角田光代とトト、9年後に見えてきた「書くこと」と暮らすことの変化
NHK Eテレで2026年9月11日放送の『ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。角田光代とトト あれから』では、作家・角田光代さんと愛猫トトの9年後が描かれます。
2017年の出演時はマンション暮らしだった角田さんとトト。その後、暮らしの場所は戸建てへ移り、角田さん自身も連載中心だった仕事のあり方を大きく変えました。
一方のトトもシニアの年代に。変わっていく生活のなかで、角田さんが「書くこと」とトトとの時間をどう見つめるようになったのかが今回の大きなテーマです。
この記事でわかること
- 角田光代さんが連載をやめた背景
- 愛猫トトの現在と9年間の変化
- 戸建てへの引っ越し後に変わった猫との暮らし
- 2017年の「任務十八年」と新作「宇宙の片隅」のつながり
角田光代とトトの現在、2025年には15歳を迎えていた
![ねこがしんぱい」角田光代 [絵本] - KADOKAWA](https://i0.wp.com/cdn.kdkw.jp/cover_1000/322410/322410000166_01.webp?w=1256&ssl=1)
角田光代さんの愛猫トトは、アメリカンショートヘアのメスです。
2017年の『ネコメンタリー』初登場時には7歳。漫画家・西原理恵子さんの家で生まれ、飲み会をきっかけに角田さんの家族になったという少し変わった出会いを持っています。
2025年10月にKADOKAWAが公開した角田さんへのインタビューでは、トトは15歳。若い頃とは違い、カメラを向けられても背を向けることが増えたと角田さんが語っています。
また、年齢を重ねて腎臓の状態も気になるようになり、水を飲ませることや食事にも気を配る生活になりました。
2017年の元気なトトから9年。今回の番組で「シニアの年代にさしかかった愛猫」と紹介されている背景には、こうした時間の積み重ねがあります。
角田光代が連載をやめた理由は「自分が書きたいもの」を優先するため
今回の番組で特に注目したいのが、角田光代さんの仕事に対する大きな変化です。
角田さんは長年、連載小説、短編、エッセイ、書評など数多くの締め切りを抱えながら執筆を続けてきました。
本人によれば、多い時期には1か月に30本ほどの仕事を抱えていたこともあったそうです。それでも締め切りを守ることを自分の主義としてきました。
そんな角田さんが、次第に「依頼されたものを書く」という働き方から離れる決断をします。
2025年の『方舟を燃やす』吉川英治文学賞受賞時には、この作品を機に、出版社などから依頼を受けて小説を書くことをやめたことを明らかにしました。
これからは、自分が書きたいものを、書きたいタイミングで書いていく。
今回の『ネコメンタリー』で紹介される「自分の書きたいものだけ自分のペースで書く」という現在の姿勢は、突然始まったものではなく、長い作家生活を経てたどり着いた選択だったことがわかります。
『方舟を燃やす』が連載作家としての大きな節目になった
その転換点となった作品が、長編小説『方舟を燃やす』です。
『方舟を燃やす』は、口裂け女やノストラダムスの大予言、インターネット上で広がる情報などを通して、人が「信じること」を描いた作品です。
角田さんは、この作品について「締め切りがあって苦労した最後の連載」と語っています。
長年、依頼や締め切りに応えながら作品を書き続けてきた角田さんにとって、これは単に連載を1本終えたということではありません。
仕事が来るから書くのではなく、自分の内側から「書きたい」と思ったものを書く。
作家として30年以上活動してきた角田さんが、50代後半になって仕事との距離を組み直した大きな節目といえます。
執筆時間は決めても「終わる時間」を大切にしてきた
角田さんは、もともと仕事と生活をはっきり区切るタイプの作家でもあります。
2023年の本人によるエッセイでは、自宅近くの仕事場へ通い、以前は午前9時から午後5時、近年は午前8時30分から午後4時30分ごろまで執筆していると明かしています。
特に重視しているのは、仕事を始める時間よりも終わる時間を決めること。
忙しいときには開始時間を早めても、夕方以降まで延々と仕事を続けない。その生活を20年以上続けてきたとしています。
もともとオンとオフを分けてきた角田さんが、さらに仕事そのものの量や受け方まで見直したことになります。
今回の番組に登場する「自分のペースで書く」という言葉には、単なるスローライフではなく、これまで積み上げてきた働き方を自分自身で選び直した意味があります。
マンションから戸建てへ、トトの世界も広がった
9年間で変わったのは仕事だけではありません。
角田さんとトトはマンションから戸建てへ引っ越しました。
角田さんの猫エッセイ第2弾『明日も一日きみを見てる』には、戸建てへ移ってからのトトとの生活が描かれています。
新しい家では、トトが虫を捕まえたり、外に現れる茶トラや黒猫を気にしたりと、マンション時代とは違う世界が広がっていきました。
猫との生活を通じて、角田さん自身も家の外にいる猫まで意識するようになったといいます。
トトという1匹の猫との暮らしが、家の中だけではなく周囲を見る視線まで変えていったのです。
パンデミック後はトトが帰宅時間を気にするようになった
角田さんとトトの関係にも変化がありました。
パンデミックの期間中、角田さんたちが長時間家にいる生活が続いたことで、トトにとって「人が家にいる」状態が当たり前になったそうです。
その後、外出や会食が戻ってくると、角田さんの帰宅が遅い日に大きな声で不満を訴えるようになりました。
2025年のインタビューで角田さんは、午後10時ごろ帰宅するとトトが怒ったように鳴くことがあると話しています。
若い頃のトトを角田さんが一方的に観察していた関係から、年齢を重ねた現在は、お互いの生活リズムが強く結びついた関係へ。
9年という時間が、その距離感を少しずつ変えてきたことがわかります。
2017年「任務十八年」から2026年「宇宙の片隅」へ
『ネコメンタリー』では、出演する作家が猫をテーマに作品を書き下ろすことも大きな特徴です。
2017年の角田光代さんとトトの回で書かれた作品は、「任務十八年」でした。朗読を担当したのは戸田恵梨香さんです。
そして9年後となる今回、角田さんが番組のために新たに書き下ろした短編が「宇宙の片隅」。朗読は宮澤エマさんが担当します。
若かったトトとの暮らしを描いた2017年から、シニアになったトトと暮らす2026年へ。
作品の具体的な内容について放送前に確認できる情報は限られていますが、同じ作家と同じ猫を9年後に再び記録し、新たな短編まで書き下ろすという構成そのものが今回ならではです。
放送情報と角田光代の猫関連本
放送情報は次の通りです。
- 番組名:『ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。角田光代とトト あれから』
- 放送局:NHK Eテレ
- 放送日:2026年9月11日
- 放送時間:22:30〜23:00
- 出演:角田光代
- 朗読:宮澤エマ
- 語り:森下絵理香
- 書き下ろし短編:「宇宙の片隅」
角田さんとトトのこれまでを知るなら、猫との日常を描いたエッセイも直接つながる作品です。
『明日も一日きみを見てる』は2026年3月に文庫版が発売され、戸建てへ引っ越した後のトトとの暮らしがまとめられています。
まとめ
角田光代さんとトトが『ネコメンタリー』に登場してから9年。
その間に住まいはマンションから戸建てへ変わり、トトはシニアになりました。そして角田さん自身も、数多くの締め切りに応え続ける働き方から、自分が書きたいものを自分のタイミングで書く生活へと舵を切っています。
『方舟を燃やす』を最後の連載と位置づけたことは、長い作家生活のなかでも大きな転換点でした。
一方で、トトとの生活は今も角田さんの創作と密接につながっています。2025年にはトトとの暮らしから絵本『ねこがしんぱい』も生まれました。
そして2026年、新たに書かれた「宇宙の片隅」。
9年という時間を経て変わったものと、今も変わらずそばにあるもの。その両方が見えてくる30分になりそうです。
参考リンク
- KADOKAWA「明日も一日きみを見てる」公式書誌ページ — 戸建てへの引っ越し後のトトとの暮らしや2026年文庫版の情報を確認できます。
- KADOKAWA・ヨメルバ 角田光代さんインタビュー — 15歳になったトト、健康への心配、パンデミック後の変化などを角田さん本人が語っています。
- 文藝春秋PLUS「執筆は9時〜5時、絶対に残業しない」 — 角田さん本人が執筆時間や仕事への向き合い方を紹介しています。
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