記事内には、広告が含まれています。

西当弘隆の経歴と体温発電の仕組み|モッタイナイ・エナジー代表が挑む廃熱利用【ブレイクスルー】

テクノロジー・科学

西当弘隆さんの経歴と体温発電を支える熱電変換技術

2026年9月12日放送のテレビ東京「ブレイクスルー」では、身の回りにある熱を電気へ変え、人間の体温からも発電できる技術に取り組む開拓者が紹介されます。番組内容とこれまでの研究・事業実績を照合すると、中心人物は株式会社モッタイナイ・エナジー代表取締役の西当弘隆(にしあて・ひろたか)さんです。西当さんはメーカーでの熱電技術開発、産業技術総合研究所での研究を経て、「捨てられている熱を電気に変える」事業を立ち上げました。体温で発電できる理由から、西当さんの経歴、会社設立までの歩み、廃熱利用の可能性まで詳しく見ていきます。

この記事でわかること

  • 西当弘隆さんの学歴・経歴と現在の活動
  • 体温から電気を作れる熱電発電の仕組み
  • モッタイナイ・エナジーを設立した経緯
  • 工場排熱や温泉などへの熱電発電の活用方法

体温から発電できる「熱電変換」の仕組み

「体温から発電」と聞くと、人間の体そのものが電池のようになるイメージを持つかもしれません。

実際のポイントは、体温そのものではなく「温度差」です。

熱電発電では、熱電材料の一方を温め、反対側を冷たい状態にすると、その温度差によって電圧が発生します。これは「ゼーベック効果」と呼ばれる現象です。産総研も、材料の片側が温かく、もう片側が冷たい状態を作ると電子や正孔が移動し、その流れを電気として取り出せると説明しています。

たとえば室温が20℃前後の場所で、熱電モジュールの片面に30℃を超える手のひらを当てれば、

「手のひら側=暖かい」

「反対側=冷たい」

という温度差が生まれます。

株式会社モッタイナイ・エナジーでは、実際にこの原理を体験できる「ハンディ熱電デモ機」を展開してきました。つくば研究支援センターの紹介資料によると、熱電モジュールに手のひらを乗せるだけで、体温と室温の差から発電し、LEDを光らせたり無線通信を発信させたりできるとされています。

つまり、テレビ東京の番組概要にある「人間の体温からも電気を生み出せる」という表現は、この熱電変換の原理を利用したものと考えると分かりやすいでしょう。

ただし、「人間1人の体温で家電をどんどん動かせる」という話ではありません。

体温のような小さな温度差から取り出せるのは基本的に小さな電力です。一方で、消費電力の小さいセンサーや無線機器なら、こうした微小なエネルギーを集めて利用する「エネルギーハーベスティング」との相性があります。

産総研も2026年、手で触れた熱によって小型ファンを動かす熱電変換のデモを紹介しており、温度差さえあれば発電でき、機械的な可動部がないことも熱電変換の特徴としています。

西当弘隆さんは北陸先端科学技術大学院大学から熱電技術の世界へ

西当弘隆さんは、長年にわたり熱電変換技術に携わってきた技術者です。

公開されている経歴によると、2003年9月に北陸先端科学技術大学院大学の修士課程を修了。その翌月の2003年10月から2010年3月まで株式会社フェローテックに勤務しました。

フェローテックはペルチェ素子など熱電関連技術とも縁の深い企業で、西当さんはメーカーの現場で熱電発電モジュールに関わる経験を積んでいます。後年のインタビューでも、西当さんはメーカーで熱電発電モジュールの技術者として勤務した後に産総研へ移ったと紹介されています。

その後は、

2010年4月~2011年3月
日本産業技術振興協会に所属し、産業技術総合研究所へ派遣

2011年4月~
産業技術総合研究所

2013年4月~2014年3月
物質・材料研究機構にも在籍

2018年6月~2021年3月
早稲田大学アンビエントロニクス研究所でコーディネーター

という経歴を重ねました。

2026年現在も産総研・省エネルギー技術研究部門の材料物性研究グループのメンバー一覧に西当さんの名前が掲載されています。単なる企業経営者ではなく、研究開発の現場にも深く関わり続けている人物です。

2016年にモッタイナイ・エナジーを設立

西当さんにとって大きな転機となったのが、2016年6月の株式会社モッタイナイ・エナジー設立です。

会社名には事業内容がそのまま表れています。

世の中では大量のエネルギーが利用された後、「熱」という形で捨てられています。

工場の設備から出る熱い排水、排気、ボイラー、焼却炉、自動車、温泉など、私たちの周囲には利用されないまま環境中へ逃げていく熱が少なくありません。

西当さんが掲げたビジョンは、非常にシンプルです。

「すべての廃熱を電気に」

モッタイナイ・エナジーは、産総研の熱電変換グループによる研究成果を基盤として、熱電変換材料、熱電モジュール、熱電発電ユニット、評価装置などを開発・販売する産総研発ベンチャーとして誕生しました。

西当さんは以前、熱電発電について「高コスト・低性能・低知名度」という課題があったと説明しています。

研究室の中で性能の高い材料を作るだけでは、社会で使われる技術にはなりません。

熱源の温度、冷却方法、取り付け場所、費用、耐久性などを考え、「実際の現場で使える発電装置」まで作り込む必要があります。

西当さんが研究者としてだけでなく会社を立ち上げた理由も、産総研で蓄積された技術を実際の商品や設備として社会へ出していくところにありました。

温泉や工場排水も発電源になる

体温発電は非常に分かりやすいデモですが、モッタイナイ・エナジーが本格的に狙っている市場は、より大きな未利用熱です。

特に有望なのが、工場の排熱水や温泉など、比較的低い温度の熱です。

一般的な発電では高温の蒸気などが使われますが、熱電発電なら高温側と低温側に温度差があれば電気を生み出せます。

同社は温水と冷水を流して発電する「スタック型熱電発電ユニット」などを手掛けてきました。複数のユニットを組み合わせやすく、使える熱量に合わせて規模を変えられるのが特徴です。

過去には、入浴するには熱すぎる温泉源泉を熱電変換装置へ通し、温泉を冷やしながら同時に発電するシステムの納入実績も紹介されています。

本来なら水を加えて冷ましたり、そのまま逃がしたりする熱から電気まで回収できれば、「冷却」と「発電」を同時に行えることになります。

西当さんはその後も低温領域での研究を続けており、2024年の日本熱電学会では「100℃以下における市販熱電モジュールの発電特性」を発表しています。

「体温」という小さな熱から「工場」という巨大な熱源まで、基本原理は同じです。

温度差が存在しているのに、そのエネルギーが利用されていない場所を探す。

そこに西当さんの「モッタイナイ」という発想があります。

熱電発電が太陽光発電と大きく違う点

熱電発電には太陽光や風力とは違うメリットがあります。

最大の特徴は、光や風がなくても温度差が続く限り発電できることです。

工場設備が24時間稼働していて排熱が出続けるなら、その熱も継続して利用できます。

さらに、熱電発電はタービンのような大型の可動部分を必要としません。産総研は、熱電発電を「可動部のない固体デバイス」と説明しており、振動や騒音を発生させにくい特徴があります。

もちろん課題もあります。

すべての熱を高効率で電気へ変えられるわけではなく、熱電材料の性能や価格、熱源から素子へ効率よく熱を伝える設計、反対側を冷やして温度差を維持する方法などが重要です。

特に低温の廃熱はエネルギー密度が低いため、「存在する熱を見つける」だけでなく、「どう回収するか」まで含めたシステム設計が必要になります。

だからこそ、西当さんの仕事は単純に新しい発電材料を研究するだけではありません。

材料、モジュール、評価装置、発電ユニット、実証実験まで幅広く経験しており、つくばの企業紹介でも、日本だけでなく中国やロシアを含め、基礎研究から生産技術、耐久試験、フィールドテストまで携わってきたと紹介されています。

モッタイナイ・エナジーの会社情報と現在の活動

株式会社モッタイナイ・エナジーは茨城県つくば市を拠点とする企業です。

会社名:株式会社モッタイナイ・エナジー
代表取締役:西当弘隆
設立:2016年
所在地:茨城県つくば市千現2-1-6 つくば研究支援センター内
主な事業:熱電変換材料、熱電モジュール、熱電発電ユニット、評価装置などの設計・製造・販売、受託測定、コンサルティング

現在も日本熱電学会のプライムコア委員会に西当さんが株式会社モッタイナイ・エナジー所属として名を連ねており、熱電技術の実用化に継続して関わっています。

テレビで紹介される「体温で発電」という実験は目を引きますが、西当さんが長年取り組んできたテーマをたどると、その先にある本命はもっと大きいことが分かります。

工場、温泉、各種設備などから毎日捨てられている熱を回収し、少しでも電気として取り戻すこと。

小さな温度差までエネルギー源として扱えるようになれば、これまで「使えない」と思われていた場所そのものが発電場所へ変わる可能性があります。

まとめ

西当弘隆さんは、北陸先端科学技術大学院大学の修士課程を修了後、フェローテックで熱電関連技術に携わり、産業技術総合研究所で研究を続けてきた熱電変換の専門家です。

2016年には株式会社モッタイナイ・エナジーを設立し、「すべての廃熱を電気に」という考えのもと、熱電材料だけでなく、発電ユニットや評価装置、実証まで含めた社会実装に取り組んできました。

「ブレイクスルー」で注目される体温発電も、仕組みは温度差を利用するゼーベック効果です。手のひらと室温程度の小さな温度差でもLEDや無線通信を動かせることが実証されており、その考え方を工場排熱や温泉など大きな熱源へ広げれば、今まで捨てていたエネルギーを電力として回収できます。

「熱はあるのに使われていない」。

そんな身近な“モッタイナイ”を発電源へ変えようとしているのが、西当弘隆さんの熱電発電です。

参考リンク

テレビ東京「ブレイクスルー」公式サイト

株式会社つくば研究支援センター「株式会社モッタイナイ・エナジー」

産業技術総合研究所「熱電変換」


気になる生活ナビをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました