山形県長井市が「けん玉の町」になった理由
2026年10月7日放送のNHK総合「午後LIVE ニュースーン」で取り上げられるのが、山形県長井市のけん玉を生かした町づくりです。
長井市は競技用けん玉の生産量日本一。市内には1973年創業の「山形工房」があり、日本けん玉協会公認の競技用けん玉「大空」を製造しています。さらに2014年から「長井けん玉のふる里プロジェクト」を始め、けん玉を目的に市外から移住するプレーヤーまで現れる町へと変化してきました。
この記事でわかること
- 長井市が競技用けん玉生産日本一になった背景
- 山形工房「大空」が50年以上作られてきた歴史
- けん玉ひろばSPIKeの場所・営業時間・体験内容
- けん玉をきっかけに長井市へ移住したプレーヤーたち
山形工房は1973年創業、競技用けん玉「大空」を作る会社
長井市の「けん玉の町」としての土台を作った存在が、有限会社山形工房です。
山形工房は1973年10月、「山形博進社」として創業しました。当初は木地玩具や民芸品を製造し、1977年から競技用けん玉「富士」の生産を開始。翌1978年には日本けん玉協会の指定工場となりました。
そして1990年、競技用けん玉の生産日本一に認定されています。現在は日本けん玉協会公認の「大空」をはじめ、さまざまな国産けん玉を長井市で製造しています。
けん玉は一見すると単純な木のおもちゃですが、競技用となると話は別です。
長井市は、市勢要覧の中で競技用けん玉について「1ミリの誤差も許されないほど厳しい規定」があると紹介しています。
玉の穴、皿、けんの形や全体のバランスが技の成功率に影響するため、木工加工の精度が求められます。
昔からものづくりが盛んだった長井の木工技術とけん玉が結びつき、全国でも特別な産地へと成長しました。
「大空」は日本けん玉協会公認の競技用けん玉
山形工房を代表する製品が「大空」です。
日本けん玉協会公認の競技用けん玉で、山形県の職人が国内で製造しています。
現在は従来型の大空だけでなく、競技スタイルの変化に合わせた「大空REShape」シリーズも展開されています。
2025年には「大空REShape5」が登場しました。
このモデルでは、
- 皿のサイズを大型化
- 全体のバランスを再設計
- 玉の回転が見やすい配色
- 玉穴を大きくして技を決めやすくする工夫
- ベアリングを採用
など、現代のけん玉競技に合わせた改良が施されています。
昔ながらの遊びをそのまま保存しているだけではなく、プレーヤーの技が高度になるにつれて道具側も進化しているのです。
山形工房は2023年に創業50周年を迎えました。
半世紀以上にわたり競技用けん玉を作り続けてきた会社が町に存在することが、長井市のけん玉文化の大きな強みになっています。
2014年に「長井けん玉のふる里プロジェクト」が始動
けん玉を作る町から、「けん玉で人が集まる町」への転機となったのが2014年です。
長井市はこの年、「長井けん玉のふる里プロジェクト」をスタートしました。
目的は、競技用けん玉生産日本一という地域資源を、単なる特産品で終わらせず、町づくりへ生かすことでした。
イベントやけん玉教室、大会、ワークショップなどを開催し、住民自身がけん玉に触れる機会を増やしていきます。
そして2020年度には、市民からの要望を受け、けん玉が長井市の「市技」に制定されました。
「市の名産品」ではなく「市民が実際に楽しむ技」にまでなったところが長井市の面白さです。
子どもだけではなく、大人、高齢者、国内外から訪れるプレーヤーまで同じけん玉を手にして交流できるため、世代や言葉を越えたコミュニケーションにもつながっています。
けん玉ひろばSPIKeは長井駅から徒歩1分
けん玉文化の拠点になっているのが「けん玉ひろばSPIKe(スパイク)」です。
初心者でも気軽にけん玉を体験でき、管理人から技を教えてもらうことができます。
さらに、けん玉の販売や関連グッズだけでなく、自分だけのけん玉を作るペインティング体験も用意されています。
基本情報は次の通りです。
- 施設名:けん玉ひろばSPIKe
- 所在地:山形県長井市栄町3-5
- アクセス:山形鉄道フラワー長井線・長井駅から徒歩1分
- 営業時間:10:00~17:00
- 金・土曜日:18:00まで
- けん玉ペインティング体験:3,000円
- けん玉の級・段位認定にも対応
イベントなどによって営業時間が変わる場合があります。
けん玉を展示する資料館ではなく、「実際に遊ぶ」ことが中心の施設です。
けん玉の町を訪れた人が、見るだけで終わらず、自分でも技に挑戦できる場所になっています。
世界レベルの秋元悟もけん玉を仕事にするため長井市へ移住
けん玉による町づくりが興味深いのは、観光客を呼ぶだけでなく「住む人」まで生み出したことです。
代表的な1人が秋元悟さんです。
秋元さんは東京都出身。2008年と2009年に日本けん玉協会主催の全日本けん玉パフォーマンス大会を2連覇し、2014年のけん玉ワールドカップでは日本人最高位となる3位に入りました。
その秋元さんが2016年5月、地域おこし協力隊として長井市へ移住。SPIKeの初代管理人を務めました。
けん玉教室やワークショップ、パフォーマンスなどを数多く行い、町のけん玉文化を支える側へ回りました。
2023年にはけん玉ワールドカップ40代部門で世界1位も獲得しています。
全国からプレーヤーがイベントへ来るだけではなく、トップクラスの競技者が「けん玉を仕事にできる場所」として長井を選んだことは、町づくりが次の段階へ進んだ象徴的な出来事です。
アメリカ出身シェルビー・ブラウンも長井へ
さらに長井市へ移ったのは日本人だけではありません。
アメリカ・アーカンソー州出身のシェルビー・ブラウンさんも、けん玉をきっかけに長井市へ移住しました。
シェルビーさんは日本でALTとして働いていた時期にけん玉と出会い、2021年にけん玉ワールドカップへ初出場します。
大会中、長井市のSPIKe管理人募集を知り、「けん玉を仕事にする」ことに魅力を感じて応募。同年10月に地域おこし協力隊として長井市へ移住し、SPIKeの3代目管理人になりました。
昔ながらの日本の遊びだったけん玉が海外にも広まり、今度は海外出身のプレーヤーを製造の町へ呼び戻す。
山形の小さな木工製品から始まった文化が、世界との交流を生み出しています。
現在も外国出身の地域おこし協力隊が活動
現在も、長井市ではけん玉をテーマにした移住が続いています。
長井市の地域おこし協力隊として活動しているのが、イギリス・ウエストヨークシャー州出身のトーマス・ホワイトヘッドさんです。
2024年7月22日に着任し、「けん玉のふる里プロジェクト推進活動」を担当しています。
長井市が始めたプロジェクトは、単なる観光キャンペーンではありません。
けん玉を製造する職人、競技者、子ども、地域住民、外国出身者が同じ文化を軸につながり、新たな人が町へ入ってくる仕組みに成長しています。
長井市でけん玉を体験するなら
長井を訪れる場合、中心となる場所はSPIKeです。
長井駅から徒歩1分なので、車がなくても訪れやすいのが魅力です。
けん玉を持っていない初心者でも参加でき、管理人から基本的な持ち方や技を教えてもらえます。
長井市内では、けん玉の技に成功するとサービスが受けられる「けん玉チャレンジマップ」など、町全体でけん玉を楽しむ取り組みも行われています。
山形工房の商品は、長井市内だけでなく公式サイトでも確認できます。
現在も日本けん玉協会公認の「大空」や、競技性を高めたREShapeシリーズ、初心者や高齢者向けに皿を大きくした福祉けん玉など、多様な製品が作られています。
まとめ
山形県長井市が「けん玉の町」になった始まりには、1973年創業の山形工房があります。
競技用けん玉の製造を続け、1990年には生産日本一に認定。日本けん玉協会公認の「大空」は、現在も長井市の職人によって作られています。
そして2014年に始まった「長井けん玉のふる里プロジェクト」によって、けん玉は工場の製品から町全体の文化へと広がりました。
SPIKeという交流拠点が生まれ、秋元悟さんやアメリカ出身のシェルビー・ブラウンさんなど、けん玉を理由に長井へ移住する人も登場しています。
「競技用けん玉生産日本一」という数字だけなら、地域の特産品の話で終わります。
長井市の面白さは、その製品を実際に市民が遊び、人が集まり、世界のプレーヤーが暮らす理由にまで育てたことです。
参考リンク
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