浅草・茶寮一松が3代にわたり受け継いできた料亭と建物の記憶
東京・浅草の雷門近くに、昭和27年(1952年)の創業から3代にわたって受け継がれてきた料亭「茶寮一松」があります。
2026年10月1日放送のテレビ東京「東京まち物語」は、東京に残る歴史ある建物や老舗を訪ね、そこで暮らし、働いてきた人の言葉から街の記憶をたどる新番組です。茶寮一松には、会席料理や天然ふぐだけでなく、1960年に建てられた数寄屋意匠の建物、浅草芸者のお座敷文化、そして若手料理人へ技を伝える取り組みまで残っています。
初代の名前から生まれた「一松」という店名。戦後の浅草で始まった店は、料理と建物の両方を受け継ぎながら、75年近い歩みを重ねてきました。
この記事でわかること
- 茶寮一松が昭和27年から3代続いてきた歴史
- 店舗が登録有形文化財になっている理由
- 天然ふぐが一松を代表する料理となった背景
- 若手料理人へふぐ調理の技術を継承する仕組み
茶寮一松は浅草・雷門で3代続くふぐ・会席料理の料亭

出典:茶寮一松公式サイト
茶寮一松は、東京都台東区雷門に店を構える日本料理店です。
創業は昭和27年。店名の「一松」は初代・松本清一の名前から付けられました。また、創業当初から来店客に抹茶を出していたことから、店名に「茶寮」を冠したとされています。現在まで3代にわたり浅草で営業を続けています。
料理の中心となるのは、季節の食材を取り入れた会席料理です。
店内には個室の座敷があり、会食や宴会だけでなく、婚礼、法事、一棟貸しなどにも対応しています。浅草芸者によるお座敷芸も受け継がれており、料理だけではなく、浅草の料亭文化そのものを体験できる場所になっています。
茶寮一松を知るうえで重要なのは、単に長く営業している老舗というだけではないことです。
料理、建物、お座敷、そこで働く料理人。それぞれを次の世代へ残してきたことが、一松の歴史を形作っています。
昭和27年創業から75年近く浅草で受け継がれてきた歩み
茶寮一松が創業した昭和27年は1952年です。
戦後の浅草で初代・松本清一が店を始め、2026年まで約74年。公式サイトでは現在、「創業75余年」「三代にわたり歩みを重ねてきた」と紹介されています。
浅草といえば雷門や浅草寺、仲見世など、多くの観光客が行き交う街です。
一松はその雷門の近くにありながら、門をくぐると庭と日本家屋が広がる、街中とは異なる空間を残しています。
店名にも初代の記憶が残っています。
初代・松本清一の「一」と「松」を取って「一松」。さらに創業当初から抹茶を提供していた文化が「茶寮一松」という名前につながりました。
料理だけではなく、店名や接客のあり方まで、創業時からの物語が現在につながっている料亭です。
店舗の日本家屋は登録有形文化財
茶寮一松の大きな特徴が、食事をする建物そのものです。
現在の「茶寮一松店舗及び住居」は1960年に建てられた木造2階建てで、2021年10月14日に国の登録有形文化財となりました。
建物は浅草の雷門通りから一本南に入った場所にあります。
南側の前庭を囲むようにL字形に建物が配置され、1階には座敷、2階には3間続きの大広間があります。大広間には床の間だけでなく舞台も設けられており、宴席が盛んだった時代の料亭文化を現在へ伝えています。
室内には銘木や彫刻も使われ、数寄屋意匠を取り入れた料亭建築として評価されています。
さらに、建物だけではありません。
敷地の表門と塀も「茶寮一松表門及び塀」として同じ2021年10月14日に登録有形文化財となっています。門は木造の瓦葺きで、塀とともに昔ながらの料亭らしい景観を残している点が評価されました。
つまり茶寮一松では、料理を味わう場所そのものが浅草の歴史の一部になっています。
天然ふぐを店の代名詞として受け継いできた歴史
茶寮一松を代表する料理の一つが、天然ふぐです。
ふぐ料理を始めたのも初代でした。
昭和の時代に「食を通じて街を活気づけたい」という思いからふぐ料理を始め、その味が現在まで受け継がれています。店では天然ふぐにこだわり、ふぐ刺し、唐揚げ、ふぐ鍋などを提供しています。
なかでも、ふぐ鍋の最後に作る雑炊は、一松が大切にしている一品です。
約20分かけて炊き上げ、独自の製法でふんわりとした口当たりに仕上げています。雑炊を楽しみに店を訪れる客もいると紹介されています。
天然ふぐは通年ではなく、12月下旬から3月中旬ごろまでの寒い時期に提供されています。
また、一松の「一」を筆文字で表した意匠には、ふぐを表す意味も込められています。
長年ふぐを出してきた店だからこそ、料理そのものだけではなく、店の象徴としても受け継がれてきました。
入社1年目からふぐ調理を学べる若手料理人の育成
一松で受け継がれているのは、完成した料理だけではありません。
その料理を作る技術も若い世代へ伝えています。
茶寮一松では冬の時期、週に2〜3回ほどふぐ調理の実習を行っています。社員は入社1年目から、ふぐ調理に必要な免許取得へ向けた指導を受けることができます。
練習用のふぐの購入費や試験費用も会社が支援。
ベテランのふぐ調理師が、包丁を入れる位置や、食べられる部分と毒のある部分を正しく分ける技術などを実践形式で指導します。
一般的な日本料理店では、ふぐの実習を任されるまで5年ほどかかる場合もある中、一松では早ければ入社1年目から実習へ進みます。
実習を50回以上重ね、早い人では入社から3年ほどで免許取得に至るとされています。
この取り組みには、若い料理人が減る中で日本料理文化を残していきたいという考えがあります。
運営会社の宮代商事有限会社は、こうしたふぐ調理士試験の支援や若手料理人の育成が評価され、2023年度の「東京都中小企業技能人材育成大賞知事賞」でサービス部門の奨励賞を受賞しました。
料亭の建物と日本料理文化を次の世代へ残す現在
茶寮一松には、いくつもの「継承」が重なっています。
昭和27年から3代続く店、1960年に建てられた日本家屋、天然ふぐの料理、お座敷文化、そして若手料理人への技術継承です。
古い建物だけを保存しているわけではありません。
その中で実際に料理を作り、客を迎え、新しい料理人へ技術を伝えることで、建物と文化の両方が現在も使われ続けています。
浅草芸者によるお座敷芸もその一つです。
江戸から続く芸妓のおもてなしを現在も宴席で楽しむことができ、国内だけでなく海外からの客も迎えています。
文化財の建物を「見る場所」にするのではなく、今も食事をし、人が集まり、料理人が働く場所として使い続けている。
そこに、茶寮一松が浅草で長く残ってきた特徴があります。
茶寮一松の場所・営業時間・予約方法
茶寮一松は浅草・雷門から近く、東京メトロ銀座線の田原町駅から徒歩5分、都営浅草線の浅草駅から徒歩8分です。予約は電話で受け付けています。
- 店名:茶寮一松
- 住所:東京都台東区雷門1-15-1
- アクセス:東京メトロ銀座線「田原町駅」から徒歩5分
- アクセス:都営浅草線「浅草駅」から徒歩8分
- 営業時間:11:30〜22:30
- ランチ:11:30〜15:00
- ディナー:17:00〜22:30
- 定休日:水曜日・年末年始
- 予約:電話受付
- 電話:03-3841-0333
会席料理は、季節の会席のほか平日限定のミニ会席なども用意されています。食事の提供には2時間半〜3時間ほどかかるため、公式サイトでは余裕を持った来店を案内しています。
まとめ
茶寮一松は、昭和27年に浅草で創業し、3代にわたって受け継がれてきた料亭です。
初代・松本清一の名前から「一松」と名付けられ、天然ふぐや季節の会席料理、浅草芸者によるお座敷文化を現在まで残してきました。
1960年に建てられた店舗兼住居と表門・塀は、2021年に国の登録有形文化財となりました。
一方で、文化を残すために過去の形を保存するだけではありません。入社1年目からふぐ調理を学べる環境を整え、若い料理人へ日本料理の技術を伝え続けています。
料理、建物、人。
その3つを現役の料亭として受け継いできたことが、75年近く浅草で続く茶寮一松の歩みです。
参考リンク
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