日本の物流を支える巨大船、そのスケールは「建物」級
2026年9月27日放送のNHK総合『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』では、日本の輸出入を支える巨大船の世界に迫ります。自動車輸送船の船内から巨大船の製造現場、世界有数の豪華客船まで扱われる中、Ocean Network Express(ONE)も公式アカウントで同回に自社の船が登場することを告知しています。
ONEの巨大船を象徴する存在が、最大2万4136TEUを積載できる超大型コンテナ船「ONE INNOVATION」です。全長は約400m。2023年に広島県呉市で完成したこの船には、大量の貨物を運びながら燃料消費と環境負荷を抑えるための日本の造船技術が詰め込まれています。
この記事でわかること
- ONE INNOVATIONの全長・積載能力・乗組員数
- 2万4136TEUという積載能力が意味するもの
- ジャパン マリンユナイテッド呉事業所で採用された造船技術
- ONEが世界のコンテナ物流で担っている役割
ONEの巨大コンテナ船は最大2万4136TEU級
出典:Ocean Network Express「2万4000TEU型コンテナ船“ONE INNOVATION”が竣工」
ONE INNOVATIONは、Ocean Network Expressが導入した2万4000TEU級「Megamax」コンテナ船の第1番船です。2023年6月2日、ジャパン マリンユナイテッドの呉事業所で引き渡されました。
基本スペックは次の通りです。
- 全長:399.95m
- 幅:61.40m
- 深さ:33.20m
- 喫水:16.50m
- 総トン数:23万5311トン
- 最大積載能力:2万4136TEU
- 定員:34名
- 船籍:リベリア
全長約400mという船体に対し、定員は34名。巨大な建造物のような船を、限られた人数で運航する設計になっています。
「TEU」は20フィートコンテナ1個を1単位として数えるコンテナ船の容量の単位です。40フィートコンテナなら2TEUとなるため、2万4136TEUは必ずしもコンテナ2万4136個という意味ではありません。
それでも、一度の航海で運べる貨物量としては途方もない規模です。
ONE INNOVATIONは2万2233TEUを積載した記録も持つ
ONE INNOVATIONは単に「大きな船」というだけではありません。
ONEが2026年9月に公表したサステナビリティレポートでは、ONE INNOVATIONが2万2233TEUを実際に積載し、コンテナ船の積載量で新たな業界記録を達成したことが紹介されています。
船の公称積載能力は2万4136TEUですが、実際の航海ではコンテナごとの重量や寄港地、荷降ろしする順番、船体の安定性などを考慮して積載計画を組まなければなりません。
つまり、単純に空いている場所へコンテナを積んでいくわけではありません。
巨大船になるほど、船の前後左右へ重量をどう分散するか、どの港でどのコンテナを降ろすかまで含めた緻密な物流設計が必要になります。
ONE INNOVATIONは「船そのものの巨大さ」と「大量の貨物を現実に運ぶ運航技術」の両方を象徴する船といえます。
約400mの船体を支える日本の造船技術
ONE INNOVATIONを建造したのは、広島県呉市のジャパン マリンユナイテッド呉事業所です。
これほど巨大なコンテナ船では、単純に船体を大きくすればいいわけではありません。大型化すれば船体へかかる力も大きくなり、燃料消費、安全性、積載効率を同時に成立させる必要があります。
ONE INNOVATIONでは、運航頻度の高い速度や喫水に合わせて船体形状を最適化。さらにジャパン マリンユナイテッド独自の省エネ装置「SURF-BULB」「ALV-Fin」や「Rupas舵」などが採用されています。
主機関だけでなく、冷却海水ポンプや機関室ファンにも制御技術を導入し、船全体で燃費性能を高めています。
さらに注目されるのが船体そのものです。
2万TEUを超える巨大コンテナ船では、大量のコンテナを積むため甲板上に非常に大きな開口部が必要になります。その一方で、長さ約400mの船体に十分な強度を持たせなければなりません。
ONE INNOVATIONには極厚の高強度鋼板が使われ、亀裂が発生した場合にも広がりを抑える「脆性き裂伝播停止技術」が採用されました。ジャパン マリンユナイテッドによれば、2万TEU超級コンテナ船への採用は世界初でした。
船首には巨大なウィンドシールドまで装備
ONE INNOVATIONを横から見ると、大量に積まれたコンテナが大きな壁のように並びます。
この構造では、航行中に正面から受ける風も無視できません。
そこで船首部分には、大きなウィンドシールドを設置。コンテナへ直接当たる空気の抵抗を減らし、燃料消費の抑制につなげています。
さらに排ガス規制へ対応するため、排ガス中の成分を除去するスクラバーも装備されています。
ONEは船体設計について、貨物の積載量を最大化しながら燃料消費を抑え、輸送量あたりの環境負荷を低減することを狙ったものと説明しています。
巨大化は単なる迫力のためではありません。
「1隻でより多く運ぶ」というスケールメリットと、燃料効率の向上を同時に追求した結果が、全長約400mという船体につながっています。
ONEは日本の海運3社から生まれたコンテナ船会社
Ocean Network Expressは2017年、日本郵船、商船三井、川崎汽船の定期コンテナ船事業を統合して設立されました。
特徴的なマゼンタカラーの船体とコンテナで知られていますが、その事業規模も巨大です。
2026年時点でONEは、
- 280隻を超える船隊
- 約220万TEUを超える船腹量
- 120か国以上へのネットワーク
を展開しています。
ONE INNOVATIONはその中でも象徴的な超大型船です。
1隻の船を見るだけでも、その背後には造船所、船員、港湾、コンテナターミナル、荷役会社、トラックや鉄道、世界各地の物流拠点がつながっています。
巨大コンテナ船とは、海上を走る単独の輸送手段というより、世界規模の物流網をつなぐ巨大な「幹線」のような存在です。
日本の貿易量99.6%を海上輸送が支えている
巨大船が日本にとって重要なのは、日本が島国だからです。
国土交通省は、日本の貿易量の99.6%を海上輸送が担っているとしています。2025年末にまとめられた造船業再生ロードマップでも、海上輸送を国民生活や経済活動に不可欠なインフラと位置づけています。
食品、衣料品、家具、家電の部品、工業製品の原材料など、普段の生活で使うさまざまな物が海を渡ってきます。
逆に、日本で生産した製品を海外へ送り出すのも船です。
ただし船が巨大化すれば、受け入れる港側にも対応が必要になります。深い水深を持つ岸壁、大型のガントリークレーン、大量のコンテナを一時保管できるヤード、港から国内へ運び出す交通網まで整って初めて、巨大船の輸送力を生かせます。
巨大船を調べていくと、「船だけが大きい」のではなく、港や物流システムそのものが巨大船に合わせて進化していることが分かります。
まとめ
ONEの超大型コンテナ船を象徴するONE INNOVATIONは、全長399.95m、最大積載能力2万4136TEUという世界最大級の船です。
一方、その巨大さ以上に興味深いのが船の中身です。
ジャパン マリンユナイテッド呉事業所で建造された船体には、省エネ装置、高効率な船型、高強度鋼板、空気抵抗を抑えるウィンドシールドなど、大量輸送と燃費、安全性を両立させる技術が投入されています。
そしてONE INNOVATIONは実際に2万2233TEUを積載する記録も達成しました。日本の貿易量の99.6%を海上輸送が支えていることを考えると、巨大船は普段目にする機会こそ少なくても、私たちの生活と非常に近い場所にある存在です。
参考リンク
- Ocean Network Express「2万4000TEU型コンテナ船“ONE INNOVATION”が竣工」
- ジャパン マリンユナイテッド「24,000TEU型コンテナ船“ONE INNOVATION”引渡」
- 国土交通省「造船業再生ロードマップ」
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