鉄オタ選手権で注目の大井川鐵道「日本唯一のアプト式」
2026年10月10日放送のNHK「鉄オタ選手権 大井川鐵道の陣」では、きかんしゃトーマス号や大手私鉄からやってきた懐かしい車両とともに、大井川鐵道井川線の「アプト式列車」が登場します。
大井川鐵道には魅力的な車両が数多くありますが、その中でも特別なのが、現在日本で唯一乗ることができるアプト式鉄道です。
アプトいちしろ駅から長島ダム駅までの区間では、線路中央の歯形レールと専用機関車の歯車をかみ合わせ、普通の鉄道では難しい90‰という急勾配を登ります。しかも駅では、専用のED90形電気機関車を列車へ連結する作業まで間近で見ることができます。
この記事でわかること
- 日本唯一のアプト式鉄道が走る場所
- 90‰という急勾配のすごさ
- 専用機関車ED90形を途中で連結する理由
- 南アルプスあぷとラインの乗り方・料金・アクセス
日本唯一のアプト式はアプトいちしろ駅~長島ダム駅

出典:大井川鐵道公式「南アルプスあぷとライン アプト式トロッコ列車に乗る」
大井川鐵道井川線は、千頭駅から井川駅まで25.5kmを結ぶ「南アルプスあぷとライン」です。
もともとは水力発電所建設の資材を運ぶためにつくられた鉄道で、山の斜面に沿って小さなトロッコ列車が走ります。その途中、アプトいちしろ駅から長島ダム駅までに、日本で唯一のアプト式鉄道区間があります。
アプト式とは、線路の中央に敷いた歯形の「ラックレール」と、機関車側に取り付けられた歯車「ピニオン」をかみ合わせて走る方式です。
普通の鉄道は車輪とレールの摩擦によって進むため、坂が急になりすぎると車輪が空転したり、下り坂で安全に速度を抑えることが難しくなります。
そこで歯車同士をしっかりとかみ合わせ、急な坂でも確実に登り下りできるようにしたのがアプト式です。
90‰は1000m進む間に90mも登る
この区間を特別なものにしている最大の数字が「90‰(パーミル)」です。
鉄道では坂の勾配をパーミルという単位で表します。90‰は、水平に1000m進む間に高さが90m変わる勾配です。
アプトいちしろ駅の標高は約396m、長島ダム駅は約485m。列車は短い区間で一気に高度を上げていきます。
この90‰は、ケーブルカーなどを除く普通鉄道として日本一の急勾配です。
数字だけでは分かりにくいですが、実際に乗ると列車が山の斜面をぐんぐん登っていく感覚がはっきり分かります。
さらに車窓から後方を見ると、さっきまで走っていた線路がかなり下に見えるほど。単なる移動手段ではなく、「鉄道が急坂を克服する仕組みそのもの」を体験できる区間です。
ED90形を途中駅で連結するのが大きな見どころ
90‰区間へ入る前には、さらに珍しい光景を見ることができます。
アプトいちしろ駅で列車に連結されるのが、アプト式専用の電気機関車「ED90形」です。
ED90形は1989年に日立製作所で製造されたアプト式電気機関車で、急勾配を登るための歯車装置を備えています。
通常区間を走ってきた列車は、アプトいちしろ駅へ到着するとED90形を連結。
そして急勾配区間を越えて長島ダム駅へ到着すると、今度はED90形を切り離します。
この連結・切り離し作業はホームから見学することができます。同じ列車へ乗り続ける場合でも作業中にホームへ降りて見学でき、終了後に元の列車へ戻る仕組みです。
駅へ着くたびに単なる乗降ではなく、「ここから特別な機関車の力を借りなければ登れない」という鉄道らしいイベントが始まるのが、この路線ならではの面白さです。
アプト式導入のきっかけは長島ダムだった
井川線でアプト式が使われるようになった背景には、長島ダムの建設があります。
ダム建設によって従来の井川線の一部が水没することになり、新しい線路への付け替えが必要になりました。
しかし新ルートでは、ダム上部の高さまで短い距離で登らなければなりません。
そこで生まれたのが90‰という急勾配でした。
通常の鉄道方式だけでこの坂を越えるのは難しいため、アプト式が採用され、1990年10月2日に運行が始まりました。
つまり大井川鐵道のアプト式は、珍しい鉄道を観光用につくったものではありません。
ダム建設による線路付け替えという大きな変化を乗り越え、鉄道を残すために必要となった技術です。
現在では、その特殊な仕組み自体が大井川鐵道を代表する観光資源になっています。
奥大井湖上駅や日本一高い鉄道橋も一緒に楽しめる
南アルプスあぷとラインは、アプト式だけで終わりません。
さらに井川方面へ進むと、接岨湖に突き出した半島の先端にある「奥大井湖上駅」があります。
2本の鉄橋に挟まれ、エメラルドグリーンの湖に駅が浮かんでいるように見える景観で知られる駅です。駅から徒歩約20分の展望所へ向かえば、湖と駅、鉄橋をまとめて見渡すこともできます。
さらに尾盛駅~閑蔵駅間には「関の沢橋梁」があります。
河床からの高さは70.8m。鉄道橋として日本一の高さを誇り、トロッコ列車から深い渓谷を見下ろせます。
アプト式の機械的な面白さと、奥大井の秘境らしい景色を同じ列車で楽しめることが、井川線の大きな魅力です。
南アルプスあぷとラインの料金と予約方法
2026年10月時点では、南アルプスあぷとラインは全列車が座席定員制・列車指定制となっています。
基本となる片道乗車プランは次の内容です。
- 片道乗車プラン:大人3500円
- 小児:1750円
- 区間にかかわらず同額
- 乗車日の90日前から予約可能
- 空席があれば当日の発車時刻まで予約可能
- 往復の場合は行きと帰りをそれぞれ予約
- 座席位置の指定は不可
沿線には携帯電話の電波が届かない場所もあるため、電子チケットは乗車前にスクリーンショットを保存するか、印刷しておくことが案内されています。
千頭駅へのアクセスは現在注意が必要
南アルプスあぷとラインの始発駅は千頭駅です。
ただし2026年10月時点では、大井川本線の川根温泉笹間渡駅~千頭駅間が2022年の台風被害により不通となっています。
公共交通機関の場合は、大井川本線と川根本町の町営バスを乗り継いで千頭駅へ向かいます。大井川鐵道では、川根温泉笹間渡駅まで列車で向かい、町営バスへ乗り継ぐルートも案内しています。
車の場合は、新東名高速道路の島田金谷ICから国道473号を大井川沿いに北上するルートが推奨されています。
国道362号を使う山越えルートは道幅が狭く、急坂やヘアピンカーブが続くため、初めて訪れる場合は特にルートを確認しておくと安心です。
まとめ
「鉄オタ選手権 大井川鐵道の陣」で登場するアプト式は、大井川鐵道井川線のアプトいちしろ駅~長島ダム駅で体験できる、日本唯一の鉄道方式です。
最大の特徴は、普通鉄道日本一となる90‰の急勾配。
線路中央のラックレールとED90形電気機関車の歯車をかみ合わせ、通常の鉄道では難しい急坂を登ります。
そして面白いのが、ED90形を最初から連結して走るのではなく、急勾配区間の駅で連結し、坂を越えたら切り離すところです。
長島ダム建設による線路付け替えを乗り越えるために生まれた技術が、30年以上たった現在、日本でここだけの鉄道体験として残っています。
きかんしゃトーマス号や昔懐かしい車両だけでなく、「列車がどうやって山を登るのか」という鉄道技術そのものを楽しめるのが、大井川鐵道ならではの魅力です。
参考リンク
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