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イカリア島が「死ぬことを忘れた島」と呼ばれる理由 90歳超の食事・運動・人とのつながり|世界で開け!ひみつのドアーズ

健康

ギリシャ・イカリア島の長寿は「特別な健康法」だけではなかった

2026年9月16日放送のNHK総合『世界で開け!ひみつのドアーズ』では、エーゲ海に浮かぶギリシャ・イカリア島を訪れます。「死ぬことを忘れた島」とも呼ばれるこの島で、90歳を超えて泳ぎ、働き、新しい楽しみを見つけながら暮らす人々を取材。実際の研究をたどると、イカリア島の長寿を支えていると考えられるのは、食事だけではなく、日常的な身体活動や昼寝、家族、地域との濃いつながりまで含めた暮らし全体であることが見えてきます。

この記事でわかること

  • イカリア島が世界有数の長寿地域とされる根拠
  • 90歳以上の住民にみられた食事と運動の特徴
  • 人とのつながりや祭りが暮らしの中で果たす役割
  • 「長寿の秘密」を食べ物1つに絞れない理由

イカリア島は実際に90歳以上が多い長寿の島

イカリア島は、ギリシャ東部のエーゲ海に位置する島です。ギリシャ政府観光局も現在、イカリアを「長寿とゆったりしたリズムの島」と紹介しています。

長寿については単なる観光上のキャッチフレーズだけではありません。

2025年に学術誌『The Gerontologist』に掲載された人口統計の検証では、2009年にイカリア島で90歳以上の住民が少なくとも124人確認され、その割合は1.49%。ギリシャ本土の0.33%と比べて大幅に高かったと報告されています。

そのためイカリア島は、沖縄やイタリア・サルデーニャ島などとともに、長寿者が多い地域として知られる「ブルーゾーン」の1つとして研究対象になってきました。

ただし、「島に住めば長生きできる」という単純な話ではありません。ここからがイカリア島の面白いところです。

90歳以上の暮らしを調べると「人とのつながり」が際立っていた

イカリア島の90歳以上を対象にした研究では、71人の生活について食事、運動、家族関係、社会参加などが詳しく調査されています。

特に目を引くのが、人との接触の多さです。

  • 77.9%が毎日誰かと交流
  • 62.0%が地域の祭り「パニギリア」に参加
  • 家族同士の助け合いが非常に強い
  • 高齢になっても地域社会との接点を持ち続けている

研究者は、イカリア島の90歳以上について、家族の結びつきと社会的交流のレベルが非常に高かったと結論づけています。

つまり「長寿の島」というと、オリーブオイルや魚などの食べ物に目が向きがちですが、イカリア島では年齢を重ねても人の輪から離れない生活も大きな特徴です。

島の祭り「パニギリア」は、単なる観光イベントではなく、住民が集まり、食事をし、会話をし、音楽や踊りを楽しむ地域の場でもあります。

90歳を超えても「誰かと会う予定がある」「地域に自分の居場所がある」という日常そのものが、イカリアらしい暮らしを形づくっています。

食事は地中海食が基本、魚や果物、オリーブオイルも身近

もちろん食生活も無関係ではありません。

イカリア島では、野菜、豆類、果物、魚、オリーブオイルなどを中心とする地中海型の食生活が根付いています。

2009年に65~100歳の島民673人を調べた「Ikaria Study」では、84%が週150gを超える魚を食べていたと報告されています。魚の摂取量と高齢者の腎機能との間にも関連が確認されました。

また、2009年から2013年まで追跡した研究では、果物の摂取や、コーヒー・茶を飲むこと、オリーブオイルを専ら使用することなどが心血管疾患の発生と逆方向に関連していました。

とはいえ、ここには大切なポイントがあります。

90歳以上だけを調査した別の研究では、地中海食への適合度は62.7%でした。研究者自身も、食生活については「それだけで説明できるほど際立った結果ではない」としています。

つまり、

「イカリア島の人は○○を食べているから長生き」

という1食品だけの説明では、実際の研究結果を十分に表せません。

畑仕事や徒歩など「運動のためではない運動」が続いている

運動についても特徴的です。

90歳以上を対象とした調査では、71.8%が中程度または高い身体活動レベルに分類されました。特に男性では85.3%に達しています。

ジムへ通って運動するというよりも、農作業や家の仕事、歩いて移動することなどが生活そのものに組み込まれていました。

イカリア島は山が多く、村と村を結ぶ道にも高低差があります。ギリシャ政府観光局も、島には渓谷や森林、オリーブ畑を抜ける数多くの徒歩ルートがあると紹介しています。

番組では、今も毎日のように海で泳ぐ95歳の住民が登場します。

研究対象となった90歳以上でも79.7%に海で泳いだ経験があり、泳ぐのをやめた年齢の平均は75.5歳でした。

95歳になっても泳ぎ続けているという番組の人物は、その中でもかなり印象的な存在になりそうです。

約7割が昼寝をする「急がない暮らし」

イカリア島の暮らしでもう1つ興味深いのが昼寝です。

90歳以上を対象とした調査では、69.6%が昼寝をすると回答。昼寝をする人の平均時間は約81分でした。

もちろん、この数字だけから「80分昼寝すれば長生きできる」と結論づけることはできません。今回の研究は観察研究であり、昼寝そのものが寿命を延ばしたことを証明したものではないためです。

それでも、時間に追われ続けるのではなく、疲れたら休み、起きればまた仕事や人付き合いへ戻っていく生活は、イカリア島の大きな特徴の1つです。

食事、身体活動、休息、交流が別々の「健康習慣」になっていないところに、この島らしさがあります。

88歳から機織りを始めても遅くない

今回の『世界で開け!ひみつのドアーズ』で、特に象徴的なのが88歳で機織りに出会い、97歳になった現在も生きがいとして続けている人です。

一般には80代、90代になると「新しいことを始める年齢ではない」と考えがちです。

しかしイカリア島で番組が出会う人々は違います。

95歳になっても海へ入り、90代になってもヨットを操り、88歳から新しいものづくりを始める。

長寿を「何年生きたか」だけではなく、高齢になってからも生活の中に楽しみや役割が残っている状態として見せているのが、この回の大きな見どころです。

90歳以上を対象とした研究でも、高齢になってからも仕事を続ける人や社会行事へ参加する人がおり、研究者は、そうした活動が社会との結びつきを保つことにつながっていると指摘しています。

イカリア島の長寿の秘密は1つではない

イカリア島を調べるほど、「長寿食材はこれ」という単純な答えから離れていきます。

研究から確認できる特徴をまとめると、

  • 野菜・果物・魚・オリーブオイルなどを取り入れた食生活
  • 農作業や徒歩など日常の中で体を動かす生活
  • 年齢を重ねても続く家族や友人との交流
  • 地域の祭りや行事への参加
  • 昼寝などを含めた休息
  • 高齢になっても仕事や楽しみを持つ暮らし

といった要素が同時に存在しています。

どれか1つだけを切り取るより、食べる、動く、休む、人と会う、楽しみを持つことが自然につながっていると考える方が、イカリア島の生活には近そうです。

まとめ

ギリシャ・イカリア島が「死ぬことを忘れた島」と呼ばれる背景には、実際に90歳以上の住民が多いという人口統計上の特徴があります。

しかし、その理由をオリーブオイル、魚、昼寝といった1つの習慣だけに求めることはできません。

特に90歳以上を調査した研究で印象的なのは、約78%が毎日誰かと交流し、約72%が中~高レベルの身体活動を続けていたことです。

『世界で開け!ひみつのドアーズ』に登場する95歳の泳ぎ手や、88歳から機織りを始めた97歳の姿は、まさにその暮らしを象徴しています。

長生きするためだけに生活するのではなく、何歳になっても海へ行き、人と会い、新しい楽しみを見つける。今回のイカリア島特集は、「健康長寿」の意味そのものを考えさせる回になりそうです。

参考リンク


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