ナベルの卵検査はなぜ音と光を使う?
スーパーの卵には、見ただけでは分からない小さなひびや内部の異常がないかを調べる工程があります。京都市の株式会社ナベルは、卵を軽く叩いた音からひびを判定する装置と、光を透過させて内部の異常を調べる装置を開発しています。2026年10月31日(土)放送予定のテレビ東京『知られざるガリバー』では、同社の卵選別・包装技術を紹介。音は殻、光は中身という役割の違いから、毎時最大24万個を扱う仕組みまで、公式資料をもとに整理します。
音でひびを見つけるのは、割れた殻の響き方が違うから
ナベルの『ひび卵検査装置』は、卵を壊すほど強く叩くのではなく、特殊なハンマーで優しく打診し、返ってくる音を分析します。殻に細かなひびがあると、健全な殻とは振動や響き方が変わります。その差を利用することで、目視や画像だけでは見落としやすいひびの発見につなげています。
公式製品情報では、卵の全周を16個の特殊ハンマーで打診し、得られた音を『フーリエ変換』という数学的処理で数値化すると説明されています。フーリエ変換は複雑な音を周波数ごとの成分に分ける方法。人が耳で聞き分ける代わりに、機械が音の特徴を高速で比較する仕組みです。
ひび検出率95%とは?100%を保証する数字ではない
同社が公表するひび卵検査装置の検出率は95%です。これは公式の装置性能を示す数値であり、すべてのひびを必ず見つけるという意味ではありません。卵の大きさに応じた判定を行うサイズセンサーも備え、小さな卵の検査精度にも配慮しています。
装置には処理能力別の型式があり、公式仕様に掲載されている最大能力は毎時4万〜18万個です。後述する『毎時24万個』は選別・包装システムの最大能力で、すべてのひび検査装置が毎時24万個を検査するという意味ではない点に注意してください。
光の検査では血卵や黄身の異常などを調べる
『異常卵検査装置』は、殻の表面を叩く方式とは異なり、卵に光を当てて内部を透過した光を分析します。可視光の細かな波長データを利用し、血液が混じった卵、黄身が乱れた卵、黄身がない卵、腐敗した卵などを検出する設計です。
殻の色や黄身の色が異なる卵が同じラインに流れても、検出レベルを自動調整する機能があります。つまり、音響検査と透過光検査は競合する方法ではなく、見ている異常が違うのです。目に見える大きな割れには、さらに画像解析を利用した『大破卵検査装置』もあります。
毎時24万個でも卵を割りにくい搬送の工夫
卵を大量に扱うグレーディング装置『CANOPUS Series』の最大処理能力は、公式仕様で毎時24万個。単純計算すると1分あたり4,000個、1秒あたり約67個に相当します。ただしこれは機種の最大能力で、どの施設でも常にその数を処理するという意味ではありません。
特徴は、卵を運ぶ間隔を詰めた『狭ピッチ分配キャリア』です。卵の間隔を狭くすることで、搬送装置をむやみに高速化しなくても多くの卵を扱えます。卵への衝撃を減らしながら大量処理を両立する考え方です。サイズ別に分けた卵を容器へ直接詰める『ダイレクトパッキング』も効率化を支えています。
検査からパック詰めまで、全部が同じ装置なの?
『CANOPUS』は卵を選別して包装する中心的なシステムで、ひび・汚れ・内部異常などを調べる検査装置は必要に応じて組み合わせる構成です。公式ページでも検査装置への対応を『オプション』と明記しています。工場ごとに求める検査や包装の条件が異なるため、機器の組み合わせも一律ではありません。
また、ナベルの『TWS Series』は選別と包装の間に自動倉庫を置き、両工程を独立して動かせる仕組みです。包装側で容器を切り替える際にも、選別済みの卵を一時保管して作業を続けやすくしています。単なる高速化だけでなく、停止時間や取り違えを減らすことも重要な設計思想です。
ひび卵検査の発想は、熟練者が音を聞き分けたことから
日本弁理士会関西会によるナベルの取材記事では、以前のひび検査は光を当てて目で確認する方法が中心だったと紹介されています。ひびの発見が得意な作業者に話を聞いたところ、実は卵を弾いた音で判断していたことが開発のヒントになったそうです。
ナベルはこの着想を装置へ発展させ、1998年にひび卵検査装置の販売を開始しました。人の熟練した感覚を数値化して再現するという点が、同社の技術の興味深いところです。開発の歴史は日本弁理士会関西会の取材記事でも確認できます。
家庭で買う卵も、殻と保存状態を確認する
工場で検査された卵でも、流通中や家庭に持ち帰る途中で殻が割れることはあり得ます。買うときにはパック内に割れた卵がないかを確認し、持ち帰った後は商品表示に従って保存することが大切です。農林水産省の買い物時の注意でも、卵に割れがないか、期限や保存方法を確かめるよう案内しています。
『音や光で検査しているから、生で食べても絶対に安全』という解釈はできません。検査装置は不良卵を見つけるための工程の一部であり、衛生管理や家庭での適切な保存とは役割が異なります。
まとめ
ナベルの卵検査は、殻の微細なひびを『音』で、内部の異常を『光』で調べる仕組みです。16個の特殊ハンマーと音響解析を使うひび検査、透過光を使う異常卵検査、毎時最大24万個を扱う選別包装システムは、それぞれ役割と能力が異なります。卵を割らずに大量に調べる工夫を知ると、普段の卵パックの見方も変わってきます。
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