ボーカルマイクの丸い頭には「息の直撃」から音を守る役割がある
2026年10月9日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!」では、「なぜマイクの頭は丸い?」という疑問が取り上げられます。
ステージやカラオケでおなじみの、先端が丸く膨らんだマイク。あの部分は単なるデザインではありません。
大きな理由のひとつが、歌ったり話したりするときに発生する「パ」「バ」などの破裂音による強い空気を和らげ、ポップノイズを抑えることです。
世界的に知られるボーカルマイク「Shure SM58」も球形のメッシュグリルとポップフィルターを採用し、息や風によるノイズを減らす構造になっています。
この記事でわかること
- マイクの頭が丸い大きな理由
- 「パ」「バ」で起きるポップノイズの正体
- 丸いグリルの内側に隠された仕組み
- ボーカル用SM58と楽器用SM57で形が違う理由
マイクの丸い部分は「グリルボール」と呼ばれている
出典:オーディオテクニカ「Microphone Navi 用語集」
私たちが普段「マイクの頭」と呼んでいる部分は、専門的にはヘッドケースなどと呼ばれます。
オーディオテクニカでは、ハンドヘルドマイクに使われる丸い形状のものを「グリルボール」とも説明しています。
外側は金属製のメッシュで覆われていますが、単なる飾りではありません。
内部には声を電気信号へ変換するための繊細な振動板などがあり、ヘッドケースにはそれらを物理的な衝撃から守る役割があります。さらに、複層構造などによってポップノイズ対策が施されているものもあります。
つまり、あの丸い部分は、
- マイク内部を守る
- 口から飛び出す強い空気を和らげる
- ポップノイズを抑える
という複数の仕事を担っています。
「パ」「バ」を言った瞬間にマイクへ強い風が飛んでいる
マイクの形を理解する鍵になるのが「ポップノイズ」です。
普通に話していると気づきにくいのですが、「パ」「ピ」「プ」「ペ」「ポ」や「バ」といった言葉を発音するとき、口から瞬間的に強い空気が飛び出します。
この空気がマイクの振動板へ直接当たると、
「ボフッ」
「ボンッ」
というような大きな低いノイズとして録音されることがあります。
オーディオテクニカでは、この現象を「吹かれ(ポップノイズ)」と呼び、特に「パピプペポ」などの破裂音で発生しやすいと説明しています。
歌手がマイクへかなり口を近づけて歌っていても、意外なほどきれいに声だけが聞こえることがあります。
その裏側では、グリルやポップフィルターが、声そのものは通しながら、口から飛び出す空気の勢いを弱めています。
丸いグリルの中にポップフィルターが入っている
ボーカルマイクを代表する存在が、Shureの「SM58」です。
1966年に登場し、2026年には発売60周年を迎えたロングセラーモデルで、ライブ会場などで長年使われてきました。
SM58の先端を見ると、きれいな球形をしています。
しかし重要なのは外側の金属メッシュだけではありません。
ShureはSM58について、球形メッシュグリルと内蔵ポップフィルターによって、風や破裂音を効果的に抑える構造だと説明しています。
オーディオテクニカのボーカル用マイクについても、ヘッドケースの内側に薄いスポンジ状のポップフィルターを設ける構造が紹介されています。
見た目は「丸い金網」でも、その中には声をきれいに拾うための工夫が詰まっているのです。
丸いことで口とマイク内部の間に空間を作れる
球形グリルには、マイクの内部にある振動板と口との間に距離を確保できるという特徴もあります。
実際、Shureのボーカル用「SM58」と楽器用「SM57」は、基本となるカートリッジ設計が共通しています。
ところが見た目は大きく違います。
SM58は先端が丸いボール型。
SM57は先端が細く、よりコンパクトです。
Shureによれば、この2つの主な違いがグリルの設計です。
SM58はボーカル向けなので、破裂音を抑えるポップフィルターを組み込んだ球形グリルを採用しています。
一方のSM57は楽器収音を主な用途として設計されており、ボーカルほど破裂音への対策を必要としないため、より小さなグリルになっています。
つまり「マイクだから丸い」のではありません。
人の口のすぐ近くで使うボーカルマイクだからこそ、丸い頭が非常に合理的なのです。
SM57とSM58を比べると丸い理由がよくわかる
SM57とSM58の比較は、マイクの丸い頭の役割を理解するうえで非常に分かりやすい例です。
両モデルは同じ系統のカートリッジを採用しながら、用途によってグリルが違います。
SM58は歌やスピーチが中心なので、球形グリルとポップフィルターで息への対策を重視。
SM57はギターアンプやドラムなどの楽器を狙って収音する用途が多いため、音源へ近づけやすいコンパクトな形になっています。
この違いを見ると、マイクの形が単なるデザインではなく、「何の音を録るか」に合わせて決められていることがよく分かります。
丸い金属メッシュは落下の衝撃からもマイクを守る
球形グリルには、もうひとつ重要な役割があります。
それが耐久性です。
ライブではマイクを手に持って動き回るため、スタンドへぶつけたり落としたりすることもあります。
ShureはSM58のボールグリルについて、ポップノイズや風のノイズを抑えるだけでなく、衝撃を吸収する部分としても働くと説明しています。
グリルが変形することで衝撃を受け止め、内部の重要な部品を守る設計です。
丸い頭には、
音を守る役割と、
マイクそのものを守る役割。
その両方が備わっています。
全部のマイクが丸くないのは用途が違うから
もちろん、世の中にあるマイクがすべて丸いわけではありません。
スタジオで使われる大型コンデンサーマイク、テレビ出演者が胸元につけるピンマイク、楽器収録用マイク、屋外中継用マイクなど、用途によって形は大きく異なります。
特にボーカル用のハンドマイクでは、歌い手が口を近づけるため、息の直撃を防ぐことが重要になります。
そのため、グリルや内部のフィルターによって「吹かれ」への対策が施されています。
一方、楽器収音では「パ」「バ」という破裂音は発生しません。
そのため、必ずしも大きな球形グリルは必要ありません。
丸いか、細長いか、大きいか、小さいか。
マイクの形を見るだけでも「何を録るために作られたのか」がある程度見えてくるのです。
マイクの頭が丸い理由まとめ
ボーカル用マイクの頭が丸い大きな理由は、歌ったり話したりするときに発生する強い息によるポップノイズを抑えるためです。
「パ」「バ」などを発音すると口から強い空気が飛び出し、そのままマイク内部の振動板へ届くと「ボフッ」という不快な音につながります。
そこでボーカル用マイクでは、球形のメッシュグリルや、その内側にあるポップフィルターを使って空気の勢いを和らげています。
代表的なShure SM58とSM57を比べても、ボーカル向けのSM58には球形グリルがあり、楽器向けのSM57ではよりコンパクトなグリルが採用されています。
さらに丸い金属グリルは、落下などの衝撃から内部を守る役割も持っています。
何気なく見ていた「丸いマイクの頭」は、歌声をきれいに届けるために長年磨かれてきた、音響技術のかたまりだったのです。
参考リンク
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