ホクト「きのこ総合研究所」がスーパーのきのこを大きく変えた
2026年9月23日(水)放送のNHK Eテレ『ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪』では、「きのこ総合研究所」の裏側を特集します。番組に登場するのは、長野県に本社を置くホクト株式会社の「きのこ総合研究所」。普段スーパーで目にする「白いエノキダケ」「苦味の少ないブナシメジ」「大量生産されるエリンギ」が、長年の品種改良や栽培技術によって生まれてきたことが紹介されます。
案内役となる「きのこバカセ」は、ホクト開発研究部部長の大内謙二さんです。研究所は1983年に設立され、世界初となる純白系エノキタケの開発をはじめ、家庭の食卓で当たり前になったきのこを40年以上にわたって研究してきました。
この記事でわかること
- 番組の「きのこ総合研究所」がホクトであること
- 「きのこバカセ」大内謙二さんの仕事
- 純白エノキや苦味の少ないブナシメジが生まれた歴史
- エリンギを全国へ広げた品種・大量生産技術
番組の「きのこ総合研究所」はホクト

『ザ・バックヤード』で紹介される「きのこ総合研究所」は、ホクト株式会社の研究開発拠点です。
ホクトでは、きのこの研究開発を会社の中核部門と位置づけています。
研究内容は単に「新しいきのこを探す」だけではありません。
よりおいしい品種を作る新品種開発をはじめ、栽培技術、原菌管理、品質管理、きのこの機能性研究など、商品としてスーパーへ並ぶまでの幅広い分野を扱っています。
さらに研究所では、野生きのこの採集や品種開発によって得られた約1万株の菌株を低温保存しています。
そこから優れた性質を持つ菌株を選び、掛け合わせと評価を繰り返しながら、新しい品種へつなげています。
スーパーで何気なく手に取っているきのこの裏側に、長期間にわたる研究があることが分かります。
きのこバカセ・大内謙二は開発研究部長
番組で「きのこバカセ」と呼ばれて登場する専門家が、大内謙二さんです。
大内さんはホクト株式会社の開発研究部部長を務め、きのこ総合研究所で研究開発に携わっています。
きのこの品種開発や栽培研究に長く関わってきた人物で、専門的な研究だけでなく、きのこのおいしい食べ方や調理方法まで幅広く伝えています。
研究者としての実績もあり、2024年には大内さんらホクトきのこ総合研究所の研究グループが、「ヒラタケ属の新種及びその作出方法の開発」で日本きのこ学会の技術賞を受賞しています。
また、人工栽培が難しい高級きのこ「ポルチーニ」の研究にも長年取り組んできました。
研究所では品種を作って終わりではなく、実際に育て、食べ、味や食感を確認しながら商品化へ近づけていきます。
番組では、そんな大内さんがきのこ開発の歴史だけでなく、「エリチリ」といった料理や、きのこの味を引き出す調理法も紹介します。
1983年に誕生したきのこ専門研究所
ホクトのきのこ総合研究所が設立されたのは1983年12月です。
当時から、新品種の開発だけでなく、新しい栽培素材や栽培方法の研究を進めてきました。
40年以上の研究で大きく変わったものの一つが、きのこの「見た目」です。
今ではスーパーに白いエノキ、茶色いブナシメジ、太い柄のエリンギが並んでいる光景は珍しくありません。
しかし、それぞれが最初から現在の姿で大量流通していたわけではありません。
味、色、形、成長速度、収穫量などを研究し、安定して生産できる品種へ改良したことで、家庭で手軽に食べられる商品になりました。
現在も研究所では、流通済みの品種であっても改良を続けています。ホクトのブナシメジは商品化されたものだけでも現在5代目、エリンギは3代目まで進んでいます。
世界初の純白エノキ「ホクトM-50」
ホクトきのこ総合研究所を代表する成果が、純白系エノキタケ「ホクトM-50」です。
現在、エノキタケと聞けば細長く白い姿を思い浮かべますが、1980年代まで茶色く着色するエノキが一般的でした。
ホクトでは研究を重ね、光を当てても傘や柄が着色しない純白のエノキタケを世界で初めて開発しました。
研究所の公式情報では1986年に純白エノキの開発に成功し、その品種「ホクトM-50」は1988年11月5日に種苗登録されています。
この品種は全国のきのこ農家へ広がりました。
つまり、現在スーパーで「普通のエノキ」として見ている白い姿そのものが、研究によって作られ、広まっていった歴史を持っています。
見慣れた食品ほど、その誕生には意外な技術開発があります。
苦味を抑えたブナシメジを生んだ品種改良
ブナシメジにも大きな変化がありました。
天然のブナシメジは、もともと苦味が強いきのこです。
そこでホクトは、家庭でより食べやすいきのこを目指して品種改良を進めました。
菌同士を掛け合わせ、新しく生まれたきのこを栽培し、実際に味を確認する。この地道な作業を何度も繰り返していきます。
初期に開発された「ホクト8号菌」では、ブナシメジ特有の苦味を抑えることに成功。
その後も改良は続き、現在栽培されている「ホクト18号菌」は甘味が増し、太い茎、丸みのある傘、しっかりした歯ごたえを持つ品種になりました。
さらにホクトは、白いブナシメジである「ブナピー」も開発しています。
2026年現在、ホクトのブナシメジは1日約100トンが生産されるほど身近な食品になっています。
天然の強い苦味を抑え、日常の料理に使いやすくしたことが、現在の普及につながっています。
エリンギを大量・安定生産できるようにした技術
もう一つ、研究所の成果として番組で大きく扱われるのがエリンギです。
エリンギはもともと中部ヨーロッパ、東欧、中央アジアなどに自生するきのこで、日本の山に普通に生えているきのこではありません。
ホクトでは独自の品種開発と栽培技術を研究し、大量かつ安定して生産できる技術を確立しました。
本格的な栽培・販売を始めたのは1995年。
現在では全国のきのこセンターで約42日間かけて育てられ、1日約49.7トンが出荷される主力商品の一つになっています。
エリンギといえば、太い柄とコリコリした食感が特徴です。
ところが番組によれば、日本で大量に出回るようになったのは2001年頃から。
現在ではスーパーの定番ですが、家庭へ急速に普及した歴史は意外に新しいきのこです。
ホクトが開発した品種だけではなく、培地の配合、水分、温度などを管理する生産技術が組み合わさることで、年間を通じた安定供給が可能になっています。
スーパーのきのこを変えた40年以上の研究
ホクトきのこ総合研究所の歴史を見ると、スーパーに並ぶきのこが「自然のまま」ではないことがよく分かります。
白いエノキは、光を受けても着色しにくい品種を開発した結果。
食べやすいブナシメジは、天然の強い苦味を抑える品種改良の結果。
一年中買えるエリンギは、品種開発と大量・安定生産技術の結果です。
現在、ホクトが生産・販売するきのこ全体の国内シェアは約3分の1。2022年の統計をもとにした同社の公式情報では、エリンギは全国生産量の約48%、ブナシメジは約36%を占めています。
研究所の仕事は、新品種が商品化されたら終了するわけではありません。
もっとおいしくする、もっと育てやすくする、形を整える、生産量を増やす。
さらに人工栽培が難しいマツタケやホンシメジなどの研究まで続けています。
1983年の研究所設立から40年以上。
私たちが「普通のきのこ」だと思っている姿そのものが、研究者たちの積み重ねによって作られてきました。
まとめ
2026年9月23日放送の『ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪』で紹介される「きのこ総合研究所」は、ホクト株式会社の研究開発施設です。
研究所は1983年に設立され、1986年には世界で初めて純白系エノキタケの開発に成功しました。
その後も、天然の苦味を抑えたブナシメジ、エリンギの大量・安定生産など、現在の食卓につながる技術を生み出してきました。
番組で「きのこバカセ」として登場するのは、開発研究部部長の大内謙二さんです。
スーパーでいつでも購入できるきのこ。その当たり前の風景の裏には、約1万株もの菌株を保存し、味・形・生産性を追究し続けてきた40年以上の研究があります。
参考リンク
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