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清少納言が食べた平安のかき氷「甘葛」とは 幻の甘味料を現代に復元|グレーテルのかまど

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清少納言が「高貴なもの」と記した1000年前のかき氷

2026年10月5日放送のNHK Eテレ「グレーテルのかまど ヘンゼルのスイーツ!タイムトラベル」では、番組15周年を記念し、古代から現代まで人類が求め続けてきた甘味の歴史を振り返ります。

ナポレオンやノストラダムスとともに登場するのが、平安時代の随筆「枕草子」を残した清少納言です。

「枕草子」には、細かく削った氷へ「あまつら」という甘味料をかけ、金属製の器に盛った食べ物が登場します。現在のかき氷につながるものですが、冷凍庫も砂糖も身近ではなかった時代。氷と甘味を同時に楽しめること自体が、極めて特別な体験でした。国立国会図書館の資料でも、この削り氷は「枕草子」に記録された平安時代の甘味として確認できます。

しかも長い間正体がはっきりしなかった「あまつら」は、古典籍と科学を組み合わせた研究によって復元まで進んでいます。

この記事でわかること

  • 清少納言が「枕草子」に残した平安時代のかき氷
  • 氷にかけた幻の甘味料「あまつら」とは何か
  • 砂糖が広まる前の日本で使われた甘味
  • 現代に「あまつら」を復元した研究

清少納言のかき氷は「削り氷+あまつら」だった

清少納言が「枕草子」の中で取り上げたのは、現代のようなイチゴシロップや練乳をかけたかき氷ではありません。

氷を刃物で削り、そこへ「あまつら」を加え、新しい金属製の器に入れて味わうものでした。

清少納言はこれを、上品で高貴なものを集めた「あてなるもの」の一つとして記しています。国立国会図書館のレファレンス資料でも、「枕草子」に残る削り氷が、日本で記録に残る古いかき氷の例として紹介されています。

現在ならコンビニでアイスを買い、家庭の冷凍庫で氷を作れます。

しかし平安時代には、夏の氷そのものが貴重でした。

冬につくった天然氷を保存し、暑い季節まで残す必要があります。そこへ当時の貴重な甘味料まで加えるのですから、清少納言が特別なものとして記したことにも納得できます。

「グレーテルのかまど」では2017年にも「清少納言のかき氷」を取り上げ、平安時代の世界を現代のお菓子として表現しました。辻調グループの番組制作記事でも、「枕草子」の「あてなるもの」を手がかりに、氷や藤の花、梅の花をイメージしたかき氷が作られています。

「あまつら」は砂糖以前の日本を支えた甘味料

清少納言のかき氷を理解するうえで最も重要なのが「あまつら」です。

漢字では「甘葛」や「甘葛煎」などと表されます。

現在の砂糖のように結晶をそのまま振りかけるものではなく、植物から得た甘い液体を煮詰めて利用した甘味料です。

国文学研究資料館では、古代には「あまつら」が主要な甘味料の一つだったものの、中世以降に砂糖へ置き換えられ、やがて姿を消したと説明しています。

つまり「枕草子」のかき氷は、単に昔の氷菓子というだけではありません。

砂糖が日常的に使われる前の日本人が、自然の中からどのように甘さを手に入れていたのかを知る貴重な記録でもあるのです。

あまつらは平安貴族だけの珍味ではなかった

「あまつら」は「枕草子」だけに突然登場する謎の食材ではありません。

国文学研究資料館によると、平安時代の法令集「延喜式」には、日本各地から都へあまつらが集められていたことが記されています。

さらに「源氏物語」など複数の古典にも登場し、当時の菓子や料理で利用されていたことがわかっています。

甘味料といえば砂糖を思い浮かべる現代とは、まったく違う食文化です。

古代から平安時代の日本では、麦芽を利用した水あめのような甘味に加え、あまつらのような植物由来の甘味も利用されていました。

清少納言が氷へかけて楽しんだのも、そうした時代ならではの味だったのです。

長く謎だった原料を古典籍と科学から探した

興味深いのは、この「あまつら」が途中で日本の食卓から姿を消してしまったことです。

砂糖が普及すると、古くから使われていた甘味料の存在感は薄れていきました。

やがて「あまつら」が何から、どのように作られていたのかも分からなくなっていきます。

そこで国文学研究資料館と立命館大学などの研究者は、古典籍に残る記録と植物の科学分析を組み合わせ、失われた甘味料を復元する研究を進めました。

研究では、つる性植物や樹木など複数の候補を調べ、樹液に含まれる糖分なども分析しています。国文学研究資料館は、この研究によって歴史的典籍を手がかりに「甘葛煎」の復元へつなげたとしています。

古いレシピをそのまま再現したのではありません。

文学、歴史、植物学、食品科学を組み合わせて、1000年以上前の「甘さ」を探した研究です。

有力な原料として浮かんだのがツタ

あまつらの原料については長くさまざまな説がありました。

国文学研究資料館が紹介する研究では、現在はツタを原料とする説が有力とされ、実際にツタの樹液には糖分が多く含まれることが確認されています。

樹液を集め、それを煮詰めて甘味を凝縮する。

砂糖の袋を開ければすぐ甘さを加えられる現代から見ると、非常に手間のかかる方法です。

しかし、その手間こそが平安時代の甘味が特別だった理由でもあります。

氷も貴重。

甘味も貴重。

それを美しい金属の器へ盛る。

清少納言が「高貴で上品なもの」と感じた一皿には、当時のぜいたくが凝縮されていました。

復元された「あまつら」で古代の味も再現された

研究は原料を推定するだけでは終わっていません。

実際にあまつらを復元し、それを使った古代の食文化を体験する試みまで行われました。

国文学研究資料館では、復元した甘葛煎を使った古代スイーツの試食イベントも開催しています。研究では、糖類の構成や甘味の特徴について食品化学的な分析も進められました。

1000年前の文学に残されたわずかな一文から、当時の味を現代へ戻す。

「枕草子」が文学作品であると同時に、平安時代の食文化を知る資料でもあることがよく分かります。

グレーテルのかまどでは現代風の「雅なかき氷」に

2017年の「グレーテルのかまど」では、清少納言の世界をそのまま復元するのではなく、「枕草子」に登場する美意識を現代のかき氷へ取り入れました。

番組では「藤の花」や「梅の花」からイメージを広げ、藤色のシロップや梅を使った氷菓へ仕上げています。

ブルーベリーを使った藤色のシロップやミルクかん、梅を使った素材などを組み合わせ、清少納言が愛した華やかな世界を一皿に表現しました。

単に「昔のかき氷を作る」のではなく、清少納言が美しいと感じた世界をスイーツに置き換える。

人物の物語からお菓子を作る「グレーテルのかまど」らしいアプローチです。

古代のはちみつから平安のあまつら、そして砂糖へ

2026年10月5日の15周年企画では、古代のはちみつから現代の砂糖まで、人類と甘味の歴史をたどります。

その中で清少納言の「あまつら入りの削り氷」は、日本の甘味の変化を見る重要な存在です。

砂糖が自由に使えなかった時代にも、人は甘いものを求めていました。

自然の植物から甘味を取り出し、冬の氷を夏まで保存し、それらを組み合わせて特別なお菓子を楽しむ。

道具も材料も変わりましたが、「冷たくて甘いものを食べたい」という楽しみは1000年以上前から変わっていません。

放送情報

  • 番組名:グレーテルのかまど
  • 放送回:ヘンゼルのスイーツ!タイムトラベル
  • 放送日:2026年10月5日(月)
  • 放送時間:22:00~22:25
  • 放送局:NHK Eテレ
  • 出演:瀬戸康史
  • かまどの声:キムラ緑子
  • 番組開始15周年を記念し、500以上のレシピを振り返りながら甘味の歴史をたどる特別企画

まとめ

清少納言が「枕草子」に残した削り氷は、氷に「あまつら」を加えた平安時代の特別な甘味でした。

冷凍庫も、現在のように身近な砂糖もない時代です。

夏に氷を口にするだけでもぜいたくなところへ、植物から作った貴重な甘味料を加えて味わっていました。

さらに、長い年月の中で失われた「あまつら」は、古典籍と科学を組み合わせた現代の研究によって復元されています。

「グレーテルのかまど」で古代のはちみつから砂糖までを振り返ると、私たちが何気なく食べているかき氷にも、人間が甘さを求め続けてきた長い歴史があることが見えてきます。

参考リンク


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