株式会社富士防が進める「職人を自社で育てる」建設会社づくり
2026年9月19日放送のNHK総合『所さん!事件ですよ』では、「下請けだけでは終わらない」「多能工を育成するローカル建設会社」という建設業界の新しい動きが取り上げられます。神奈川県横須賀市に本社を置く株式会社富士防は、防水工事専門の下請けから大規模修繕工事の元請けへ事業を広げ、2021年には神奈川県認定の「富士防職業訓練校」を開校。職人を外から集めるだけでなく、自社で技術者を育てる仕組みをつくってきた会社です。
この記事でわかること
- 株式会社富士防が下請けから元請けへ進んだ経緯
- 「防水多能工」を育てる富士防職業訓練校の内容
- 岡田成煥社長が建設業界へ入ったきっかけ
- 2026年に始まった新しい防水技術研修
富士防は防水工事の下請けから大規模修繕の元請けへ成長した
出典: 株式会社富士防 会社概要
株式会社富士防の原点は、1989年1月に創業した「富士防水工業」です。
創業当初は、その名の通り防水工事を専門とし、下請けとして現場に入る仕事が中心でした。そこから外壁塗装、下地・タイル補修、シーリングなどへ施工領域を広げ、2008年4月には社名を「富士防」へ変更しています。
富士防が大きく方向転換したのも、この時期でした。
会社公式では2008年以降について、
- 防水工事専業から大規模修繕会社へ
- 下請けから元請けへ
- 防水技術を核に修繕工事全体へ領域を拡大
という変化を明確にしています。
マンションの大規模修繕では、防水だけでは工事が完結しません。
外壁の補修や塗装、シーリング、タイル補修など複数の工事をまとめて進める必要があります。富士防は、防水工事で培った技術を土台に対応できる工種を増やし、建物全体の修繕を請け負う会社へ変わっていきました。
岡田成煥社長は中学卒業後に建設現場へ入り23歳で独立
現在の代表取締役は岡田成煥(おかだ・せいかん)さんです。
岡田さんは中学校卒業後、「手に職をつけたい」と建設現場で働き始め、23歳で独立しました。独立したのが1989年で、富士防水工業の創業につながります。
最初から大規模な建設会社を目指していたわけではありません。
当初は防水工事の下請けとして技術を磨き、建物を建て替えるのではなく修繕しながら長く使う需要が高まる中で、少しずつ工事の範囲を広げていきました。
職人として現場から始まり、自ら会社を立ち上げ、下請けから元請けへ進んだという流れは、現在の富士防の人材育成にもつながっています。
単に仕事を受注するだけではなく、施工を担う人そのものを社内で育てることに力を入れているからです。
富士防職業訓練校は神奈川県認定の「防水科」
富士防を特徴づける取り組みが、2021年に開校した「富士防職業訓練校」です。
2021年7月19日、神奈川県から認定職業訓練施設として認定されました。
- 訓練施設名:富士防職業訓練校
- 訓練科名:防水科
- 訓練課程:普通職業訓練・短期課程
- 所在地:神奈川県横須賀市
- 運営:株式会社富士防
神奈川県が公表している認定職業訓練施設一覧にも、「富士防職業訓練校/防水科」と掲載されています。
会社公式では、神奈川県内初となる防水科の職業訓練施設としています。
訓練期間は約5カ月。ベテラン社員が指導員となり、学科と実技を通して防水技術を学び、防水施工技能士資格の取得を目指します。
従来の職人育成では、現場で先輩の仕事を見ながら覚えるという方法が中心でした。
富士防ではそこに体系的な教育を加え、技術を個人だけの経験にせず、会社の中で次世代へ伝えていく仕組みに変えています。
第2期には13人が参加し女子大学生や高校生も体験
職業訓練校は1度限りの取り組みではありません。
2022年9月に開校した第2期では、13人が訓練生として参加しました。
さらに体験見学として、
- 協力会社の参加者
- 女子大学生のグループ
- 地元高校生
も参加しています。
建設業界では職人の高齢化や担い手不足が大きな課題になっています。
その中で富士防は、若手を採用して現場へ送り出すだけではなく、会社の中に教育施設を設ける方法を選びました。
同社は技術部門の職人を社員として雇用し、技術やノウハウ、経験を社内に蓄積する体制を取っています。誰が担当しても一定水準以上の施工ができる状態をつくることが、人材育成の目的になっています。
防水多能工は「1つの作業だけをする職人」で終わらない
富士防が職業訓練校設立時に掲げたのが「防水多能工」の育成です。
建設現場では工種ごとに専門職が分かれることが多い一方、修繕工事では建物の状態に応じて幅広い知識や対応力が求められます。
富士防は創業時の防水工事から、
- 外壁塗装
- 下地・タイル補修
- シーリング
- 大規模修繕工事
へと領域を広げてきました。
その会社自身の歩みと同じように、人材についても専門技術を軸にしながら対応できる範囲を広げようとしているのが特徴です。
現在の富士防には、一級建築士や建築施工管理技士、防水調査診断員、防水技能職員など、さまざまな資格を持つ社員が在籍しています。従業員数は公式会社概要で190人とされています。
2026年には「Fujibow Waterproofing Training」を開始
人材育成はさらに次の段階へ進んでいます。
富士防は2026年5月、新たな防水技術研修「Fujibow Waterproofing Training」を開始しました。
職業訓練校で若手職人を育てるだけでなく、今回の研修では防水施工技術に加えて、
- 防水施工の基礎技術
- 応用技術
- 積算
- 原価管理
- 現場マネジメント
まで扱います。
参加予定者は計15人。
対象は富士防とグループ会社レインボウの技術職人だけではなく、横須賀市内の協力会社2社にも広げられています。
つまり「腕のいい職人」を育てるだけではなく、工事の金額や工程まで理解し、現場を動かせる人材を育成しようとしているわけです。
これは富士防が防水工事の下請けから大規模修繕の元請けへ進んできた歩みとも重なります。
施工する技術だけでなく、現場全体を見る力まで身につけることが、次世代の職人育成に組み込まれています。
株式会社富士防の会社情報
現在の株式会社富士防の基本情報です。
- 会社名:株式会社富士防
- 代表取締役:岡田成煥
- 創業:1989年1月
- 創業時の名称:富士防水工業
- 本社:神奈川県横須賀市森崎1-19-18
- 資本金:1億円
- 従業員数:190人
- 主な事業:マンションなどの大規模修繕、防水工事、外壁塗装、下地補修など
- 職業訓練施設:富士防職業訓練校
- 訓練科:防水科
本社の横須賀に加え、東京、横浜、千葉、埼玉、静岡、長野にも拠点を展開しています。
まとめ
株式会社富士防は1989年、「富士防水工業」としてスタートしました。
当初は防水工事を専門とする下請け会社でしたが、建物を長く使う大規模修繕の需要拡大に合わせて工事領域を拡大。2008年に「富士防」へ社名を変え、下請けから元請けへと事業を転換してきました。
そして次に力を入れたのが、人材育成です。
2021年には神奈川県認定の「富士防職業訓練校」を開校し、防水多能工を育成。2026年には施工技術だけでなく積算や原価管理まで学ぶ「Fujibow Waterproofing Training」も始めています。
職人不足だから外部から人を探すだけではなく、技術を教え、資格取得を支え、現場を率いる人材まで自社と地域で育てる。
防水工事の職人から始まった会社が、元請けとして工事全体を担い、さらに次世代の職人を育てる側へ進んできたことが、富士防の大きな特徴です。
参考リンク
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