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聞き取り困難症LiDは聴力正常でも会話が聞き取れない|あさイチで紹介する原因と対策

健康

聴力検査は正常なのに会話が聞き取れない「LiD」

耳鼻咽喉科で聴力検査を受けても「異常なし」。それなのに、騒がしい店では相手の言葉が抜け落ちる、複数人で話すと会話についていけない、電話の内容が頭に入ってこない――。そんな「聞こえているのに聞き取れない」状態が聞き取り困難症(Listening difficulties:LiD)です。

2026年9月14日放送のNHK「あさイチ」では、難聴や耳鳴りとともに、聴力は正常なのに言葉が途切れて聞こえる「聞き取り困難症」が取り上げられます。

LiDでは、一般的な聴力検査で音を感じ取る力が正常範囲でも、日常生活の特定の場面で言葉を聞き取ることに強い困難を感じることがあります。特に問題になりやすいのが、雑音のある場所、複数人の会話、電話、会議、授業などです。

この記事でわかること

  • 聞き取り困難症LiDとはどんな状態なのか
  • 聴力が正常なのに言葉を聞き取れない理由
  • 騒がしい場所や職場でできる具体的な対策
  • LiDが疑われるときの相談先と検査

聞き取り困難症LiDは「音は聞こえるのに言葉として入りにくい」

公式動画:第198回「聞こえているけど、言葉として聞き取れない『聞き取り困難症LiD』って知ってますか?」

LiDの特徴を一言で表すと、「音が小さくて聞こえない」のではなく、「音は聞こえているのに内容をうまく聞き取れない」状態です。

大阪公立大学の阪本浩一さんが研究代表を務めるLiD/APD研究班では、通常の純音聴力検査では正常でありながら、うるさい場所や複数人での会話、電話、接客、授業などで聞き取りに困難を示す状態として説明しています。

たとえば、次のような場面です。

  • 静かな部屋で1対1なら普通に話せる
  • 居酒屋やフードコートでは相手の声が分からなくなる
  • 会議で複数人が話すと内容を追えなくなる
  • 電話では言葉の一部が抜けたように感じる
  • 学校で先生の話を聞き続けるのが難しい
  • 「聞いていたはずなのに内容を覚えていない」と感じる
  • 聞き返しや聞き間違いが多くなる

そのため本人も周囲も「ちゃんと聞いていないだけ」「集中力がない」と考えてしまうことがあります。

しかし、耳鼻咽喉科で通常の聴力検査を受けても異常が見つからないケースがあり、本人が感じる困難と検査結果に大きなずれが生まれることがLiDの特徴の一つです。

原因は耳だけではなく注意・認知・言語など複数の要因が関係する

以前は「聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder:APD)」という名称が広く使われ、中枢、つまり脳で音の情報を処理する機能に問題がある状態として説明されてきました。

現在は、もう少し広い視点から考えられています。

研究では、聞き取りの困難には聴覚情報処理だけでなく、

  • 注意力
  • ワーキングメモリ
  • 認知機能
  • 言語能力
  • 発達特性
  • 心理状態
  • 周囲の音環境

など、複数の要因が関係する可能性が指摘されています。そこで、特定の原因だけに限定せず、本人が抱えている「聞き取りの困難」全体を捉える言葉としてLiDが使われるようになっています。

実際、AMEDは2026年度、大阪公立大学の阪本浩一さんを研究代表者として「多因子背景に基づく聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)の層別化・最適化」をテーマにした研究を採択しています。LiDを一つの原因だけで説明するのではなく、背景の違いに応じた支援方法を探る研究が現在も進められています。

つまり、「LiD=脳の特定部分に異常がある病気」と単純に断定することはできません。

本人によって困難が生じる理由や程度が違うことが重要なポイントです。

対策は「聞く努力」より雑音を減らして文字情報を増やす

LiDでは、本人がさらに集中して聞こうとするだけでは負担が大きくなることがあります。

大切なのは、まず聞き取りやすい環境を作ることです。

LiD/APD研究班では、家庭でできる工夫として、テレビの字幕を使う、重要な部分を繰り返してもらう、話す前に名前を呼んで注意を向けてもらう、掃除機や水道など大きな生活音があるときには会話を避けるなどを紹介しています。

職場なら、

  • コピー機やエアコンなどの雑音から離れた席にする
  • 大事な指示は口頭だけでなくメールやメモでも伝えてもらう
  • 会議では音声文字変換を利用する
  • 複数人が同時に話さないようにする
  • 必要に応じて静かな場所で説明してもらう

といった工夫があります。

学校では先生の声を聞き取りやすい前方の席にするほか、話し手の声を直接届ける送受信機などを利用する方法もあります。

ポイントは、本人に「もっと集中して」と求め続けるのではなく、情報の入り方そのものを変えることです。

カーペットや厚手のカーテンも聞き取りやすさにつながる

「あさイチ」では、カーペットや厚手のカーテンなどを使い、リビングで音を聞き取りやすくする工夫も紹介される予定です。

LiDでは声そのものの大きさだけでなく、周囲から入る雑音との区別が難しくなるケースがあります。

硬い床や壁が多い部屋では声や生活音が反射しやすいため、カーペットやカーテンなど音を吸収する素材を取り入れることは、反響を抑える方法の一つになります。

さらに家庭では、テレビをつけたまま会話しない、食器洗いや掃除機を止めてから話すなど、必要な声以外の音を減らすだけでも会話環境を変えられます。

補聴器や送受信機が役立つ人もいる

「聴力が正常なら補聴器は意味がないのでは」と思うかもしれませんが、LiDでは本人の状態によって補助機器が役立つ場合があります。

研究班の公式サイトでは、補聴器のほか、話し手がマイクを装着し、その声を聞き手の受信機へ直接届ける補聴援助システムなどが紹介されています。

特に教室や会議室のように話し手との距離があり、周囲に雑音が多い環境では、目的の声を直接届けることで聞き取りを助けられる可能性があります。

ほかにも、

  • ノイズ低減機能のある機器
  • 音声文字変換アプリ
  • オンライン会議の字幕
  • 電子メモ
  • ボイスレコーダー

なども選択肢になります。

ただし、どの機器が合うかは人によって違います。

LiDだから必ず補聴器が必要というわけではなく、自分が特に困る場面を確認したうえで支援方法を選ぶことが重要です。

LiDとAPDはまったく別のものではない

「LiD」と「APD」の両方を目にすると、別の病気なのか迷うかもしれません。

APDは「Auditory Processing Disorder」の略で、日本語では聴覚情報処理障害と呼ばれます。

一方のLiDは「Listening difficulties」の略で、聞き取り困難を意味します。

国内の研究では、APDという概念だけでは説明しきれない注意、認知、言語などの要因を含めて広く捉えるため、「LiD/APD」と併記されることが増えています。

そのため「LiDならAPDではない」という単純な区分ではありません。

むしろ現在は、なぜ聞き取れないのかを一人ひとり詳しく評価し、その人に必要な支援へつなげることが重視されています。

一般的な聴力検査だけでは困難が見つからないことがある

通常の聴力検査では、周波数ごとに「どのくらい小さな音まで聞こえるか」を調べます。

しかし実際の生活では、周囲の人の話し声、空調音、食器の音、テレビなど、いくつもの音が同時に存在します。

LiDでは、静かな検査室で音を聞く能力が正常でも、こうした複雑な環境になると聞き取りが難しくなることがあります。

研究班では、聞き取りの自覚症状、純音聴力検査、語音明瞭度、聴覚情報処理に関する検査などを組み合わせて評価する方法が検討されています。国内では診断基準が完全に統一されている段階ではなく、現在も研究が続いています。

「異常なし」と言われても困っているなら耳鼻咽喉科へ相談する

聞き取りにくさを感じた場合、「LiDに違いない」と自己判断するのではなく、まず耳鼻咽喉科で耳や聴力の状態を確認することが大切です。

聞き取りにくさは、一般的な難聴や耳の病気によって生じることもあります。

そのうえで通常の聴力検査に問題がないにもかかわらず、

  • 雑音の中では極端に聞き取れない
  • 電話が苦手
  • 会議についていけない
  • 複数人の会話が混ざって聞こえる
  • 聞き返しが非常に多い

といった困難が続いているなら、LiD/APDについて相談できる医療機関を検討する方法があります。

ただし専門的な評価を行う施設はまだ限られています。研究班の公式サイトも、細かな検査が可能な医療機関は多くなく、受診前に対応状況を確認するよう案内しています。

まとめ

聞き取り困難症LiDは、一般的な聴力検査では正常なのに、日常生活では言葉の聞き取りに困難を感じる状態です。

特に、雑音の多い場所、複数人の会話、電話、会議、授業などで困りやすくなります。

現在は単純に「耳は正常で脳に問題がある」と説明するのではなく、聴覚情報処理だけでなく注意、認知、ワーキングメモリ、言語、発達特性、心理状態や環境などを含めて考える方向へ研究が進んでいます。

対策も「もっと集中して聞く」だけではありません。

雑音を減らす、静かな場所で話す、重要な情報は文字でも伝える、字幕や音声文字変換を使う、必要に応じて補助機器を使うなど、その人が苦手とする場面に合わせて環境を変えることが大きな助けになります。

聴力検査で「異常なし」と言われても、実際の生活で困っているなら、その困難までなくなるわけではありません。

聞き取りづらさが生活や仕事、学校に影響している場合は、まず耳鼻咽喉科で耳の状態を確認し、必要に応じてLiD/APDに詳しい医療機関へ相談することが一つの方法です。

参考リンク

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