投資しないと取り残される?日本と韓国で広がる「お金の焦り」と資産形成の現実
2026年10月20日放送のNHK総合『クローズアップ現代』では、物価高や老後への不安を背景に、生活を切り詰めてまで投資に向かう人々の姿を取り上げます。
手取り月20万円の半分以上を投資に回し、資産を約200万円増やした会社員。大学進学のためのお金を投資に使い、19歳で約1000万円の資産を築いた若者。そして韓国では、借りたお金で株式を購入する「信用取引」によって、大切な資産の多くを失った人もいます。
投資によって資産を増やす人がいる一方で、損失を抱える人もいる現実。「働くだけでは豊かになれない」という思いが広がるなか、投資は将来への備えなのか、それとも新たな不安を生み出しているのか。日本と韓国の現場を通して、投資社会が抱える課題を考える内容です。
※放送後詳しい内容が分かり次第追記します。
この記事でわかること
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手取り20万円の半分以上を投資に回す会社員と約200万円の資産増加
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19歳で資産約1000万円を築いた若者と教育資金を投資に使うリスク
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韓国で広がる信用取引と借金を伴う株式投資の危険性
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新NISAの基本、投資への焦りが生まれる背景、専門家の視点
手取り20万円の半分以上を投資に回す会社員
今回の中心的な取材対象の一人が、手取り月20万円の会社員です。
この会社員は、食費などの日常生活に必要なお金を切り詰めながら、収入の半分以上を投資へ回しています。その結果、資産を約200万円増やしたという事例が紹介されます。
手取り20万円の半分は10万円です。半分以上を投資に使うということは、少なくとも毎月10万円程度を資産形成に振り向けている計算になります。
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月の手取り収入:約20万円
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投資に回す金額:月10万円超
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残る生活費:月10万円未満
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資産の増加額:約200万円
住居費、食費、光熱費、通信費、交通費などを考えると、月10万円未満で生活するには支出を相当に抑える必要があります。
注目したいのは、資産が約200万円増えたという数字だけではありません。そのために、毎日の暮らしをどこまで削っているのかという点です。
また、資産の増加額と投資による利益は同じではありません。毎月積み立てた元本も資産増加に含まれるため、実際の運用益を判断するには投資期間、入金総額、現在の評価額を区別する必要があります。
投資に使えるお金を増やすために生活費を減らす行動は、資産形成を進める一つの方法です。しかし、食事や健康、必要な生活支出まで削ることには別のリスクも伴います。
今回の取材事例は、資産を増やすことと現在の生活を守ることのバランスを考えるきっかけになります。
19歳で資産約1000万円を築いた若者
もう一つの注目事例が、19歳にして約1000万円の資産を築いた若者です。
この若者は、大学進学のために用意されていた費用を投資に使い、資産形成を進めてきました。
19歳で1000万円という金額は、将来の選択肢を広げる大きな資産です。一方で、その資金が本来は大学進学のために使う予定だったお金という点が重要になります。
教育資金と投資資金には、使う時期について大きな違いがあります。
大学の入学金や授業料は、決まった時期に支払わなければなりません。しかし、株式や投資信託の価格は、その時期に上昇しているとは限りません。
たとえば大学進学に必要な100万円を株式投資に使い、支払い直前に価格が30%下落した場合、資産の評価額は70万円になります。これは値下がりの仕組みを示す仮の計算ですが、必要な時期が決まっている資金を投資に使う危険性がわかります。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の教育資料でも、生活費や緊急時の備えと、長期間使う予定のない余裕資金は区別されています。
若いうちから金融知識を身につけ、将来のために資産形成を始めることには意味があります。ただし、進学など人生の重要な選択に必要なお金まで、価格変動の大きな金融商品に集中させることは慎重に考える必要があります。
今回登場する19歳の若者については、約1000万円という資産額に加え、教育資金を投資へ振り向けたことが大きな特徴です。
韓国で過熱する株式投資と「借金して投資する」人々
投資熱の高まりは日本だけの現象ではありません。今回の番組では、韓国の株式投資事情も大きく取り上げられます。
韓国では、借り入れた資金を使って株式に投資する動きが注目されています。韓国語では、借金を意味する言葉と投資を組み合わせた「빚투(ビットゥ)」という表現も使われています。
日本でいう「借金投資」に当たる言葉です。
韓国の金融委員会が2025年11月17日に公表した資料では、信用取引融資の残高が増加していたことが示されています。
同資料によると、2025年11月12日時点の信用取引融資残高は約26兆ウォンでした。金融委員会は、借入金を使った投資について、投資家自身が耐えられる範囲で厳格なリスク管理を行うことが重要だと説明しています。
借りた資金で株式を買えば、自己資金だけで投資する場合よりも大きな取引ができます。値上がりすれば大きな利益を得られる一方、相場が下落した場合は損失も拡大します。
番組では、こうした信用取引によって資産の多くを失った人も紹介されます。
単に株価が下落したという話ではなく、借金を伴う投資が生活や資産にどのような影響を及ぼすのかが重要なテーマとなっています。
信用取引とは?自己資金以上の損失が生じる仕組み
信用取引とは、証券会社に保証金を預け、資金や株式を借りて売買する取引です。
自己資金を超える金額の株式を取引できることが特徴ですが、通常の現物株式投資とはリスクの大きさが異なります。
たとえば、自己資金100万円を保証金として、300万円分の株式を購入した場合を考えます。
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株式を300万円で購入:取引開始時
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株価が20%上昇:評価額360万円、差額60万円の利益
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株価が20%下落:評価額240万円、差額60万円の損失
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株価が40%下落:評価額180万円、差額120万円の損失
これは手数料、金利、追加保証金などを考慮しない単純な計算例です。
300万円分の株式を買っているため、株価が40%下がると損失は120万円となり、最初に用意した100万円を超えてしまいます。
信用取引では、一定の条件で追加の保証金が必要になる「追証(おいしょう)」が発生することもあります。
追加保証金を用意できない場合には、保有する建玉が強制的に決済されることがあり、その後も損失の支払いが必要になる場合があります。
日本証券業協会も、信用取引には預けた保証金を超える損失が生じる危険性があると説明しています。
韓国の事例を理解するうえでは、通常の株式投資で資産の評価額が下がることと、借金を伴う取引によって返済義務まで抱えることの違いが重要です。
新NISAで投資が身近になった日本の現状
日本では2024年1月から新しいNISA制度が始まり、長期的な資産形成に利用しやすい環境が整えられました。
NISAは、対象となる金融商品から得られる売却益や配当金などが非課税となる制度です。
2026年10月時点の成人向けNISAには、次の2つの投資枠があります。
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つみたて投資枠:年間120万円
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成長投資枠:年間240万円
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2つを合わせた年間投資上限:360万円
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非課税保有限度額:合計1800万円
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成長投資枠の非課税保有限度額:1200万円
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非課税保有期間:無期限
つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託を対象としています。
一方、成長投資枠では一定の条件を満たす上場株式や投資信託なども購入できます。
ただし、NISAには重要な注意点があります。
NISAは利益に対する税金を優遇する制度であって、投資したお金や利益を保証する制度ではありません。
株式や投資信託の価格が下がれば、NISA口座であっても元本割れが発生します。
また、年間360万円という数字は、制度上投資できる上限額です。毎年360万円を投資する必要があるわけではありません。
金融庁は資産形成の基本として、長期・積立・分散投資を紹介していますが、それでも損失を完全に防げるわけではありません。
投資額を決める際には、制度の上限よりも自分の家計や将来の支出を優先することが重要です。
投資しないと取り残される?物価高と老後不安が生む焦り
今回の『クローズアップ現代』で取り上げる大きな問題が、投資そのものではなく、投資へ向かう人々の「焦り」です。
物価が上昇すると、同じ金額の給料や貯金で購入できる商品やサービスの量は減少します。
たとえば、これまで1000円で購入できた商品が1100円になれば、必要なお金は10%増えます。給料が同じ割合で上昇しなければ、家計の負担は大きくなります。
こうした環境では、働いて給料を受け取り、貯金するだけでは将来に十分な資産を残せないと感じる人がいても不思議ではありません。
さらに、インターネット上では、若いうちから多額の資産を築いた人や、投資によって大きな利益を得た人の情報に触れる機会があります。
しかし、資産形成の結果は、元手となる資金、収入、投資期間、購入した金融商品、相場環境によって大きく変わります。
特に区別したいのが、次の3つです。
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貯蓄額:収入から支出を差し引いて蓄えたお金
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投資元本:株式や投資信託などの購入に使ったお金
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運用損益:投資によって増減した金額
1000万円の金融資産を持っている人が、必ずしも投資だけで1000万円を稼いだわけではありません。
収入から長年積み立てた結果なのか、資産価格の上昇によるものなのかによって、その意味は大きく異なります。
投資に成功した人の資産額だけを目標にすると、自分の家計に合わない金額を投資したり、本来必要な生活費まで削ったりする危険があります。
投資に使うお金はどう決める?生活を守るための3つの考え方
投資への焦りを感じたとき、まず大切なのは、資産を増やすことだけを目標にしないことです。
金融経済教育推進機構や金融庁の資料では、家計管理、生活設計、金融商品の特徴に応じた資産形成が基本として説明されています。
1. 日々の生活費を確保する
食費、住居費、光熱費、医療費など、毎日の生活に必要なお金は投資資金と分けて考えます。
収入が減ったときや急な支出に対応できる預貯金も重要です。緊急時に必要な金額は、家族構成、雇用形態、毎月の生活費などによって異なります。
2. 使う時期が決まっているお金を分ける
大学進学費用、近い将来の住宅購入資金、税金の支払いなどは、使う時期を考えて管理する必要があります。
特に数年以内に必要となるお金は、価格変動によって不足が生じた場合の影響が大きくなります。
3. 余裕資金の範囲で資産形成を考える
生活費と将来必要になる資金を確保したうえで、当面使う予定のないお金をどのように管理するか考えます。
投資を選ぶ場合には、値下がりしたときにどこまで損失を受け入れられるのか、長期間保有できるのかも確認が必要です。
投資額を増やすことだけでなく、支出の見直し、収入を増やす取り組み、預貯金の確保も家計を安定させる手段になります。
投資は資産形成の選択肢の一つですが、すべての人が同じ金額、同じ方法で行う必要はありません。
「働くだけでは豊かになれない」が意味する社会の変化
今回のテーマで特に考えたいのが、働いて得る収入と、資産から得られる利益の関係です。
私たちが生活するためのお金には、大きく分けて労働によって得る収入と、株式・債券・預貯金などの資産から生じる収益があります。
働くことで得られる給料は、日常生活を支える重要な基盤です。一方、株式などへの投資には資産を増やす機会がありますが、価格下落によって損失が生じることもあります。
ここで社会的な問題となるのが、投資に回せる資金の違いです。
十分な収入や貯蓄がある人は、当面使わないお金を長期間投資に回しやすくなります。
一方、収入の大部分が生活費に必要な人は、同じように投資へ資金を振り向けることが難しくなります。
資産形成の機会が広がっても、その機会を活用できる条件が全員同じとは限りません。
投資をする人としない人だけでなく、投資できる余裕がある人と、生活を守るだけで精いっぱいの人との違いも考える必要があります。
今回の番組は、個人の投資成果だけでは捉えきれない、働くことと資産形成の関係を考える内容となっています。
出演する専門家・島澤諭教授と河田皓史エコノミスト
今回のスタジオには、経済政策を研究する大学教授とエコノミストが出演します。
島澤諭(しまさわ・まなぶ)教授
島澤諭さんは、関東学院大学経済学部の教授で、経済学部長を務めています。
東京大学経済学部を卒業後、経済企画庁に入庁。その後、大学や研究機関で経済政策に関する研究に携わってきました。
主な研究分野には、次のようなテーマがあります。
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経済政策
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日本経済
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世代間格差
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財政・社会保障制度の持続可能性
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世代会計
特に、世代間の経済的な負担や社会保障制度の持続可能性は、今回の老後不安や将来の資産形成とも関係の深い研究分野です。
河田皓史(かわた・ひろし)エコノミスト
河田皓史さんは、東京大学経済学部を卒業し、米国デューク大学大学院で経済学修士課程を修了したエコノミストです。
日本銀行で勤務した経歴があり、2023年11月にみずほリサーチ&テクノロジーズへ入社。2026年4月の組織統合後は、みずほ銀行内の「みずほ総合研究所」に所属しています。
日本経済や雇用などに関する分析・執筆を行っています。
番組では、こうした専門家を交え、物価高や老後への不安を背景とした投資熱と、社会への影響を考えます。
キャスターはNHKの星麻琴アナウンサー、語りは小松未可子さんが担当します。
まとめ
2026年10月20日の『クローズアップ現代』は、日本と韓国で広がる投資熱を通して、お金に対する不安と焦りを考える特集です。
手取り20万円の半分以上を投資に回す会社員、教育資金を使って約1000万円の資産を築いた19歳の若者、借金を伴う信用取引によって資産の多くを失った韓国の投資家。それぞれの事例には、資産形成の可能性と危険性の両方が表れています。
新NISAによって投資が身近になる一方で、投資をしなければ将来が不安だと感じる人もいます。
大切なのは、周囲の資産額と比較して無理に投資額を増やすことではなく、自分の生活と将来に必要なお金を見極めることです。
「働くだけでは豊かになれない」という焦りが強まる社会で、資産形成と日々の暮らしをどう両立させるのか。今回の特集は、投資をしている人にも、これから始めようと考える人にも身近な問題を投げかけます。
参考リンク
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