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Zipparは1km約15億円・2028年私有地運行を目標 曲がれる自走式ロープウェイの仕組み|BooSTAR -スタートアップ応援します-

テクノロジー・科学

「空を走る」Zipparはバス不足と渋滞を変える新しい公共交通へ

2026年9月26日放送のテレビ朝日系『BooSTAR -スタートアップ応援します-』で取り上げられるのが、Zip Infrastructure株式会社が開発する自走式ロープウェイ「Zippar(ジッパー)」です。

山の観光地で見かけるロープウェイとは発想が大きく異なり、道路上空を走り、カーブや分岐にも対応。運転士を必要としない自動運転を前提とし、既存のモノレールより低い建設コストと短い工期を目指しています。

すでに福島県南相馬市には試験線が完成。開発会社は2028年の私有地内運行、2033年の公共交通としての運行を目標に掲げており、「未来の乗り物」から実際の交通インフラへ進む段階に入っています。

この記事でわかること

  • Zipparの建設費と実用化までの目標時期
  • ロープウェイなのにカーブできる独自の仕組み
  • 自動運転がバスの運転士不足対策につながる理由
  • 須知高匡CEOがZipparを生み出した背景

Zipparは1km約15億円・2028年の私有地内運行を目標

公式動画:Zip Infrastructure公式サイト掲載「Zippar」紹介動画

Zipparの大きな特徴が、従来型の都市交通と比べた建設コストの低さです。

Zip Infrastructureが示している主な特徴は次の通りです。

  • 建設費:約15億円/km
  • 建設期間:約1年
  • 既存モノレールと比べてコスト・期間は約1/5
  • 自動運転
  • カーブ・分岐を含む自由な路線設計
  • 2本のロープを使用
  • 最大風速30m/sまでの運行を想定

会社側が公表している長期計画では、2028年に私有地内での運行、2033年に公共交通としての運行を目標としています。

2026年2月には福島県南相馬市の福島試験線が完成して走行試験が始まり、同年4月までに試乗会へ合計390人が参加しました。構想や小型試作機だけの段階ではなく、実際の社会実装を見据えた設備で検証を進めています。

直線はロープ、カーブではレールを走る「曲がれるロープウェイ」

Zipparが一般的なロープウェイと大きく違うのが、車両そのものにバッテリーとモーターを搭載していることです。

一般的なロープウェイはロープによって搬器を引っ張るため、自由なカーブや複雑な分岐をつくることが難しくなります。

一方のZipparは自走式です。

直線部分ではロープ上を走り、カーブ部分ではレールへ移って走行する構造を採用。ロープと車両が独立しているため、道路の形に合わせて曲がった路線を設定できます。

つまり、山と山を一直線に結ぶ観光ロープウェイではなく、道路に沿って街の中を移動する交通機関として設計されているのです。

住宅地から駅、商業施設、公共施設などを結ぶためにはカーブが欠かせません。「曲がれる」という特徴は、Zipparを都市交通として成立させるための重要な技術になっています。

自動運転でバスの運転士不足に左右されにくい交通へ

もう1つ大きいのが自動運転です。

Zipparでは運転士が車両を操作する方式ではなく、自動運転を前提としています。

そのため、バスのように「車両はあっても運転士が足りない」という問題の影響を受けにくい交通システムを目指せます。

さらに需要に合わせて車両数を増減できる仕組みも想定されています。

  • 通勤・通学時間帯は車両を増やす
  • 利用者が少ない時間帯は減らす
  • 路線ごとの需要に合わせて調整する

大量の人を1編成で運ぶ鉄道とは異なり、小型の車両を高頻度で動かす考え方です。Zip Infrastructureでは12人乗りのテストモデル車両の走行実績も公表しています。

人口減少や運転士不足が進む地域で公共交通を維持するうえで、「人が運転しなくても動かせる」という点はZipparの中心的な特徴になります。

道路上空を交通空間として利用する「省スペース」の発想

Zipparが走る場所として想定されているのが道路上空です。

新しい鉄道を建設する場合、大規模な線路用地や駅施設が必要になります。地下鉄であれば、さらに大規模な地下工事が必要です。

Zipparは軽量な車両と支柱、ロープを組み合わせ、これまで交通には使われていなかった道路上空を活用します。

大規模な軌道を地上へ敷設する方式とは違い、既存の道路や街並みを利用しながら新しい移動ルートをつくることを狙っています。

Zip Infrastructureが掲げる「渋滞のない、どこでも駅徒歩5分圏内となる世界」という構想も、こうした道路上空の活用を前提としています。

須知高匡CEOは宇宙エレベーター研究からZippar開発へ

Zip Infrastructureを2018年に設立したのが須知高匡さんです。

須知さんは慶應義塾大学理工学部機械工学科出身。幼いころから乗り物と宇宙が好きで、大学では宇宙エレベーターについて研究していました。

そこで巨大なインフラを実現するためには、技術だけではなく資金や事業として成立させる仕組みも必要だと考えるようになります。

2018年7月にZip Infrastructureを設立し、Zipparの開発を開始しました。

現在の目標も単にロープウェイを販売することではありません。Zipparをエレベーターのように多くの場所へ普及させ、都市の渋滞や移動問題を解決する交通インフラへ育てることを目指しています。

福島試験線完成から実際の街での導入検討へ

開発の大きな転機となったのが福島県南相馬市への研究開発拠点の移転です。

2024年に本社と研究開発拠点を神奈川県秦野市から南相馬市へ移し、その後、福島試験線の建設を進めました。

2026年2月には試験線が完成。走行試験が始まり、実車を使った検証が進んでいます。

実際の都市での導入を検討する動きも出ています。

東京都稲城市は2026年1月、Zip Infrastructureと新交通システムに関する連携協定を締結しました。

検討対象には、

  • 京王よみうりランド駅
  • 稲城駅
  • (仮称)根方谷戸公園
  • TOKYO GIANTSTOWNを含む新たな基盤整備地区

などを結ぶ交通システムが含まれています。

現時点でZipparの導入が決定したという段階ではありませんが、自治体が具体的なエリアを対象に新交通システムを検討する段階まで進んでいます。

2026年には国土交通白書にも次世代交通として掲載

Zipparは2026年7月に公表された「令和8年版国土交通白書」にも掲載されました。

白書では新たな移動手段の開発例として自走式の都市型ロープウェイが取り上げられ、Zipparの写真を掲載。さらに須知高匡CEOへのインタビューも掲載されています。

スタートアップが開発する実験的な乗り物という段階から、将来の交通インフラを考えるうえでの新しい選択肢の1つとして扱われる段階へ進んでいることが分かります。

ただし、公共交通としての運行目標は2033年です。

福島試験線での走行試験を重ねながら、まず2028年の私有地内運行を目指し、その後さらに公共交通へ進むという長期的なロードマップになっています。

まとめ

Zip Infrastructureの「Zippar」は、ロープウェイと自走車両を組み合わせ、都市の道路上空を走ることを目指した新しい交通システムです。

最大のポイントは、

  • 約15億円/km、建設期間約1年を想定
  • 直線はロープ、カーブはレール
  • バッテリーとモーターを搭載した自走式
  • 自動運転で運転士不足に対応
  • 道路上空を利用して省スペース化
  • 2028年に私有地内運行を目標
  • 2033年に公共交通としての運行を目標

という点です。

特に重要なのは、「空を走る乗り物」という珍しさだけではありません。

バスの運転士不足、道路渋滞、新しい鉄道を造る際の建設費や用地といった、現在の地域交通が抱える複数の問題に対し、別の方法で解決を目指していることにZipparの特徴があります。

福島試験線で走っている車両が、実際の街を走る公共交通へ変わっていくのか。今後の社会実装が注目されます。

参考リンク


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