大井川鐵道で今も走る元近鉄16000系
2026年10月10日放送のNHK「鉄オタ選手権 大井川鐵道の陣」では、大手私鉄を引退したレトロ車両に乗って楽しむ鉄道旅も取り上げられます。
大井川鐵道では、元南海電鉄21000系・6000系、元近鉄16000系、元東急電鉄7200系という、別の鉄道会社で活躍してきた電車が現在も走っています。
なかでも注目したいのが、かつて近鉄特急として活躍した16000系です。
2026年10月には16000系を主役にした大井川鐵道公式ツアーまで企画されました。近鉄では見られなくなったオレンジと紺の特急色をまとった16000系が、今も大井川本線を走っています。
この記事でわかること
- 大井川鐵道16000系はどこから来た電車なのか
- 昔の近鉄特急色が残っている理由
- 1960年代生まれの車両が今も走るまでの歴史
- 大井川鐵道で走る元南海・元東急のレトロ電車
16000系は1965年から製造された元近鉄特急
大井川鐵道16000系のルーツは近畿日本鉄道です。
大井川鐵道で現在活躍する編成のうち、モハ16002+クハ16102は1965年に完成。1997年に大井川鐵道へ譲渡され、1998年から営業運転を始めました。
モハ16003+クハ16103は1966年に完成し、2002年に譲渡、2004年から大井川鐵道で営業運転を開始しています。
大井川鐵道へ来てからも、前面の行先表示やワンマン運転への対応など一部を除き、近鉄時代の姿を色濃く残してきました。
つまり現在乗車できるのは、誕生から約60年を迎えた電車です。
博物館に保存されている車両を見るのとは違い、実際に営業列車として走り、乗客を乗せているところに大井川鐵道16000系の大きな価値があります。
オレンジと紺の「近鉄特急色」が今も残る
16000系で特に目を引くのが、オレンジと紺を組み合わせた車体です。
この配色は長年親しまれてきた近鉄特急の伝統色ですが、近鉄では2016年から特急車両の塗装変更が進みました。
ところが大井川鐵道の16000系は、近鉄時代の塗装をまとったまま走り続けています。
大井川鐵道は2026年10月に企画した16000系ツアーでも、近鉄時代のオレンジと紺の姿を大きな魅力として紹介しています。
かつて関西で特急として乗客を運んだ電車が、場所を静岡県へ移し、現在は大井川沿いを走る日常の列車になったわけです。
特急だった電車が大井川鐵道では普通電車の主力に
16000系の面白さは、単に「古い車両が残っている」ということだけではありません。
近鉄時代は特急車として活躍した車両が、大井川鐵道では普通電車の主力として使われてきました。
大井川鐵道では16000系のほか、21000系、7200系、6000系も大井川本線で運用しています。
SLやアプト式鉄道のような観光色の強い列車とは違い、これらの電車は沿線の移動を支える存在でもあります。
「昔の名車を見るための保存鉄道」ではなく、「昔の名車が普通に仕事を続けている鉄道」というところが、大井川鐵道ならではの面白さです。
元南海21000系「ズームカー」も1958年生まれ
もう1つ、大井川鐵道を代表するレトロ電車が21000系です。
こちらは南海電鉄からやってきた車両で、1958年に南海高野線の急行・特急用として製造されました。
高野山方面の急勾配を登る一方、平坦な河内平野では最高時速110kmで走行できる性能を持っていたことから、「ズームカー」の愛称で知られています。
現在、大井川鐵道では21001+21002、21003+21004の2両編成2本が活躍しています。
1958年製ですから、2026年時点で誕生から約68年。
高度経済成長期の入口で誕生した電車が、今も営業車両として大井川沿いを走っていることになります。
南海6000系は2024年に新たに仲間入り
古い車両を大切に走らせる大井川鐵道ですが、近年新たに加わった中古車両もあります。
南海電鉄から譲渡された6000系です。
6000系は1966年製造。南海高野線のなんば~橋本間を中心に、長年にわたり通勤・通学客を運んできました。
大井川鐵道へ移った6016+6905の2両編成は、2024年12月30日に営業運転を開始しました。
製造年だけを見れば16000系とほぼ同世代ですが、大井川鐵道では新顔です。
1つの鉄道会社で役割を終えた電車が、別の土地へ移って再び地域の足になる。その車両継承が現在も続いていることが分かります。
元東急7200系は青森を経て静岡へ
7200系には、さらに長い旅の歴史があります。
1968年に製造され、最初に走ったのは東急電鉄です。
その後、2002年から青森県の十和田観光電鉄へ移り、三沢~十和田市間で活躍しました。
十和田観光電鉄線は2012年3月31日に廃止。その後、モハ7204・モハ7305の2両が大井川鐵道へ移り、2015年2月から運行を開始しました。
大井川鐵道へ運ばれる際には、トレーラーで約850kmを6日かけて移動しています。
東京・神奈川から青森へ、さらに静岡へ。
1両の電車が複数の地域を渡り歩き、その土地ごとに乗客を運んできた歴史そのものが、この車両の魅力になっています。
どのレトロ電車に乗れるかは日によって変わる
大井川鐵道でレトロ電車を目当てに訪れる場合、注意したいことがあります。
大井川本線の電車は日々ローテーションを組んで運用されており、16000系・21000系・7200系・6000系のどの車両が走るかは固定されていません。
現在、電車と電気機関車の詳しい運用スケジュールは、大井川鐵道ファンクラブ会員向けコンテンツとして公開されています。
特定の形式への乗車を目的に出かける場合は、この点を確認しておく必要があります。
一方で、「今日はどの昔の電車が来るのだろう」と待つこと自体を楽しめるのも大井川鐵道らしさです。
大井川鐵道には昭和の鉄道が重なって残っている
大井川鐵道のレトロ感は、電車だけではありません。
SL列車などに使用される旧型客車には、昭和初期に製造された旧国鉄車両が残っています。
車内には昔ながらの扇風機や栓抜き、デッキなどがあり、昭和の鉄道旅行を感じられる設備が残されています。
さらに2025年には、1978年製造の国鉄12系客車も大井川鐵道へやってきました。
こちらは国鉄宮原客車区に配置され、その後「SL北びわこ号」などでも使用された客車です。冷暖房を備えながら、国鉄時代を感じさせる車内で旅を楽しめます。
元近鉄、元南海、元東急、旧国鉄。
異なる会社・地域・時代を走ってきた車両が同じ鉄道に集まり、現在も動いていることが、大井川鐵道の大きな特徴です。
まとめ
「鉄オタ選手権 大井川鐵道の陣」で注目したいレトロ車両の1つが、元近鉄16000系です。
1965年から製造された近鉄特急車で、大井川鐵道へ移ってからは普通電車として活躍してきました。
特に貴重なのが、オレンジと紺という昔ながらの近鉄特急色をまとった姿です。
大井川鐵道にはこのほかにも、1958年製造の元南海21000系「ズームカー」、元東急7200系、2024年に営業運転を開始した元南海6000系などが在籍しています。
華やかな観光列車だけでなく、他社で役目を終えた昭和の電車を受け継ぎ、現役の鉄道車両として走らせていることも、大井川鐵道を訪れる大きな楽しみの1つです。
参考リンク
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