「店を残す」から始まった取り組みは、移動の足にまで広がった
2026年9月11日放送のNHK『ドキュメント72時間 北海道・十勝 小さな日用品店で』で舞台となる「みんなのお店KAMIBI」を運営しているのが、NPO法人上美生です。
調べてみると、このNPOは店だけを運営しているわけではありません。上美生と芽室町中心部を結ぶ自家用有償旅客運送「KAMI便」も運行し、高齢者の通院、買い物、子どもの通学や送迎まで支えています。店と交通を一緒に考えているところに、上美生の地域づくりの大きな特徴があります。
この記事でわかること
- KAMI便とはどんな地域交通なのか
- NPO法人上美生が設立された理由
- KAMI便の運賃や利用目的
- KAMIBIと地域交通を一体で運営する意味
KAMI便は住民の移動を支える自家用有償旅客運送

KAMI便は、NPO法人上美生が運営している地域交通です。
上美生地区から芽室町中心部までは約16kmあります。北海道が2026年にまとめた調査資料では、この地域にはバスや鉄道といった公共交通機関がないと整理されています。自動車を運転できるうちは問題が小さくても、免許返納後の高齢者や通学する子どもにとっては大きな課題です。
そこで住民が社会実験を重ね、2020年8月に自家用有償旅客運送を申請。NPO法人上美生の事業としてKAMI便を動かすようになりました。
高齢者の病院だけでなく子どもの通学にも使われる
KAMI便の利用目的は一つではありません。
北海道の資料には、高齢者の通院や買い物だけでなく、子どもの送り迎え、夏季・冬季講習、通学などに使われていることが記されています。
農村地域では、「目的地まで何kmあるか」だけでは移動の難しさは測れません。
家から幹線道路まで距離があることもありますし、冬には雪や凍結があります。家族が毎日送迎できるとも限りません。
そうした地域で、講習を受けた住民などが運転を担い、必要な人を目的地へつなぐのがKAMI便です。
北海道の資料では、単なる移動手段ではなく「地域住民の交流手段の一つ」として捉えている点も紹介されています。
公的資料では片道1000円・地域内500円という設定
公的資料に掲載された運賃例では、上美生から芽室町中心部までは片道1,000円、上美生地域内は500円。月額15,000円という定額利用の設定も確認できます。
芽室町中心部までタクシーを使うと大きな負担になる距離なので、地域交通として利用しやすい価格を設定してきたことが分かります。
なお、運行時刻や利用条件、料金は事業の運用によって変わる可能性があります。実際に利用する場合はNPO法人上美生へ最新条件を確認するのが確実です。
なぜスーパーのNPOが交通まで始めたのか
ここがKAMIBIを理解するうえで重要です。
NPO法人上美生の目的は「スーパーを経営すること」だけではありません。
地域唯一の店がなくなるという問題をきっかけに、住民が「10年後、20年後も上美生で暮らせるには何が必要か」を考えてきました。店を残しても、そこへ行く手段がなければ、高齢者は買い物ができません。
反対に車だけ用意しても、地域内に買い物先がなくなれば、毎回16km離れた市街地まで行かなければなりません。
そこで、
「買い物する場所=KAMIBI」
「そこへ行く移動手段=KAMI便」
を一体で整えてきたわけです。北海道の調査でも、KAMIBI、ガソリンスタンド、KAMI便、コミュニティスペースを生活インフラとしてまとめて運営している点が特徴として整理されています。
2014年から住民が地域の将来を話し合ってきた
こうした仕組みは、Aコープが閉店すると決まって突然できたものではありません。
2014年には「上美生ほしぞらプラン会議」が発足し、住民アンケートやワークショップを行いながら地域の課題を洗い出しました。店、交通、交流の場などについて社会実験を繰り返し、その流れから2018年にNPO法人上美生が設立されています。
KAMI便も、その社会実験から生まれた事業です。
最初から完成された制度を持ち込んだのではなく、住民が「この地区で実際に困っていること」を一つずつ試して仕組みにしていったところが特徴です。
続けるためには人と収益が必要になる
住民主体の取り組みというと、美しい成功事例だけに見えがちですが、実際の運営は簡単ではありません。
北海道が2026年にまとめた調査では、店舗とガソリンスタンドには常時1~2人が必要で、地域住民のパートスタッフを含めてシフトを組んでいること、人材確保が簡単ではないことが課題として挙げられています。
賃金負担もあり、収支のバランスは厳しい状態とされています。KAMIBIについては黒字を安定させ、KAMI便の運行を増やし、新しい事業の収益を地域運営に回していくことが今後の目標に掲げられています。
「地域のためだから無償で頑張る」だけでは、長く続きません。
店を営業し、スタッフへ賃金を払い、車を維持しながら地域サービスを続ける。番組概要にある「みんな笑顔。けど、大変なこともある」という言葉の背景には、こうした地域インフラを維持する現実もあります。
他地域から視察されるモデルになっている
上美生の取り組みは、同じ問題を抱える地域からも注目されています。
2025年には、北海道幌延町の地域おこし協力隊員が上美生に滞在し、KAMIBIや地域交通の運営を研修しました。幌延町問寒別地区でも地域唯一のAコープが閉店しており、上美生と似た課題を抱えていたためです。
小さな農村の一事例ですが、
「店が撤退したあと、住民はどうするのか」
「公共交通がない地域の移動をどう守るのか」
という全国の地方が抱える問題への一つの答えになっています。
実用情報
KAMI便について公的資料で確認できる主な内容は次の通りです。
- 運営:NPO法人上美生
- 主なエリア:上美生地区~芽室町中心部
- 主な利用:買い物、通院、通学、子どもの送迎など
- 公的資料掲載の運賃例:芽室町中心部まで片道1,000円
- 地域内利用の運賃例:片道500円
- 月額利用例:15,000円
- 運転:必要な講習を受けた地域住民など
最新の運行日、時刻、予約方法、料金はNPO法人上美生へ確認してください。
まとめ
『ドキュメント72時間』の舞台になるKAMIBIを調べると、その先にKAMI便というもう一つの大切な仕組みが見えてきます。
上美生では、店がなくなる問題と、移動できなくなる問題を別々に考えませんでした。
住民自身がNPO法人をつくり、店を残し、ガソリンスタンドを維持し、交流スペースを整え、さらに地域交通まで運営しています。
番組で映る小さな日用品店は、その仕組みの中心にある場所です。
だからこそ、KAMIBIにやってくる一人ひとりの姿から、十勝で暮らし続けることの楽しさだけでなく、地域を維持していく難しさまで見えてきます。
参考リンク
北海道「NPO法人上美生 地域運営組織調査シート」
北海道「地域交通 KAMI便」資料
芽室町 地域公共交通計画
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