2026年7月に始まったSPLYZAの医療向け3D歩行分析
『アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜』の2026年9月9日放送回で、とくに今後検索が増えそうなのが「歩行解析による転倒リスク」の技術です。
その中心となる製品が、SPLYZAが2026年7月30日から提供を始めた「SPLYZA Motion Medical」。一般向けのSPLYZA Motionで培った3D動作解析技術を、リハビリなど医療現場向けに発展させた歩行分析計です。
iPadのカメラで歩いている様子を撮影するだけで、身体の動きを3D化して数値として記録できます。大規模な設備を必要としないことから、リハビリの評価方法そのものを変える可能性があります。
この記事でわかること
- SPLYZA Motion Medicalとは何か
- 歩行や転倒リスクをどのように見るのか
- 一般版SPLYZA Motionとの違い
- 医療機器としてどこまで利用できるのか
歩行を映像と数値で確認できる
SPLYZA Motion Medicalは、SPLYZA Motionを医療現場向けに発展させた3次元動作解析システムです。
専用iPadのカメラで患者の歩行などを撮影すると、AIが身体の骨格を認識します。
そこから、
- 歩行速度
- 関節角度
- 関節角速度
- トルク
- 身体各部の軌跡
- 身体各部の移動距離
といった運動学的パラメーターを計測・記録します。
目で見て「前より歩きやすそう」というだけでなく、「膝の角度がどう変化したか」「身体の軌跡がどう変わったか」といった数値を治療前後で比べられるわけです。
2026年7月30日に提供開始したばかり
SPLYZAは2026年7月30日からSPLYZA Motion Medicalを提供開始し、8月18日に一般医療機器として販売を開始したことを正式発表しています。
一般的名称は「歩行分析計」で、医療機器分類は一般医療機器・クラスⅠ。製造販売届出番号は「22B2X10032000001」です。
番組表にある「今年7月から提供開始」という説明は、この新製品を指していると考えられます。
一般版SPLYZA Motionがスポーツ・学校・研究・製造業など幅広い用途に向けた製品なのに対し、Medicalは医療機関で使用することを前提にした別製品です。
TUGテストなら撮影から解析まで最短1分
リハビリでよく使われる評価の1つに「TUGテスト(Timed Up & Go Test)」があります。
椅子から立ち、歩いて方向転換し、再び椅子へ戻って座る一連の動作を見るテストです。
SPLYZA Motion Medicalでは約20秒のTUG動作映像であれば、撮影から解析まで最短1分。3D解析そのものは約30秒程度で処理できるとしています。
この速さは医療現場では重要です。
精密な検査ができても準備と解析に何十分もかかれば、毎日のリハビリで患者全員に使用することは難しくなります。
iPadと三脚だけで短時間に測定できるため、日常的なリハビリの中へ組み込みやすい設計になっています。
「転倒リスク判定」は診断そのものではない
番組では「歩行解析による転倒リスク判定アプリ」と紹介されています。
ここは記事にするとき少し丁寧に整理しておきたいところです。
SPLYZA Motion Medicalの公式な位置付けは、歩行・走行時の運動機能を客観的に評価するための歩行分析計です。
運動器疾患や神経疾患における歩行能力の評価を補助し、問題点の把握、リハビリ計画、介入後の変化確認などを支援します。
公式サイトも「特定の結果や効果を保証するものではない」と明記しています。
つまり、アプリが単独で「この人は何%の確率で転倒する」と医学的診断を確定する製品と考えるのは正確ではありません。
TUGや歩行の数値を客観化することで、医師や理学療法士などが転倒リスクを含む身体状態を評価するときの材料を増やす技術、と理解するほうが近いです。
リハビリの「経験や勘」をなくすという意味ではない
番組では、従来は理学療法士の経験や勘に頼る部分が大きかったと紹介されています。
ただし、SPLYZA Motion Medicalが専門職の経験を不要にするわけではありません。
理学療法士は患者が歩く姿を観察し、筋力、痛み、バランス、疾患、生活環境などさまざまな要素を組み合わせて判断します。
そこへ数字という共通の材料を加えられるのがSPLYZA Motion Medicalです。
例えば、
「以前より歩き方が良くなりました」
だけでは患者本人には分かりにくい場合でも、
「ここまで膝が曲がるようになりました」
「歩行速度がこの程度変わりました」
と映像とグラフを見せることで、変化を共有しやすくなります。
実際、倉敷平成病院のSPLYZA Motion導入事例では、治療前後のデータを比較し、スタッフ間の議論や患者への説明に利用していることが紹介されています。
専用iPadなので自分の端末には入れられない
一般版SPLYZA Motionとの大きな違いです。
SPLYZA Motion MedicalはApp Storeから自分のiPhoneへダウンロードして利用するアプリではありません。
SPLYZAがアプリをインストールした専用iPadと一体になった医療機器として納品されます。
自分で所有しているiPadへMedical版だけインストールすることはできません。撮影時には端末を固定する三脚も必要です。
そのため現時点では、一般家庭向けの「自宅で転倒リスクを測るアプリ」という位置付けではなく、医療機関向けサービスと考えたほうが分かりやすいです。
映像をクラウドへ送らず端末内で解析
医療向けならではの特徴もあります。
SPLYZA Motion Medicalでは、映像解析を端末内で処理する「エッジ処理」を採用しています。
患者の映像を外部クラウドへ送信せず、基本的な解析処理がiPad内で完結します。
初回ログインやアップデート時にはインターネットが必要ですが、通常の解析は通信環境に依存しません。
患者の身体映像を扱う医療現場では、データ管理の面でもかなり重要な設計です。
PDF化して電子カルテにも利用できる
解析したデータは数値やグラフだけで画面表示するのではなく、PDFレポートとして出力できます。
そのため、
患者への説明、
治療前後の比較、
スタッフ間の申し送り、
カンファレンス、
電子カルテへの保存
といった用途にも利用できます。
一度だけ測って終わるのではなく、一定期間ごとに記録すれば「歩き方がどう変わっているか」を時系列で比較しやすくなります。
動作分析検査250点への対応も案内
SPLYZA公式では、SPLYZA Motion Medicalについて「D250 平衡機能検査 5 動作分析検査」の250点に対応すると案内しています。
ただし、実際に保険算定できるかどうかは対象患者や実施内容、審査機関などによって判断されるため、製品を使えば必ず250点を算定できるという意味ではありません。会社側もこの点を注意書きしています。
医療機関側にとっては、高性能な解析ができるだけではなく、普段の診療やリハビリの流れへ組み込めるかどうかも普及の大きなポイントになりそうです。
スポーツ技術が医療へ移った珍しい流れ
SPLYZA Motion Medicalの面白さは、医療機器メーカーがスポーツへ展開したのではなく、順番が逆なところです。
SPLYZAはアマチュアスポーツ向けの映像分析から始まり、学校教育用のSPLYZA Motionを開発しました。
その精度が上がるにつれ、大学の研究者や医療関係者から「リハビリにも使えるのではないか」という声が増えていきました。
京都大学、吉備国際大学、大阪大学大学院医学系研究科などとの共同研究も進み、医療機器版へつながっています。
スポーツで「フォームを良くする」ために使われていた技術が、今度は「もう一度うまく歩く」ための技術へ変化したことになります。
今後は1000施設への導入を目標
J-Net21が2026年9月4日に公開した取材記事によると、SPLYZA Motionは大学や一部医療機関など約200拠点で利用されています。
さらに土井寛之社長は、医療機器版について今後3〜4年で1000施設への導入を目指す考えを示しています。
番組で語られる自宅での遠隔医療まで進めば、病院でしか測れなかった身体の動きを、自宅から医療者へ共有するような使い方も考えられます。
SPLYZAが掲げる「医療格差の解消」が実現するかどうかは、まさにこれからが本番です。
まとめ
SPLYZA Motion Medicalは、2026年7月から始まったばかりの医療向け3D歩行分析システムです。
専用iPadとカメラ1台で歩行やTUG動作を撮影し、全身の動きを3D化。歩行速度、関節角度、軌跡などを数値に変換します。
大掛かりなモーションキャプチャー設備を設置しなくても使えるため、従来は一部の研究施設などに限られていた動作解析を、一般のリハビリ現場へ広げられる可能性があります。
ただし「転倒を自動診断するアプリ」ではありません。専門職による評価を助けるために、これまで目で見ていた動きを客観的なデータへ変える医療機器です。
『アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜』放送後は、SPLYZA Motionそのもの以上に「Medicalとは何か」「転倒リスクをどう見るのか」を検索する人も増えそうなテーマです。
参考リンク
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