーから情報を収集
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低軌道衛星測位:位置測定を支える新たな衛星技術
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月面インフラ:月面活動を支える通信・測位技術の研究開発
例えば、海上では携帯電話の通信網が届かない場所が広く存在します。
人工衛星を使えば、遠く離れた海域の船舶と情報をやり取りする仕組みを構築できます。
また、衛星に搭載した観測機器によって、広大な森林の変化や自然環境の状況を調べることもできます。
同社が開発した衛星「AE2a」では、森林や温室効果ガスの監視につながる観測技術の実証も進められています。
さらに、衛星データを利用するための「ArkEdge Insights」というプラットフォームも提供しています。
専門的な衛星解析ソフトを用意しなくても、Webブラウザから衛星データを活用できる仕組みです。
パラグアイでは政府システムとしての実用化が進み、ブラジルやフィジー、国内自治体でも試験的な導入が始まっています。
日本の起業家ランキング2026で福代孝良が1位に
アークエッジ・スペースの成長は、宇宙業界以外からも注目されています。
2025年11月に発表された『Forbes JAPAN』の「日本の起業家ランキング2026」では、福代孝良さんが第1位に選出されました。
このランキングは、将来性や事業の成長力などを評価し、日本の新しい産業を担う起業家を選ぶものです。
福代さんが率いるアークエッジ・スペースは、衛星の設計から製造、運用、データ利用までを一貫して担う事業モデルを構築してきました。
2025年には約80億円の資金調達も実施し、同年末までの累計調達額は107億円に達しています。
資金調達は、開発する衛星の数を増やすことだけが目的ではありません。
衛星の量産設備や品質管理、運用体制など、継続的に宇宙インフラを構築するための事業基盤づくりにも関わっています。
人工衛星を1機打ち上げることから、複数機を継続して運用する産業へ。
その転換に取り組んでいるのが、アークエッジ・スペースです。
実用情報|アークエッジ・スペースの会社概要と事業
会社概要
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会社名:株式会社アークエッジ・スペース
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英文名:ArkEdge Space Inc.
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設立:2018年7月
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代表取締役CEO:福代孝良
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本社所在地:東京都江東区有明1-3-33 ドーム有明ヘッドクォーター3階
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事業内容:超小型人工衛星の企画・設計・製造・運用、衛星データサービス
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主な開発製品:6U級超小型衛星、衛星用コンピューター、通信・観測関連システム
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事業形態:企業・政府機関・研究機関などを対象とした宇宙関連サービス
同社の人工衛星は、一般消費者向けの通販商品ではありません。
衛星の製造やサービス提供については、用途や開発内容ごとに条件が異なるため、導入費用が一律に公開されているものではありません。
また、2026年には月面測位実証衛星の製造に対応するため、東京都江東区新木場に新たな製造拠点を設ける取り組みも進めています。
まとめ
アークエッジ・スペースは、2018年に設立された日本の宇宙スタートアップ企業です。
2024年12月から2025年11月までの1年間に、9機の超小型衛星を軌道投入・運用開始しました。
その実績を支えているのが、東京大学やセーレンと連携した衛星の標準化・量産技術です。
2026年には、車載グレードの電子部品を活用した自社開発コンピューターの軌道上実証にも成功しました。
代表の福代孝良さんは、南米の森林研究や国際協力、宇宙政策という経験を経て、現在の会社を設立しています。
ルワンダでの出会いも、衛星を自ら開発する事業へ進む重要な転機となりました。
人工衛星を特別なものから、多くの人や企業が利用できる社会インフラへ変えていく。
超小型衛星の量産化と新しい宇宙技術を通じて、日本の宇宙産業を発展させようとしている企業です。
参考リンク
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MBS『MIRAI JAM』公式サイト
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アークエッジ・スペース公式|年間9機の衛星運用実績とJAXA理事長賞受賞
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アークエッジ・スペース公式|車載グレード部品を活用した衛星用コンピューターの宇宙実証
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