マイナス25度の巨大冷凍庫から見える「冷やす技術」の転換
2026年9月23日放送のテレビ東京系「ブルードリーム 海と森の守り人たち」第3弾では、海洋熱波による海の異変と、その背景にある温暖化問題を追いながら、冷凍・冷蔵に欠かせない冷媒を代替フロンから自然冷媒へ転換する取り組みが取り上げられます。番組ではマイナス25度級の巨大冷凍庫にも入り、食品物流を支えながら環境負荷を減らす「冷やす技術」の変化を描きます。
冷蔵庫、スーパーの冷凍ケース、冷凍食品工場、巨大な冷凍倉庫。私たちの生活に欠かせない設備の内部では冷媒が使われています。オゾン層を破壊しないものとして普及した代替フロンにも高い温室効果を持つ種類があり、その次の選択肢としてCO2やアンモニアなどの自然冷媒が広がり始めています。
この記事でわかること
- 自然冷媒が従来の代替フロンと何が違うのか
- 巨大冷凍庫で自然冷媒を使う意味
- 冷凍食品や物流と地球温暖化がつながる理由
- 海洋熱波と藻場減少が食卓にも関わってくる背景
自然冷媒はCO2やアンモニアなど身近な物質を冷却に使う
「自然冷媒」は、もともと自然界に存在する物質を冷凍・空調設備の冷媒として利用する仕組みです。
代表的なものには、
- 二酸化炭素(CO2)
- アンモニア
- 炭化水素
- 空気
などがあります。
環境省は、食品小売店のショーケースや冷凍冷蔵倉庫ではCO2冷媒、大規模な冷凍冷蔵倉庫や食品加工ではアンモニア冷媒などの利用が進んでいるとしています。
「CO2を使うなら温暖化対策にならないのでは」と感じるかもしれません。
重要なのは、冷媒が漏れた場合の温暖化への影響の大きさです。
従来使われてきたHFC系の代替フロンには、CO2を基準の1とした地球温暖化係数が数百から数千に達するものがあります。大型業務用冷凍冷蔵設備で利用されてきたHFC-404Aでは、地球温暖化係数が3920とされています。
そのため、冷凍設備を動かす電力だけでなく、設備から冷媒そのものが漏れたときの温暖化影響も大きな課題になっています。
代替フロンはオゾン層問題を解決した後に別の課題が見えてきた
冷媒はこれまで何度も転換してきました。
かつて広く使われていたCFCやHCFCなどのフロンは、オゾン層を破壊することから世界的に規制が進みました。
そこで置き換えられたのがHFCなどの「代替フロン」です。
HFCはオゾン層を破壊しません。しかし、地球温暖化への影響が大きいことから、今度はHFC自体を段階的に削減する流れになっています。
日本を含む先進国では、HFCの生産・消費量を基準値から2036年までに85%削減する国際的な枠組みが進められています。
つまり、
「オゾン層を守るための代替フロン」
から、
「温暖化影響の小さい冷媒」
へ。
冷凍・空調技術は、さらに次の段階へ入っているのです。
巨大冷凍庫こそ冷媒の転換効果が大きい
今回の「ブルードリーム」で象徴的に登場するのが、マイナス25度級の巨大冷凍庫です。
家庭用冷蔵庫と違い、物流センターの冷凍倉庫は大量の食品を長期間低温に保ち続けなければなりません。
冷凍食品、肉、魚介類、アイスクリームなどを全国へ届けるには、
- 食品工場
- 冷凍冷蔵倉庫
- 配送センター
- 冷蔵・冷凍車
- スーパーや店舗
まで温度を保つ「コールドチェーン」が必要です。
環境省も業務用冷凍冷蔵機器を日本のコールドチェーンを支える重要なインフラと位置付け、冷凍冷蔵倉庫や食品工場、小売店舗への自然冷媒設備導入を支援しています。
巨大施設ほど冷凍機も大きくなり、使用する冷媒や消費電力も無視できません。
そのため、自然冷媒への転換は「環境に配慮した特殊な施設」の話ではなく、食品物流そのものを将来も維持するための設備更新になりつつあります。
CO2冷媒は冷凍倉庫でも利用が広がっている
自然冷媒の中でも、冷凍・冷蔵設備で利用が進んでいるのがCO2です。
CO2冷媒には、
- 燃えない
- 毒性がない
- 冷凍能力に優れる
- 温暖化への影響がフロン系冷媒より大幅に小さい
という特徴があります。
一方、アンモニアは非常に高いエネルギー効率を持ち、大規模な冷凍倉庫や食品加工施設で長い利用実績があります。
ただし毒性や可燃性があるため、CO2を組み合わせたり、使用量を抑えたりする設備技術が利用されています。
実際に国内の冷凍冷蔵物流施設では、CO2冷媒、アンモニア冷媒、アンモニアとCO2を組み合わせた設備を使い分ける取り組みも進んでいます。
自然冷媒は1種類ですべての設備を置き換える技術ではありません。
冷凍温度、施設規模、安全性、外気温、設備コストなどに合わせて選択することが重要になります。
海洋熱波と冷凍庫は離れた問題ではない
番組が今回、冷凍庫だけではなく「海洋熱波」を同時に取り上げるのもポイントです。
気象庁によると、日本近海の年平均海面水温は1900年から2025年までの長期変化で100年あたり1.36度上昇しています。世界全体の海面水温上昇率を上回るペースです。
2026年9月中旬にも、日本海、北海道南東方、四国・東海沖、本州東方など広い海域で平年より高い海面水温が確認されています。
水温が異常に高い状態が長期間続けば、海の生態系も影響を受けます。
特に重要なのが藻場です。
藻場が消えると魚やアワビなどの生活場所も失われる
藻場は「海の森」と呼ばれます。
海藻や海草が広がる場所は、
- 魚の産卵場所
- 稚魚の成育場所
- アワビやサザエなどの餌場
- 多くの海洋生物の隠れ場所
として重要な役割を持っています。
さらに海中に炭素を蓄えるブルーカーボンの場としても注目されています。
しかし日本沿岸では、海藻が広範囲に衰退・消失する「磯焼け」が問題となっています。
番組ではこれを「海の砂漠化」として描きます。
海水温上昇だけですべての磯焼けが起こるわけではなく、海藻を食べる魚やウニ、海流、栄養塩など複数の要因があります。
それでも海水温の上昇は、これまで生息していた魚介類や海藻の環境を大きく変える要素の一つです。
温暖化対策は「電気を節約する」だけではなく冷媒そのものへ
家庭での温暖化対策と聞くと、
「エアコンの設定温度を変える」
「電気をこまめに消す」
といった省エネが思い浮かびます。
しかし、冷凍・空調の世界ではもう一つ重要なのが冷媒そのものを変えることです。
設備が省エネでも、温暖化係数の非常に高い冷媒が大量に漏れれば、環境負荷は大きくなります。
そのため現在は、
- 冷媒を漏らさない
- 使用済み冷媒を回収する
- 温暖化係数の低い冷媒へ変更する
- 自然冷媒設備へ更新する
- 設備そのものの省エネ性能も高める
という複数の対策を組み合わせる方向へ進んでいます。
冷凍食品を便利に購入できる生活を維持しながら、その裏側にある環境負荷を小さくする。
今回の巨大冷凍庫は、その転換が実際の物流現場で始まっていることを象徴する設備といえます。
自然冷媒冷凍庫で押さえておきたいポイント
自然冷媒について整理すると、次のようになります。
- 自然冷媒:CO2、アンモニア、炭化水素、空気など
- 主な用途:冷凍冷蔵倉庫、食品工場、スーパー、給湯設備など
- 最大の特徴:フロン系冷媒に比べ温暖化への影響を小さくできる
- CO2冷媒:不燃・無毒で冷凍設備にも利用
- アンモニア冷媒:高効率で大型冷凍設備などに利用
- 従来のHFC:オゾン層を破壊しない一方、種類によって高い温室効果を持つ
- 今後:国際的なHFC削減とともに自然冷媒への転換が進む
冷凍庫が環境問題とつながっている理由は、「冷やすこと」そのものより、何を使って冷やしているのかにあります。
まとめ
2026年9月23日放送の「ブルードリーム 海と森の守り人たち」が取り上げる自然冷媒は、冷凍食品や冷蔵物流をやめるための技術ではありません。
むしろ、現在の便利なコールドチェーンを維持しながら、温暖化への影響を減らすための技術です。
オゾン層を守るために特定フロンから代替フロンへ移行し、今度は地球温暖化への影響を小さくするため自然冷媒へ。
冷媒の歴史は、環境問題に合わせて冷凍技術そのものを変えてきた歴史でもあります。
そしてその先には、番組が描く海洋熱波や藻場の減少があります。
スーパーで当たり前に買える冷凍食品と、遠く離れた海の環境。その2つを「冷やす」という技術からつないで見せるのが、今回の「ブルードリーム 海と森の守り人たち」の大きなテーマです。
参考リンク
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