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豊かになるほど子どもが減るのはなぜ?教育費と出生率の関係を理研の研究で解説

教科書とランドセル、家計の計算書を配置した教育費と少子化のイメージ。文字は「教育費と少子化の関係」 生活・暮らし

豊かになるほど子どもが減る理由には「教育への投資」が関係する

経済が豊かになって生活水準が上がっても、子どもの数は必ずしも増えません。理由の一つとして考えられているのが、子どもの人数を増やすことより、一人ひとりの教育に時間とお金をかけるようになるという変化です。

2026年11月3日放送予定のNHK総合『未来予測反省会「日本の人口は2億5千万人になる」』でも、豊かになるほど子どもが減る理由がテーマになります。これは個々の家庭の考え方を単純に説明するものではなく、世界各国でみられる人口の変化を理解するための一つの研究上の仮説です。

理研の237の国と地域の研究で分かったこと

理化学研究所と東北大学の板尾健司さんは、237の国と地域の人口データを使い、平均寿命と粗出生率(人口1,000人当たりの出生数)の関係を分析しました。研究成果は2026年7月に学術誌『Evolutionary Human Sciences』で発表されています。

人口の変化には、大きく分けて二つの傾向がみられました。一つは、医療や衛生環境の改善で寿命が延びると出生率が緩やかに下がる傾向。もう一つは、寿命が延びる一方で出生率がさらに急速に下がる傾向です。1950年以降のデータでは後者が多くみられ、先進国だけでなく、多くの新興国にも同じような特徴が表れています。

これは「長生きすることが出生率低下を直接引き起こす」という意味ではありません。社会の発展に伴う人口構造の変化に、国や地域を越えて似たパターンがあるということです。

子どもの数と教育費はなぜ関係する?

研究の数理モデルでは、家庭が限られた予算の中で、子どもの人数と教育にかける費用・期間のバランスを選ぶと仮定しました。教育を受ける期間が長くなるほど、一人の子どもにかける費用や時間も大きくなります。

かつては、幼い子どもの死亡リスクが高い社会で子どもの人数を重視する傾向がありました。一方、生存率が高まり、教育を受けることによる将来の経済的な効果が大きくなる社会では、子どもを少なくして教育を厚くする選択がモデル上で現れます。

この仕組みを踏まえると、子どもを育てる家庭の教育費負担を軽くすることが、出生率の下支えにつながる可能性があります。ただし、すべての家庭が同じ理由で子どもの人数を決めているわけではありません。

日本では子ども一人にかける育児費用が増えている

日本でも、一人の子どもにかけるお金や時間が増えたことを示す研究があります。経済産業研究所(RIETI)が2026年10月に公表した分析では、1951〜55年生まれの女性の世代と、1971〜75年生まれの世代を比較しています。

研究の定義に沿って計算した子ども一人当たりの生涯育児費用は、古い世代の約699万円から、新しい世代の約772万円へ増えていました。物価の違いを調整した実質額で、約1.11倍です。これらは研究で使用した支出区分による推計値であり、一般に言われる「子どもを育てるための総費用」が772万円で済むという意味ではありません。

同じ分析では、母親の育児時間も子ども一人当たりで約1.5倍になったと推計されています。増加した時間の多くは0〜5歳の時期に集中していました。

お金の増加は受験対策より幼児期に集中

費用の増加分を年齢別にみると、最も大きかったのは0〜5歳の保育関連費用で、増加分の約6割を占めました。大学受験に近い16〜18歳や大学期では、家計負担の費用に目立った世代間の増加は確認されていません。

そのため、日本で子育てへの投資が増えたという結果を、単純に「受験競争が激しくなったから」と説明することはできません。小さな子どもを育てる時期の時間的・経済的な負担が、重要な論点となっています。

実際の家計の厳しさを考えるうえでは、子育て世帯の平均所得と生活の負担を扱った記事も参考になります。

教育費を下げれば出生率は回復する?

理化学研究所のモデルでは、家計が負担する教育コストを下げると、教育の水準を保ちながら出生率を回復させられる可能性が示されました。国際データでも教育コストが低い地域ほど出生率が高い傾向がありました。

ただし、教育費を減らせば必ず子どもが増えると証明されたわけではありません。国際比較で見つかったのは相関であり、教育費を下げる政策が実際に出生率を上げるかという因果関係は、今後の検証が必要です。

子どもを持つかどうかには、結婚、住宅、働き方、育児への支援、個人の希望など、さまざまな事情が関係します。教育費の負担を軽くする取り組みは大切な選択肢ですが、それだけが少子化対策ではありません。

人口減少を前提として暮らしを支える発想は、スマートシュリンク(賢く縮む社会)の考え方でも紹介しています。

まとめ

豊かになるほど子どもが減る背景には、一人ひとりの教育に時間やお金をかける社会の変化が関わる可能性があります。理研の研究は教育費負担の軽減が出生率回復につながる可能性を示しました。日本の世代比較では、幼児期の育児負担が増加。ただし因果関係は未確定で、働き方や住宅など他の条件も重要です。


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