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UMIAILEの無人小型ボート「高度0mの人工衛星」、ホンダ発の姿勢制御技術と板井亮佑CEOの挑戦|アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜

テクノロジー・科学

UMIAILEが小型無人ボートで挑む「海の見える化」

2026年9月16日放送のテレビ東京『アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜』に登場するのは、Honda発の海洋ロボティクス・スタートアップUMIAILE(ウミエル)です。CEOの板井亮佑さんとCTOの海野暁央さんが、小型無人ボートによって海洋観測を大きく変えようとする挑戦を語ります。

番組で紹介される無人ボートは長さ約3メートル、重さ約40キロ。そこへ調査目的に応じた機器を載せる仕組みで、板井さんはこの考え方を「素うどん」に例えています。

しかしUMIAILEの面白さは、小さなボートを造ったことだけではありません。Hondaで培われてきた姿勢制御の考え方を海へ持ち込み、有人調査船だけでは難しかった高頻度・高密度の海洋観測を実現しようとしている点にあります。Honda公式では、この構想を「海の見える化」と位置付けています。

この記事でわかること

  • UMIAILEの小型無人ボート「UMIAILE ASV」の仕組み
  • 板井亮佑CEOが語る「素うどん」の意味
  • HondaのASIMOやUNI-CUBにつながる姿勢制御技術
  • 海洋観測から地震研究、漁業、防災まで広がる活用分野

UMIAILE ASVは調査機器を載せ替えられる小型無人ボート

公式動画:小型無人ボート「UMIAILE ASV」

UMIAILEが開発している「UMIAILE ASV」は、ASV=Autonomous Surface Vehicle、つまり自律航行型無人船です。

Hondaは2025年3月の発表時、UMIAILE ASVについて、無人で水上を高速自律航行し、目的に応じた観測機器を搭載することで海洋データを収集できる機体と説明しています。機体販売だけでなく、収集したデータの分析・提供も事業に含まれています。

番組で紹介される機体について明らかになっているのは、

  • 長さ:約3メートル
  • 重さ:約40キロ
  • 無人で航行
  • 調査目的に応じて各種観測機器を搭載

という特徴です。

ただし、UMIAILEでは複数のプロトタイプや実証機を開発しているとみられ、2026年4月に北海道乙部町で実施した試験では全長2メートルクラスのASVが使用されています。

つまり「UMIAILE ASV=すべて3メートル」と考えるのではなく、番組で紹介される機体と実証試験の機体は分けて見たほうが正確です。

板井亮佑CEOが無人ボートを「素うどん」と呼ぶ理由

番組で印象的なのが、板井亮佑CEOによる「素うどん」という表現です。

ボート自体にあらゆる観測装置を固定してしまうのではなく、まず安定して海を走れる無人ボートを用意し、調べたい内容に合わせて必要な機器を載せる。うどんに具材を追加するように、観測機器を「トッピング」していく考え方です。

実際にUMIAILEは、用途に応じて、

  • 魚群探知機
  • 水質計
  • 海象観測機器
  • 海洋生態系の観測機器
  • 海底地殻変動などを調べる機器

などを組み合わせる構想を進めています。Hondaも、海象、海洋生態系、海洋地質などのデータ収集をUMIAILE ASVの用途として挙げています。

この設計なら「魚を探す船」「水温を測る船」「地震研究専用船」と用途ごとに別々の船を造るのではなく、ベースとなる無人ボートをさまざまな観測へ展開できます。

まさに「素うどん」という言葉が、UMIAILEの機体思想を非常に分かりやすく表しています。

波のある日本の海を走る鍵はHondaの姿勢制御技術

小型ボートで海を調査すると聞くと、特に気になるのが波です。

海面は道路のように平らではありません。波や風を受け続ければ、小型艇ほど姿勢を乱されやすくなります。番組でも、日本の波が高い海で無人艇が安定して航行できるのかという点が大きなテーマになります。

そこでUMIAILEが利用しているのが、水中翼と独自の姿勢制御技術です。

板井さんはHonda在籍時、ロボットや電動モビリティのハードウェア開発・設計に携わっていました。また、本田航空研究会で人力飛行機や電動飛行機の研究にも取り組んでいます。

水中翼を使って船体を水面から浮かせると、水の抵抗を減らして効率よく進める一方、船体は不安定になりやすくなります。

そこで板井さんが着目したのが、Hondaの二足歩行ロボットASIMOやパーソナルモビリティUNI-CUBで使われてきた「不安定な機体を安定させる」という姿勢制御の考え方でした。

自動車メーカーから生まれた会社でありながら、その技術の源流に「クルマ」だけではなくロボットや航空技術があるところも、UMIAILEの特徴です。

板井亮佑CEOは模型を持って毎朝荒川へ通っていた

UMIAILE ASVは、最初から海洋観測用として生まれたわけではありません。

姿勢制御技術そのものに興味を持った板井さんは、当初、海や湖で楽しむ電動サーフボードとしての事業化を考えていました。そこから漁業への応用を検討し、さらに海洋観測へと構想を広げています。

水中翼と姿勢制御を組み合わせるアイデアを思いついた後には、手で持てる大きさの模型を製作。

朝に荒川へ行って模型を走らせ、日中に問題点を考え、帰宅後に修正し、翌朝また荒川へ持っていくという開発を約1年間続けたとHondaのインタビューで明かしています。

こうした試行錯誤から生まれた技術が、Hondaの新事業創出プログラム「IGNITION」へつながりました。

IGNITIONは2017年にHonda従業員向けとして始まった新事業創出プログラムで、事業化に向けてデザイン、知的財産、広報、事業開発などの専門人材が提案者を支援する仕組みです。

UMIAILEはそのIGNITIONから誕生したスタートアップの1社です。

漁業向けから「海の見える化」へ変わった大きな転機

UMIAILEの事業が現在の形になるまでには、大きな方向転換がありました。

板井さんは当初、小型無人艇を漁業の効率化へ生かせないかと考え、漁師への聞き取りや漁業体験、養殖の手伝いなどを通して現場を調査しました。

しかし、製造コストや販売価格を考えると、漁業だけでは事業として成立させることが難しいと分かります。

その後、地震研究の専門家との出会いが転機になりました。

海底プレートの動きを精密に観測できれば地震研究に役立ちます。一方、海草や海藻の生息域などを詳しく調べることは、ブルーカーボンを含む環境研究にもつながります。

そこで対象を漁業だけに限定するのではなく、

「海そのものを観測するためのプラットフォームを作る」

という方向へ構想が広がっていきました。

現在UMIAILEは、このビジョンを「海の見える化」と表現しています。

UMIAILEが掲げる「高度0mの人工衛星」

UMIAILEが現在掲げている特徴的なコンセプトが、「高度0mの人工衛星」です。

人工衛星が上空から地球を観測するように、多数の小型無人ボートを海へ配置して継続的にデータを集めれば、これまで点や線としてしか捉えにくかった海の状態を、より広い範囲で把握できる可能性があります。

UMIAILEは将来的な社会実装に向け、

  • 海洋ロボティクス技術の高度化
  • 実証フィールドの拡大
  • 量産を見据えたプロトタイプ開発
  • 複数の無人機を連携させる群制御
  • 産官学連携

などを進めています。

HondaのIGNITION公式サイトも、UMIAILEについて「独自の姿勢制御技術による高効率なASV」によって、高頻度・高密度の海洋観測を目指す事業と紹介しています。

北海道では魚群・水温・塩分濃度の自動計測に成功

この構想はすでに実海域で検証段階に入っています。

UMIAILEと北海道大学は2025年3月から共同研究を開始し、2026年4月には北海道乙部町沿岸で小型無人ボートのフィールド試験を実施しました。

使用した全長2メートルクラスのASVには、魚群探知機と多項目水質計を搭載。

自律航行しながら、

  • 水深
  • 水温
  • 塩分濃度
  • 濁度
  • 魚群情報

などの取得に成功しています。

人が船に乗って毎回同じ海域を走り、機器を操作してデータを集める作業を無人化できれば、調査回数を増やしやすくなります。

UMIAILEが目指しているのは、単なる「無人で走る船」ではなく、海洋データを継続的に集めるための新しいインフラです。

地震研究や環境調査、防災にも広がるUMIAILE ASV

UMIAILE ASVが想定している用途は海洋生態系だけではありません。

Hondaが公表している内容やUMIAILEの実証事例からは、

  • 海底地殻変動の観測
  • 地震研究
  • 魚群・漁業資源の調査
  • 水温・塩分濃度などの海洋環境調査
  • ブルーカーボン関連の藻場調査
  • 河川地形のモニタリング
  • 防災・インフラ点検

などへの展開が見えてきます。

有人の大型調査船を完全に置き換えるという話ではありません。

むしろ、大型船では頻繁に行うことが難しい観測や、人が近づきにくい場所での計測を、小型無人艇が補うという考え方に大きな可能性があります。

UMIAILEの会社・事業情報

UMIAILEについて確認できる主な情報は次の通りです。

  • 会社名:株式会社UMIAILE
  • 読み方:ウミエル
  • 代表者:板井亮佑CEO
  • CTO:海野暁央
  • 事業:海洋ロボティクス事業
  • 主力技術:小型無人ボート「UMIAILE ASV」
  • 目標:「海の見える化」
  • 出自:Honda新事業創出プログラム「IGNITION」
  • 主な対象:大学、研究機関、行政、海洋関連事業など

HondaはUMIAILE設立発表時、機体販売に加えて海洋データの分析・提供を事業とし、将来的には海外展開も視野に入れると説明しています。

まとめ

UMIAILEの小型無人ボート「UMIAILE ASV」は、調査目的に合わせて観測装置を載せ替えられる海洋観測プラットフォームです。

番組で板井亮佑CEOが「素うどん」と表現するように、ボートを土台にして必要な観測機器を組み合わせることが大きな特徴です。

さらにその根底には、Hondaで培われたロボティクスや姿勢制御、人力飛行機などの航空技術があります。

電動サーフボードのアイデアから始まり、漁業での活用を模索し、地震研究者との出会いをきっかけに「海の見える化」へ。

現在は「高度0mの人工衛星」という構想を掲げ、北海道の実海域では魚群や水質データを自律航行しながら取得するところまで進んでいます。

小さな無人ボートが海を走る姿だけを見るとシンプルですが、その先にあるのは、地震、気候変動、漁業、防災など幅広い分野に使える「海洋データのインフラ」をつくる挑戦です。

参考リンク


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