美幌温水ため池とは?北海道最大の農業用ため池がトンボの楽園になった理由
北海道網走郡美幌町の福住地区にある美幌温水ため池(びほろおんすいためいけ)は、1970年に整備された農業用のため池です。面積は93,976平方メートルで、北海道最大の面積を持つため池として知られています。
もともとは美幌川の冷たい水を太陽熱で温め、稲作に利用するための施設でした。しかし、長い年月を経て40種以上のトンボが確認される豊かな湿地環境へと変化しました。
2026年10月25日(日)放送のNHK総合『さわやか自然百景』では、この美幌温水ため池を特集。南方系と北方系のトンボが集まる珍しい環境や、夏から秋にかけて繰り広げられる繁殖活動が紹介される予定です。
美幌温水ため池はどこ?1970年に造られた北海道最大のため池
美幌温水ため池があるのは、北海道東部のオホーツク地方、美幌町字福住です。
正式な資料では「美幌温水溜池」と表記されることもあります。
美幌町の公式資料による基本情報は次のとおりです。
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所在地:北海道網走郡美幌町字福住
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完成年:1970年(昭和45年)
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面積:93,976平方メートル
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主な水源:美幌川
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管理:網走川土地改良区
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特徴:段差を利用して農業用水を太陽熱で温める構造
面積は約9.4ヘクタール。一般的な学校のグラウンドよりもはるかに広い水面が、周囲の農地や緑豊かな丘陵地に広がっています。
このため池は、2010年に農林水産省が選定した**「ため池百選」**にも選ばれています。
冷たい川の水を温める仕組み|段差と太陽熱を利用
「温水ため池」という名称ですが、温泉が湧いているわけではありません。
水を温めるために利用しているのは、太陽の熱です。
北海道東部は夏でも冷涼な気候で、川から直接取り入れた冷たい水を水田に流すと、稲の生育に悪影響が出ることがあります。
そこで考えられたのが、広い水面を使って水温を上げる仕組みです。
美幌温水ため池には段差があり、美幌川から取り入れた水は、上段から下段へと順番に流れていきます。
その間に太陽光で水が温められ、下流の農地へ供給される構造になっています。
ボイラーや電気ヒーターではなく、自然のエネルギーを使って水温を調整する、農業の知恵が詰まった施設です。
JAびほろによると、かつては稲作を支える重要な施設でしたが、現在は当時のような農業利用は行われていません。一方、ため池そのものは管理が続けられ、生き物たちの生息地として大切にされています。
40種以上のトンボが生息|南方系と北方系が出会う珍しい環境
美幌温水ため池の最大の特徴は、トンボの種類の豊富さです。
美幌博物館の調査では、これまでに40種以上のトンボが確認されています。博物館の公式発信では42種類に及ぶことも紹介されています。
注目したいのは、単純に数が多いだけでなく、異なる地域に由来するトンボが見られることです。
番組予告では、台湾やマレーシアなどに由来する南方系のトンボと、シベリア、中国北部、朝鮮半島などに由来する北方系のトンボが共存している点を取り上げています。
登場が予告されているのは、次のようなトンボです。
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ギンヤンマ:大きな体と力強い飛行が特徴のヤンマの仲間
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タイリクアカネ:秋になると赤みを帯びるアカネ属のトンボ
水面だけでなく、周囲の草地や浅い水辺など、さまざまな環境が存在することが、多くのトンボにとって重要な生息条件になっています。
人間が造った農業施設が、時間をかけて多様な生き物の繁殖場所になった興味深い事例です。
トンボの観察時期はいつ?7月の羽化と9月の大群
美幌温水ため池のトンボは、季節によって姿や行動が変わります。
番組予告によると、池の水が張られる5月から、生き物たちの活動が本格化します。
5月:水辺の環境が整う時期
池に水が張られ、トンボの幼虫であるヤゴや水辺の生き物たちが活動する環境が整います。
7月:トンボが羽化する時期
水中で育ったヤゴが水辺の植物などに登り、羽化して成虫へと姿を変えます。
9月:多くのトンボが飛び交う時期
タイリクアカネなどが数多く見られる季節です。
特に興味深いのが、オスとメスが連結して飛ぶ「おつながり」と呼ばれる行動です。
この行動は繁殖活動と関係しており、連結したまま水辺で産卵する種類もいます。
毎年同じ池で世代をつなぎながら、トンボたちは命のサイクルを繰り返しています。
トンボだけではない!ヤチウグイやカエルも暮らす
美幌温水ため池には、トンボ以外にもさまざまな生き物が生息しています。
注目したい魚の一つがヤチウグイです。
ヤチウグイは湿地や沼などを好む淡水魚で、開発によって自然の生息地が減少してきました。
美幌博物館は、ため池がヤチウグイにとって、本来の生息地に代わる重要な場所になっていると説明しています。
さらに、カエルなどの両生類は産卵場所として利用し、湿地を好むアズマツメクサなどの植物も生育しています。
美幌博物館では2018年に「美幌温水ため池の植物相」という研究報告も発表されました。単なる景勝地ではなく、動植物の生息環境として継続的に調査されている場所なのです。
生き物を守る取り組み|魚道と水管理の工夫
美幌温水ため池では、網走川土地改良区と美幌博物館が協力して、自然環境の保全に取り組んでいます。
池の水位や水を抜く時期は、水辺の生き物に大きな影響を与えます。
そこで、生き物の生活サイクルに配慮した水管理を進めています。
また、周辺の草をあえて残し、ホタルに自動車のライトが当たりにくくする工夫も行われています。
さらに特徴的なのが「ポータブル魚道」です。
魚道は、段差などによって移動できなくなった魚が、水路を上り下りできるように設ける通り道です。
美幌温水ため池では、香川高等専門学校の高橋直己准教授が開発した、持ち運び可能な魚道の設置も行われています。
池から用水路へ流れ出た魚が再び戻れるようにするための取り組みで、農業施設の管理と生物多様性の保全を両立させる実例として注目されています。
美幌温水ため池を見学できる?生き物を学べる美幌博物館
美幌温水ため池は観光用の公園ではなく、農業用として整備された施設です。
北海道のドライブ観光サイト「シーニックバイウェイ北海道」では立ち寄りスポットとして紹介されていますが、専用駐車場の台数や自由に立ち入れる範囲は明示されていません。
そのため、現地では管理用道路や農地への無断立ち入りを避け、施設の管理ルールに従う必要があります。
ため池について詳しく知りたい場合は、美幌博物館もおすすめです。
同館の第2展示室「農業と身近な自然」には、美幌温水ため池の仕組みや、生息する生き物について紹介する展示があります。
美幌博物館の基本情報は次のとおりです。
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所在地:北海道網走郡美幌町字美禽253番地の4
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開館時間:9時30分~17時(最終入館16時30分)
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観覧料:大人・大学生400円
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高校生以下:無料
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休館日:原則月曜日など
実際の池を訪れる前に、地元の自然環境や農業の歴史を学ぶことができる施設です。
まとめ
美幌温水ため池は、冷たい川の水を太陽熱で温めるために造られた北海道最大の農業用ため池です。半世紀以上の年月を経て、40種以上のトンボやヤチウグイなどが暮らす豊かな生息地になりました。農業の歴史と自然保護の両面から、長く大切にしていきたい場所です。
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