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ドライアイスで豪雨を抑える気象制御|千葉大・小槻峻司の実験と雨量32%減の意味

テクノロジー・科学

ドライアイスで豪雨を抑える研究の仕組みと実験結果

ドライアイスを雲にまくことで、集中豪雨の雨を一か所に集めず、別の場所へ分散させる研究が進んでいます。千葉大学の小槻峻司教授らが参加した2026年の数値実験では、条件によって局地的な3時間雨量が最大32%減る結果が得られました。ただし、実際の豪雨を32%減らせたわけではありません。2026年10月27日放送のテレビ東京『世の中お金で見てみよう』では、千葉大学が挑む気象制御研究が紹介されます。仕組みと実験で分かったこと、実用化までの課題を説明します。

ドライアイスで雨を変える仕組み|クラウドシーディングとは

雲に働きかけて雨や雪の降り方を変えようとする方法は、クラウドシーディング(雲への種まき)と呼ばれます。ドライアイスは固体の二酸化炭素で、非常に低い温度を利用して雲の中に氷の粒ができるきっかけを与えます。雲がある場所なら必ず雨を降らせられるわけではなく、雲の温度や水分など、条件がそろう必要があります。

通常の人工降雨は、雲の粒を育てて雨や雪を増やすことを目指します。一方、千葉大学の小槻峻司(こつき・しゅんじ)教授らが参加した研究には、「雨を先に海上で降らせ、陸へ運ばれる水分を減らす」構想と、「雲の氷の粒を増やし過ぎて局地的な強雨を弱める」構想があります。似ているようで、狙いとメカニズムは異なります。

後者は「オーバーシーディング」と呼ばれます。雲の中に非常に多くの氷粒が生まれると、水蒸気が多数の粒に分散して、一つ一つが大きな雨粒へ成長しにくくなることがあります。その結果、特定の地域に集中していた雨が風下へ分散する可能性がある、という発想です。

重要なのは、研究の目標が「豪雨を消すこと」とは限らない点です。特定の場所に集中する雨を小さくし、危険な浸水や土砂災害のリスクを減らせないかを考えています。ただし、ほかの地域で雨量が増えないかも慎重に検証しなければなりません。

「雨量最大32%減」の意味|2014年広島豪雨を再現した数値実験

2026年3月18日、東北大学と千葉大学などの共同研究チームが、線状降水帯へのシーディングに関する研究成果を公表しました。研究では、2014年8月の広島豪雨をコンピューター内の気象モデルで再現し、発達中の雲に大量の氷の種を投入した場合の変化を計算しています。

その結果、条件を適切に選んだ場合に豪雨域の3時間雨量が平均11.5%、最大32%減少し、雨が風下側へ分散する傾向が見られました。研究発表の要点には平均5%という数値もあり、何を平均するか、どの条件を比較するかで結果が変わることが分かります。32%は、あらゆる豪雨で必ず達成できる削減率ではありません。

この成果は2026年3月に学術誌『Natural Hazards and Earth System Sciences』に掲載され、東北大学の研究発表でも詳しく説明されています。雲の種をまく高度や範囲を変えるなど、多くの条件を試したコンピューターによる数値実験です。

したがって、「ドライアイスを実際の広島上空にまき、雨が32%減った」わけではありません。現実の雲で同じ効果を出すには、投入する物質の量、散布する高度、航空機の運用、気象条件の予測など、越えなければならない課題があります。

富山湾では2026年1月に予備実験|飛行機から何を確かめたか

研究チームは机上の計算だけでなく、実際の空でも手順を検証しています。千葉大学、富山大学、富山県立大学の共同チームは2026年1月、富山湾近海の上空で人工降雪に関する予備実験を実施しました。小型プロペラ機からドライアイスの粒を散布し、雪雲の状態などを観測する取り組みです。

実験計画によると、上空約3,500メートル付近の雪雲を対象とし、気象レーダー、ライダー、地上の観測機器なども組み合わせて雲の変化を調べました。千葉大学の実験計画では、雪雲を対象に安全性へ配慮し、陸側へ風が吹く場合や大雪警報が出ている場合には散布を避ける条件を示しています。

研究チームは、航空機を使う場合の調整、散布方法、観測体制などを確かめ、運用上の知見を蓄積しました。この富山湾実験は、夏の線状降水帯を弱めることに成功した実証ではありません。冬の雪雲を利用し、将来の気象制御に向けた基礎的な手順を検証した段階です。

科学技術振興機構(JST)の2026年7月時点の研究成果概要でも、富山湾での予備実験を技術的・運用的な知見の蓄積として位置付け、数値実験と屋外観測を組み合わせて検証を進めるとしています。研究は「計算上の可能性」と「屋外での実施」を段階的につなごうとしています。

いつ実用化する?2050年目標と安全性・社会合意の課題

小槻教授が進める研究は、内閣府のムーンショット目標8に関係しています。これは、2050年までに台風や豪雨などの気象を制御し、極端な風水害の脅威から人々を守る社会を実現することを目指す国家的な研究開発です。2050年に必ず気象を自由に操作できるという意味ではありません。

研究が難しいのは、豪雨が発達してから力ずくで止めるのではなく、雲が成長する前に、どこへどれだけ介入すると効果があるか予測しなければならないためです。小槻教授の研究室では衛星観測、スーパーコンピューター、データ同化、AIなどを組み合わせ、複雑な大気の状態を理解して介入地点を選ぼうとしています。

そして、ある地域の雨を減らす操作が、別の地域へ負担を移す可能性も見逃せません。海や空での実験には安全性の検証や関係者の合意が必要で、科学的に可能だから直ちに実施できるものではありません。気象制御は避難、河川整備、気象情報の活用に代わる即効性のある防災策ではなく、将来の被害軽減を目指す研究です。

研究方法は一つではありません。気流や台風の勢力を変える異なる発想については、洋上カーテンや台風減勢に挑む気象制御研究でも紹介しています。今回のドライアイスを使う方法と比べると、自然現象へ介入する手段の違いが分かります。

まとめ

千葉大学の小槻峻司教授らは、ドライアイスなどを雲にまいて豪雨の集中を弱める気象制御を研究しています。2026年の数値実験で示された最大32%の雨量減は、特定条件での計算結果であり、実際の豪雨を抑えた実績ではありません。富山湾では雪雲を使った予備実験も実施。安全性や他地域への影響を検証しながら、長期的な実用化を目指しています。


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