雨を「すぐ流す」から「いったん受け止める」へ、身近に広がる雨庭
2026年9月16日放送のNHK「あさイチ」では、身近な治水対策として広がる「雨庭(あめにわ)」が紹介されます。
雨庭は、単に雨に強い植物を植えた庭ではありません。屋根や道路などに降った雨水を小さなくぼ地へ集め、いったん受け止めてからゆっくり地中へ浸透させる仕組みです。国も「流域治水」の一環として、雨水を貯留・浸透させるグリーンインフラの活用を進めています。
しかも、大規模な公共工事だけの話ではありません。個人宅の庭でも取り入れられる方法が実践され始め、家庭向けの手引きや相談窓口を設ける地域も出てきました。
この記事でわかること
- 雨庭が都市型水害対策になる仕組み
- 家庭で雨庭をつくる基本的な考え方
- 普通の花壇や庭との違い
- 雨庭をつくる前に確認しておきたい注意点
雨庭は雨水を一時的にため、ゆっくり地面へ浸透させる庭
公式動画:武蔵野市「雨庭づくり体験ワークショップ~雨庭ができるまでの記録映像~」
雨庭の大きな特徴は、雨水をそのまま側溝や下水道へ流さないことです。
京都市は雨庭を「地上に降った雨水を下水道に直接放流することなく、一時的に貯留し、ゆっくり地中に浸透させる構造を持った緑地」と説明しています。雨水の流出を抑えるだけでなく、緑化やヒートアイランド現象の緩和なども期待されています。
都市部では道路や駐車場、住宅などが増え、地面がアスファルトやコンクリートで覆われています。
土の地面なら染み込んでいた雨も、舗装された場所では短時間に側溝や下水道へ流れます。集中豪雨の際に大量の雨水が一気に集まれば、排水能力を上回って道路などが冠水する原因のひとつになります。
そこで雨庭が、小さな「雨水の受け皿」になります。
雨が降ったときだけ一時的に水をため、時間をかけて土へ染み込ませる。雨を一気に下流へ送らないことで、下水道や河川へ流れ込む水のピークを少しずつ抑える考え方です。
国土交通省も、河川や下水道の整備だけでなく、地域全体で雨水の貯留・浸透機能を高めることを「流域治水」の取り組みに位置づけています。
家庭の雨庭は約1坪から手づくりする方法もある
雨庭という名前から大きな日本庭園を想像するかもしれませんが、必ずしも広い土地が必要なわけではありません。
世田谷トラストまちづくりでは、個人宅でも取り組める「自分でもできる雨庭」を紹介しています。
実際に公開されている手引きでは、約3.3平方メートル、つまり約1坪の雨庭をモデルに、ホームセンターなどで入手できる材料を使った手づくり方法が紹介されています。
基本になる考え方はシンプルです。
- 屋根や地面から雨水が流れてくる場所を確認する
- 雨水を受け止められる小さなくぼ地をつくる
- 水が地中へ浸透しやすい状態を整える
- 雨庭に適した草木を植える
- 大雨時に水があふれる場合の流れ先も考える
普通の花壇との大きな違いは、「植物を植える場所」だけでなく、「雨水を受け止める場所」として設計することです。
世田谷で進められている家庭向け雨庭も、ガーデニングの延長として楽しみながら雨水対策につなげる考え方になっています。植物を植えることで、生きもののすみかづくりにもつながります。
雨庭だけで水害を完全に防げるわけではない
ここは大切なポイントです。
雨庭を1か所つくったからといって、大規模な豪雨による浸水を完全に防げるわけではありません。
雨庭は、河川整備、下水道、調整池、雨水タンクなどと組み合わせながら、地域全体で雨水を少しずつ受け止める対策のひとつです。
国土交通省が進める流域治水も、河川管理者や自治体だけでなく、企業や住民を含めた流域全体で水をため、染み込ませる機能を高めていく考え方です。
1軒の庭では小さな容量でも、住宅、公園、学校、道路脇など多くの場所で雨水を一時的に受け止めれば、一気に下水道へ流れ込む雨を分散できます。
いわば、大きな設備を1か所に造るだけではなく、街の中に小さなスポンジをたくさん増やしていく発想です。
京都では街角の小さな緑地にも雨庭が広がっている
雨庭を積極的に整備している自治体のひとつが京都市です。
京都市では2017年度から、庭園文化を生かしながら雨水を一時的にため、地中へ浸透させる雨庭の整備を進めてきました。2026年4月時点でも市内各地に整備箇所があり、新しい雨庭も増えています。
特徴的なのは、公園の中だけではないことです。
交差点や道路沿いなど、これまでなら単なる植栽スペースになっていたような場所にも雨庭が整備されています。
雨水対策というと、巨大な地下貯留槽や堤防など大掛かりな施設をイメージしがちです。しかし雨庭は、街の景観を保ちながら水を受け止める機能を持たせられます。
普段は緑を楽しむ庭。
大雨が降れば水を受け止める設備。
この2つの役割を同じ場所に持たせられる点が、雨庭ならではの特徴です。
2026年には公園や住宅地でも雨庭づくりが活発に
雨庭は京都だけの取り組みではありません。
東京都武蔵野市では2026年8月、雨庭づくり体験ワークショップの記録映像を公開しています。杉並区でも公園で区民参加型の雨庭づくりを行い、家庭でも取り組める水害対策のひとつとして紹介しています。
八王子市でも雨庭を活用した取り組みが進められています。
公園内では園路から流れてくる雨水をくぼ地へ導き、土へ浸透させる構造を整備。植物の根による土壌改良や浸透機能の向上も期待されています。
こうして見ると、雨庭は単なる園芸の流行ではありません。
豪雨対策、緑化、生物多様性、地下水の涵養などを同じ場所で実現しようとする「グリーンインフラ」の具体例として広がっています。
雨庭を自宅につくる前に確認したいこと
家庭で始められる雨庭ですが、「とりあえず庭に穴を掘ればいい」というものではありません。
特に重要なのが、自宅周辺で雨水がどこから来て、どこへ流れているのかを確認することです。
土地の高さや土質、排水状態、建物との位置関係によって適したつくり方は変わります。
東京都の紹介では、住宅で雨庭を計画する際、環境条件や建物の構造、雨水の流れを把握したうえでプランニングする必要性が説明されています。世田谷では2024年度から家庭向けの相談を試行し、必要に応じて専門家を派遣する仕組みも設けています。
特に、雨水が建物側へ流れてしまう場所や、もともと水はけが極端に悪い土地では慎重な判断が必要です。
まずは雨の日に庭を見て、「水がどこを通っているか」を観察するところから始めるのが現実的です。
雨庭と雨水タンクを組み合わせる方法もある
雨庭と相性がいい設備が雨水タンクです。
屋根に降った雨を雨どいからタンクへため、一時的に保管します。その水を庭の水やりなどに利用すれば、雨が降った瞬間に下水道へ流れ込む量を抑えられます。
さらに、タンクからあふれた水を雨庭へ導くという考え方もあります。
世田谷トラストまちづくりも、雨庭と雨水タンクを組み合わせることで、雨水利用や災害時の活用にもつながると紹介しています。
「ためる」「使う」「染み込ませる」を組み合わせることで、降った雨をできるだけ敷地内で活用するわけです。
雨庭が注目される背景には「街全体で水を受け止める」という考え方がある
これまで都市の雨水対策は、「できるだけ早く雨を排水する」という考え方が中心でした。
しかし短時間に大量の雨が降れば、排水先となる下水道や河川にも限界があります。
そこで近年重視されているのが、雨をすぐ排水するだけではなく、降った場所の近くで一時的にためることです。
国土交通省は、都市部の緑地が持つ雨水の貯留・浸透機能を生かすことや、雨庭などのグリーンインフラを流域治水と組み合わせていく方針を示しています。
家庭の小さな庭、公園の植栽、道路沿いの緑地。
それぞれを見ると小規模でも、街全体へ広げれば雨を受け止める場所は増えていきます。
「あさイチ」で取り上げられる雨庭の面白さは、まさにここにあります。
防災設備というと自分では手を出しにくい印象がありますが、雨庭なら普段のガーデニングと防災を同じ場所で両立できる可能性があります。
まとめ
雨庭は、屋根や地面に降った雨を小さなくぼ地へ集め、一時的にためながらゆっくり地中へ浸透させる庭です。
都市型水害そのものを雨庭だけで防げるわけではありませんが、下水道や河川へ雨水が一気に流れ込むのを抑える「流域治水」のひとつとして、各地で整備が広がっています。
公共施設だけでなく、約1坪から始められる家庭向けの雨庭づくりも紹介されるようになりました。
庭をきれいにするだけでなく、降った雨を自分の敷地で少し受け止める。雨庭は、身近な庭の役割を防災まで広げる新しい選択肢になっています。
参考リンク
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