高価だった3D動作解析を身近にしたSPLYZA Motion
2026年9月9日放送のテレビ東京『アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜』に登場するのが、浜松市の株式会社SPLYZAが開発する「SPLYZA Motion」です。これまで専用カメラや身体に取り付けるマーカーが必要だった3D動作解析を、iPhoneやiPadなどカメラ1台で行えるようにしたサービスです。
スポーツのフォーム分析だけでなく、学校教育、大学の研究、リハビリ、さらに製造現場での身体負担の分析まで用途が広がっています。番組を見て「どうやって1台のカメラから3Dにするのか」「一般の人でも使えるのか」「料金はいくらなのか」と気になった人向けに、現在公開されている情報を整理します。
この記事でわかること
- SPLYZA Motionで何が計測できるのか
- 従来のモーションキャプチャーとの違い
- アプリの使い方と料金
- スポーツから医療へ広がった理由
SPLYZA Motionはどんなアプリなのか
SPLYZA Motionは、撮影した映像からAIが身体の位置を認識し、動きを数値化する「マーカーレス3D動作解析アプリ」です。
従来型の本格的なモーションキャプチャーでは、身体の各所に反射マーカーなどを装着し、複数台の専用カメラで撮影する方式が一般的でした。設備の規模が大きく、導入できる場所も限られます。
SPLYZA Motionが大きく違うのは、カメラ1台で3次元の動きを解析できることです。
2026年時点の公式サイトでは、教育・ヘルスケア・スポーツなどを中心に約200組織で利用されているとしています。さらに京都大学など複数の大学と共同研究を行い、解析精度や機能の改善も進めています。
全身120箇所の動きを数値として取り出せる
単に「骨格の線を映像に重ねるアプリ」ではありません。
現在のSPLYZA Motionでは全身120箇所のデータを算出でき、時間の経過に合わせて身体がどのように変化したかを確認できます。
計測できるものには、
- 関節などの角度
- 速度
- 特定地点からの距離
- 身体各部の軌跡
- 脊椎の湾曲角
- 肘トルク
などがあります。
例えば野球のピッチングなら、「腕が以前より上がった」という感覚的な評価だけでなく、角度や速度の変化を数字で比較できます。
リハビリでも同じです。「歩き方が少し良くなった気がする」という評価を、関節角度や身体の軌跡などと一緒に確認できるため、理学療法士だけでなく患者本人も変化を理解しやすくなります。
カメラ1台なのに3Dにできる理由
一般的な動画は平面の2D映像です。それでもSPLYZA Motionでは、単眼カメラから得た映像を独自のAI技術で解析し、身体を三次元として認識します。
この3D機能は2024年9月のアップデートで追加されました。映像から身体の位置を推定し、正面だけでなく横や上など視点を変えた3Dモデルとして動きを確認できます。
開発の背景にはSPLYZA独自の画像処理技術があります。
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21によると、本格的な3D解析の研究開発には約3年をかけており、CTOの安東清文さんが持つ3次元点群処理の技術が重要な役割を果たしました。
つまり、生成AIのような流行に合わせて急に作ったサービスではなく、長年積み上げてきた画像解析・数学・3次元処理の技術が土台になっています。
従来の16台カメラ方式とも比較している
「スマホ1台なら便利だけれど、精度は大丈夫なのか」という疑問も出てきます。
SPLYZAは、16台のカメラと身体のマーカーを使う光学式モーションキャプチャー「MAC3D System」とSPLYZA Motionの解析結果を重ね合わせ、ランニング・バッティング・ピッチングなどで比較した映像を公開しています。
一方で会社側も、AIによる認識なので動作の種類や撮影環境によって精度が変わることを明記しています。身体の一部が映像にほとんど映らない場合などは認識しにくくなる可能性があります。
「スマホだから従来機器と完全に同じ」という意味ではなく、従来は大掛かりだった定量的な動作解析を、多くの現場で使えるようにしたところが重要です。
高校からの要望がSPLYZA Motion誕生のきっかけだった
もともとのSPLYZAは、スポーツチーム向け映像分析サービス「SPLYZA Teams」を中心に成長した会社です。
転機になったのが、SPLYZA Teamsを導入していた大阪体育大学浪商高校から寄せられた、体育やスポーツサイエンスでも利用したいという要望でした。
そこで身体の動きをAIで解析する技術の共同開発が始まり、2021年9月に同校で正式導入。2022年9月にはSPLYZA Motionのβ版が一般向けにリリースされています。
スポーツ選手向けの最先端機材を安くしたというより、学校の授業でも使えるほど手軽にするところから発展したサービスなのが面白いところです。
スポーツだけでなくリハビリや製造現場でも利用
現在の用途はかなり広がっています。
スポーツなら投球・走行・フォーム分析、学校なら探究学習や体育、医療なら歩行やリハビリの評価に利用できます。
製造業では、作業中の姿勢や身体への負担を数値化し、安全性や作業環境改善に生かす使い方も想定されています。
「人間の動き」という共通データを扱っているため、スポーツ専用の技術からさまざまな産業へ広げられるのがSPLYZA Motionの強みです。
SPLYZA Motionの使い方
基本的な流れはシンプルです。
まずiPhoneやiPadなどで対象となる動作を撮影します。すでに撮影した動画を端末へ取り込んで解析することもできます。
SPLYZA Motionを開いて動画を選び、解析後に身長など必要な情報を入力。最後に速度・距離・角度・軌跡など、確認したい項目を選択します。
身体にマーカーを貼ったり、大掛かりな専用設備を準備したりする工程がないため、部活動のグラウンドやリハビリ室などでも使いやすくなっています。
料金と無料トライアル
SPLYZA Motion自体はApp Storeから無料でダウンロードできます。
2026年9月時点のApp Storeではアプリ内購入として、
- 2次元解析 月払い:50,000円
- 3次元解析 月払い:100,000円
と表示されています。iPhone・iPadではiOS/iPadOS 17.6以降が必要です。
一方、企業・学校・研究機関などの料金については公式サイトが利用目的に応じたプランを案内する方式になっており、14日間の無料トライアルも用意されています。
したがって、組織として導入する場合はApp Store表示価格だけで判断せず、公式窓口で確認したほうが確実です。
まとめ
SPLYZA Motionが注目される理由は、「AIだから」というより、これまで特別な研究施設にあった動作解析を日常の現場へ持ち込んだ点にあります。
カメラ1台で3D解析し、全身120箇所のデータから角度・速度・軌跡などを取り出せる。スポーツ選手ならフォーム改善、リハビリなら治療前後の比較、学校ならスポーツサイエンスの教材として利用できます。
『アンパラレルド〜ニッポン発、世界へ〜』で語られる「医療格差の解消」というテーマも、単に高性能なAIを作ったという話ではありません。高価で使える場所が限られていた技術を、誰でも使いやすい形に変えようとしていることがSPLYZAの挑戦の核心です。
参考リンク
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