多田美波は皇居や帝国ホテルに光の彫刻を残した芸術家!2026年に大規模個展が開催
多田美波(ただ・みなみ)さんは、皇居・新宮殿や帝国ホテル、リーガロイヤルホテルなどに、光の反射や屈折を利用した独創的な造形作品を残した日本の彫刻家です。
1924年に生まれ、2014年に89歳で亡くなるまで、約200点の彫刻と約500点に及ぶ建築関連作品を制作しました。
2026年10月11日放送のNHK Eテレ『日曜美術館』では、「光、凛とゆれる 彫刻家・多田美波」と題し、アルミニウムやアクリル、ステンレスなどの工業素材を芸術へと発展させた多田さんの創作人生に迫ります。
多田さんの大きな転機となったのは、1968年に完成した皇居・新宮殿の照明造形です。彫刻を美術館の中だけにとどめず、建築空間そのものを芸術へと変えていきました。
現在、東京都現代美術館では、東京では35年ぶりとなる大規模個展「多田美波―光、凛と ゆれる」を2026年12月6日まで開催中です。
この記事でわかること
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多田美波さんの経歴と絵画から彫刻へ転向したきっかけ
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皇居・新宮殿、帝国ホテル、リーガロイヤルホテルに残した代表作
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金属やアクリルを使って光を彫刻に変えた独自の技術
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東京都現代美術館の個展の会期・料金・アクセスと見どころ
多田美波の代表作は皇居・新宮殿の「光造形」

公式作品画像:多田美波研究所|光造形・建築作品の紹介
多田美波さんの作品で特に重要なのが、1968年に完成した皇居・新宮殿の「光造形」です。
皇居・新宮殿は、国の儀式や外国の賓客を迎える行事などに使用される建物です。
多田さんは、その「春秋の間」をはじめとする空間で、照明器具やペンダントランプ、庭園灯などの造形を手がけました。
この仕事の特徴は、単に室内を明るくする照明を作ったのではないことです。
ガラスや金属を組み合わせ、光が反射したり透過したりすることで、照明そのものを立体的な芸術作品へと変えていきました。
多田さんは、こうした表現を「光造形」と呼びました。
作品だけを独立して鑑賞するのではなく、建物の広さや天井の高さ、周囲の壁、そこに集まる人々の動きまで含めて1つの空間を作り上げます。
皇居・新宮殿の仕事は、彫刻家として活動していた多田さんが、建築空間と一体になった大規模な造形へ進む重要な転機となりました。
1924年に台湾で誕生し、朝鮮で絵画を学んだ少女時代
多田美波さんは1924年7月11日、当時日本の統治下にあった台湾の高雄で生まれました。
父親は鉱山関係の仕事をしており、多田さんが4歳のときに転勤に伴って朝鮮へ移住します。
京城(現在のソウル)で育ち、京城第一高等女学校に進学しました。
美術との本格的な出会いは、この女学校時代です。
担任教師が女子美術専門学校の出身者だったことから、個人的に油彩画の指導を受けるようになりました。
多田さんは絵を描くことに取り組み、1940年には朝鮮美術展覧会へ作品を出品しています。
1941年、女子美術専門学校の西洋画科に進学しました。
同校では画家の伊原宇三郎さんからも指導を受け、1944年9月に繰り上げ卒業しています。
しかし、日本が戦争へと進んでいた時代であり、戦後は栄養失調による療養も経験しました。
本格的な美術活動を再び進められるようになったのは、1950年代半ばのことでした。
1957年の「炭鉱」が絵画から彫刻へ進む転機となった
多田さんは当初、油彩画家として活動していました。
1956年には二科展へ絵画作品を出品し、翌1957年には読売アンデパンダン展にも参加しています。
その活動が大きく変わったのが、1957年に東京の炭労会館のために制作したレリーフ《炭鉱》でした。
レリーフとは、平らな面から一部を盛り上げたり彫り込んだりして表現する立体作品です。
多田さんはこの仕事をきっかけに、平面の絵画から立体的な造形へと活動を広げていきました。
1958年には彫刻作品《OPUS―0》を発表。
その後も立体作品の制作を続け、金属や樹脂など、新しい材料へ関心を向けるようになります。
1962年には、自ら「多田美波研究所」を設立しました。
この研究所の誕生によって、多田さんの仕事は個人による制作から、さまざまな技術を持つ人々が協力する大規模なものづくりへ発展していきます。
アルミとアクリルが生んだ「周波数」シリーズの不思議な光
多田さんを代表する彫刻作品の1つが、1960年代に制作された「周波数」シリーズです。
1963年には、アルミニウムを使用した《周波数37303011MC》を発表しました。
その後、アクリル樹脂と金属を組み合わせた作品へと表現を広げます。
なかでも1965年の《周波数37306505MC》は、多田さんの創作の特徴をよく示す作品です。
この作品には、鏡のように光を反射する6つの半球状の造形が使われています。
表面は完全に平らではなく、わずかな凹凸があります。
そのため、作品の前に立った人や周囲の風景が、曲がったり伸びたりして映り込みます。
鑑賞者が移動すると、映り込む風景も変化します。
つまり、作品そのものの形は変わらなくても、見る位置によって表情が変わるのです。
多田さんは、こうした素材の性質を積極的に芸術へ取り入れました。
《周波数37306505MC》は、1965年の第8回日本国際美術展で優秀賞を受賞しています。
絵画から始まった多田さんの表現は、光と周囲の空間まで作品に取り込む独自の彫刻へと進化しました。
帝国ホテルの「黎明」とリーガロイヤルホテルの「瑞雲」
皇居・新宮殿の造形を手がけたあとも、多田さんは日本各地の建築空間で作品を制作しました。
代表的な仕事が、東京の帝国ホテルと大阪のリーガロイヤルホテルです。
帝国ホテル東京《黎明》
1970年、多田さんは帝国ホテル東京のために光壁《黎明(れいめい)》を制作しました。
ガラスや金属などを組み合わせた作品で、建築の壁面に光を取り込む造形です。
壁を単なる建物の一部として扱うのではなく、光によって空間の表情を変える存在へと発展させています。
帝国ホテルでは、その後も天井の光造形やシャンデリアなどを手がけました。
リーガロイヤルホテル大阪《瑞雲》
1973年には、大阪のリーガロイヤルホテルのために光造形《瑞雲(ずいうん)》を制作しました。
クリスタルガラスとボールチェーンを使用した天井造形です。
多数の細かな部材が光を受けて輝き、建築空間の中に独特のきらめきを生み出します。
ホテルや公共施設では、美術館と異なり、人々が作品を鑑賞するためだけに訪れるわけではありません。
多田さんは日常的に人々が行き交う空間へ芸術を取り込み、建築と彫刻が共存する表現を広げていきました。
多田美波研究所は職人と技術者が協力する制作集団だった
多田さんの大規模な作品を支えたのが、1962年に設立した多田美波研究所です。
通常の彫刻制作とは異なり、建築空間に設置する作品では、大きな金属部品やガラス、照明設備などを扱います。
そのため、造形の発想だけでなく、材料を正確に加工する技術も必要です。
多田さんは研究所のスタッフや企業の技術者、職人たちと協力し、新しい素材の加工方法や表現を追求しました。
特に、光を反射する金属の表面加工や、透明な樹脂の形状を生かした造形は、多田さんの作品を特徴づけています。
この研究所は、多田さんが亡くなったあとも活動を続けています。
現在の代表は岩本八千代さんです。
彫刻や光造形、レリーフなどの設計・制作を手がけ、多田さんが築いた建築と芸術を結びつける技術を受け継いでいます。
約200点の彫刻と約500点の建築作品を制作
多田美波さんは生涯で約200点の彫刻作品と、約500点に及ぶ建築関連作品を制作しました。
その活動範囲は、美術館やホテルだけにとどまりません。
主な作品には次のようなものがあります。
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1968年:皇居・新宮殿《光造形》
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1970年:帝国ホテル東京《黎明》
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1973年:リーガロイヤルホテル大阪《瑞雲》
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1974年:新宿住友ビルの天井・床空間造形
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1977年:在アメリカ日本国大使館の光造形
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1978年:在ブラジル日本国大使館《Iguazu》
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1991年:東京都議会議事堂《澪》
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1993年:東京都江戸東京博物館《翔彩》
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1997年:長野オリンピック関連施設エムウェーブの《Velocity》
1988年には紫綬褒章を受章しています。
また、1979年には第1回ヘンリー・ムーア大賞展で《極》が大賞を受賞し、1980年には毎日芸術賞を受賞しました。
多田さんの作品は、現在も都市のさまざまな場所で建築や風景の一部となっています。
2026年の東京都現代美術館で35年ぶりの大規模個展
2026年8月29日から12月6日まで、東京都現代美術館で「多田美波―光、凛と ゆれる」が開催されています。
東京では1991年以来、35年ぶりとなる大規模な個展です。
展覧会では、多田さんが制作した初期の絵画から、彫刻、光造形、建築関連作品まで、幅広い活動を紹介しています。
展覧会の主な見どころ
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初期に制作した油彩画
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金属の反射を生かした「周波数」シリーズ
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アクリルやガラスによる透明な造形
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光を利用した彫刻・照明作品
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皇居やホテルの建築プロジェクトに関する資料
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作品制作時の写真・スケッチ・素材見本
展示される彫刻や照明作品は約70点です。
建築作品そのものをすべて会場へ移設するわけではなく、実際の建築で使われた部材や写真なども通して、多田さんの仕事を紹介しています。
また、ボールチェーンを利用した照明作品「チェーンデリア」も展示のために復元されています。
さまざまな角度から作品を見ることで、光の変化を体験できる構成です。
多田美波展の料金・会期・アクセス
展覧会の基本情報
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展覧会名:多田美波―光、凛と ゆれる
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会場:東京都現代美術館 企画展示室B2F
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住所:東京都江東区三好4-1-1
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会期:2026年8月29日(土)〜12月6日(日)
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開館時間:10:00〜18:00
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最終入場:17:30
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11月の毎週金曜日:20:00まで開館
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休館日:月曜日(祝日等の例外あり)
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問い合わせ:03-5245-4111
通常観覧料金
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一般:1,600円
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大学生・専門学校生・65歳以上:1,100円
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中学生・高校生:640円
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小学生以下:無料
2026年10月10日〜12日は学生無料
10月10日(土)から12日(月・祝)まで、中学生・高校生・専門学校生・大学生は無料で観覧できます。
学生証を美術館のチケットカウンターで提示する必要があります。
また、10月12日(月・祝)は開館し、翌10月13日(火)が休館となります。
アクセス
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東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2出口から徒歩約10分
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都営大江戸線「清澄白河駅」A3出口から徒歩約13分
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東京メトロ東西線「木場駅」3番出口から徒歩約15分
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都営新宿線「菊川駅」A4出口から徒歩約15分
チケットは美術館の窓口のほか、東京都現代美術館の公式オンラインチケットでも購入できます。
日時指定制ではなく、会期中に1回入場できるチケットです。
まとめ
多田美波さんは、アルミニウムやアクリル、ガラスなどの新しい素材を使い、光の反射や透過を生かした独自の彫刻を生み出した芸術家です。
1957年のレリーフ《炭鉱》をきっかけに絵画から立体造形へ進み、1962年には多田美波研究所を設立しました。
1968年には皇居・新宮殿の光造形を手がけ、その後も帝国ホテルやリーガロイヤルホテルなど、さまざまな建築空間へ活動を広げています。
生涯に制作した作品は、彫刻約200点、建築関連作品約500点に及びます。
東京都現代美術館では2026年12月6日まで、35年ぶりの大規模個展を開催中です。
多田さんが生み出したのは、ただ眺めるだけの彫刻ではなく、光や人の動きによって見え方が変わる芸術でした。
参考リンク
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