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秦家の建具替え|葦戸・御簾・藤筵で京町家を夏仕様にする初夏の知恵|秦さんちのお台所

文化

築150年以上の京町家・秦家で受け継がれる「家の衣替え」

2026年9月12日放送のNHK Eテレ「秦さんちのお台所〜京町家 初夏の味〜」では、京都市下京区の秦家住宅で受け継がれてきた初夏の暮らしが描かれます。豆ごはんや新茶、山しょう、梅干しといった季節の味とともに密着するのが、町家伝統の「建具替え」です。

人が冬服から夏服へ着替えるように、京町家も季節に合わせて襖や障子を外し、風を通す葦戸や御簾などに替えていきます。さらに足元には藤筵などの涼しい敷物を使い、家そのものを夏仕様へ変えるのが京町家の知恵。秦家公式でも「暮らし体験」の一つとして建具替えが紹介されており、建物だけでなく、そこで営まれてきた暮らしまで今に伝えています。

この記事でわかること

  • 京町家の「建具替え」で何を取り替えるのか
  • 葦戸・御簾・藤筵が夏に使われる理由
  • 秦家住宅が建具替えを今も大切にする背景
  • 秦家住宅の場所・見学料金・予約方法

京町家の「建具替え」は襖や障子を夏建具へ替えること

建具替えとは、季節に合わせて家の建具や敷物を入れ替えることです。

京都市の京町家資料では、夏になると障子や襖などを外し、強い日差しを遮りながら涼しい風を通す葦戸(よしど)へ交換すると説明されています。

床にも夏向きの工夫があります。

畳の上などには網代や藤筵(とうむしろ)といった、触れたときに涼しさを感じる敷物を使用。冬と夏で室内の見た目まで大きく変化します。

現在ならエアコンの設定温度を下げれば、短時間で部屋を涼しくできます。

ところが昔の京町家では、家を閉め切って冷やすのではなく、日差しを遮りながら自然の風を家の中へ通すことが重要でした。

そのために家そのものを季節に合わせて作り替えていたのです。

葦戸は光を遮りながら風を通す夏の建具

夏の建具替えを象徴する存在が葦戸です。

見た目は通常の襖とはかなり違い、細い葦などを組み込んだ透け感のある建具になっています。

襖は部屋と部屋をしっかり仕切ることができますが、暑い季節には風の通り道まで遮ってしまいます。

一方の葦戸は完全に閉じ切らないため、建具を立てた状態でも向こう側から風や柔らかな光が入ってきます。

京都の夏は盆地特有の蒸し暑さがあります。そこで京町家では、夏を迎えると襖や障子を外し、御簾や葦戸など通気性の高い建具へ替えてきました。

京都市も、こうした建具替えを「季節の変化に合わせた暮らし」の知恵として紹介しています。

現代風にいえば、冷房設備を増やす前に、まず家そのものを夏モードへ変更する発想です。

御簾や簾で強い日差しを室内へ入れすぎない

風を通すだけでは、京都の夏を快適に過ごすことはできません。

もう一つ重要なのが日差しを直接室内へ入れないことです。

その役割を担うのが御簾や簾です。

京都市の資料によると、京町家では襖や障子を御簾や葦戸に替えるだけでなく、強い直射日光が入る開口部には簾を垂らします。

外から差し込む光を和らげながら風は通すため、部屋の中には独特の薄暗さと涼しげな空気が生まれます。

しかも葦戸や御簾の向こうに中庭の緑が見えることで、目からも涼しさを感じられます。

「温度を下げる」だけではなく、

風を感じる。

強い光を和らげる。

庭の緑を見る。

足元の感触を変える。

こうした複数の工夫を重ねて、夏を心地よく過ごしてきたのが京町家の暮らしです。

藤筵で足元まで夏仕様に変える

建具替えという名前から、戸や襖だけを交換すると思われがちですが、京町家では敷物も季節に合わせて替えます。

夏に使われるものの一つが藤筵です。

京都市の資料では、夏の建具替えに合わせて、網代や藤筵など「ひんやりした手ざわり」の敷物を使用すると紹介されています。

畳には柔らかさがありますが、藤などで編まれた敷物には硬くさらりとした感触があります。

蒸し暑い時期に素足で過ごすことを考えると、建具だけでなく床まで替えることには大きな意味があります。

現代でも夏用ラグや冷感寝具を使う家庭がありますが、その発想を家全体へ広げたものと考えると、建具替えの意味が分かりやすくなります。

秦家住宅は1869年上棟の「表屋造り」の京町家

番組の舞台となる秦家住宅は、現在の建物だけでも150年以上の歴史があります。

秦家公式によると、元治元年(1864年)の元治の戦いで以前の建物を焼失し、その後、明治2年(1869年)に現在の住宅が上棟されました。

建物は京都市有形文化財に登録された「表屋造り」の京町家です。

表屋造りとは、商売を行う「ミセ」のある表棟と住居棟の間に中庭などを配置した、大店タイプの町家。

秦家の場合は間口5間を持ち、表から住居、中庭、さらに奥へと空間が続いています。

こうした奥行きのある家で自然の風を活用するためにも、建具が重要になります。

冬には部屋を区切る。

夏には建具を替えて風を通す。

建物の形を変えなくても、季節ごとに建具を交換することで住み心地を変えられるようになっているのです。

秦家は建物だけでなく「暮らし方」も残している

秦家住宅が興味深いのは、古い建物を保存しているだけではない点です。

秦家公式では、住宅公開のほか、料理の会や親子体験、季節の催しなどを開催しています。

その中には、

「魚をおろす」

「蚊帳の中でのお話会」

「餅つき」

「よもぎ団子」

そして「建具替え」

といった暮らし体験も並んでいます。

つまり残そうとしているのは、柱や梁、障子といった建築物だけではありません。

どの季節に何を食べるのか。

どうやって暑さをしのぐのか。

どのように家を整えるのか。

そんな町家で暮らしてきた人々の行動まで含めて伝えようとしていることが分かります。

今回の「秦さんちのお台所」で建具替えが料理と一緒に紹介されるのも、そのためでしょう。

豆ごはんを炊き、新茶を味わい、梅仕事をしながら、住まいも夏へ切り替える。

食と住まいは別々ではなく、どちらも季節を迎えるための準備なのです。

建具替えが終わると京町家の景色そのものが変わる

夏建具へ替えた町家は、冬とは雰囲気が大きく変わります。

襖で閉ざされていた部屋の向こうが透けて見え、奥の庭まで視線が抜けます。

葦戸越しに入る光は柔らかくなり、簾が強い日差しを遮ります。

さらに坪庭や中庭から風や緑を取り込むことで、家の中にいながら季節の変化を感じられる空間になります。

京都市も、京町家では坪庭などの小さな空間を利用し、風や光、植栽の変化を暮らしへ取り込んできたと説明しています。

建具替えは単なる模様替えではありません。

家の中と外の境界を夏だけ少し緩める技術ともいえます。

今回の番組では極上の映像美も見どころとして掲げられているため、食卓だけでなく、建具を替えた後の秦家に光や風がどう入ってくるのかにも注目です。

秦家住宅の場所・見学料金・予約方法

秦家住宅は現在も予約制で見学できます。

所在地は京都府京都市下京区太子山町594です。

見学時間は9時30分〜16時30分で、前日までの予約が必要。

現在の公式案内では料金は、

大人:2,000円

中高生:1,000円

となっています。

邸内は撮影禁止。素足の場合は靴下を用意するよう案内されています。

予約は秦家公式サイトの申し込み・問い合わせフォームなどから受け付けており、公式案内では返信をもって予約完了となります。

なお、通常の住宅見学で建具替えの作業そのものを必ず見られるわけではありません。

秦家では建具替えを暮らし体験として扱っていますが、特別企画は不定期開催です。参加したい場合は最新の開催情報を秦家公式サイトで確認するのが確実です。

まとめ

「秦さんちのお台所〜京町家 初夏の味〜」で紹介される建具替えは、京町家を夏仕様へ変える伝統的な暮らしの知恵です。

襖や障子を外し、風を通す葦戸や御簾などに交換。強い日差しは簾で和らげ、足元には網代や藤筵といった涼しい敷物を使います。

番組の舞台となる秦家住宅は1869年上棟の京町家で、現在も料理や歳時だけでなく建具替えなどの暮らしの文化を伝えています。

冷房のスイッチを入れるのではなく、家そのものを季節に合わせて変える。

初夏の料理と一緒に建具替えを見ることで、秦家が守ってきた「季節とともに暮らす」という考え方が、よりはっきり見えてきます。

参考リンク

京都秦家公式「秦家住宅について」

京都秦家公式「ご案内」

京都市「京町家を未来へ」


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