ギル・マロが名古屋工業大学からSAZOを立ち上げ世界の買い物を変えるまで
2026年9月30日深夜(10月1日午前0時15分)放送の東海テレビ「START UP!! 最新技術で世界を変える!大学発スタートアップSP」では、名古屋工業大学発のスタートアップ「株式会社SAZO」と代表取締役CEOのギル・マロさんが取り上げられます。SAZOが開発しているのは、言語や決済、送料、関税といった海外ショッピングの面倒な手続きをAIで減らし、国内通販に近い感覚で海外商品を購入できる越境ECサービスです。
韓国出身のギルさん自身が海外通販の不便さを経験したことから生まれたアイデアは、名古屋工業大学での起業家教育やビジネスコンテストを経て事業化されました。2026年7月にはシリーズAで総額32.1億円を調達し、日本と韓国を起点に世界市場へ事業を広げています。
この記事でわかること
- SAZOがどんなAI越境ECスタートアップなのか
- ギル・マロさんがSAZOを考案した原体験
- URLから海外商品を購入できる仕組み
- 楽天との連携や32.1億円調達後の事業展開
SAZOは名古屋工業大学発のAI越境ECスタートアップ

出典:SAZO公式サイト
株式会社SAZOは、AIを活用した越境ECプラットフォーム「SAZO」を開発・運営する名古屋工業大学発のスタートアップです。2023年10月に設立され、本社を名古屋市に置き、代表取締役CEOをギル・マロさんが務めています。
目指しているのは、海外から商品を買うときに発生する「言語」「決済」「配送」といった国境の壁をテクノロジーで小さくすることです。
海外サイトで欲しい商品を見つけても、日本への発送に対応していなかったり、送料や関税が分かりにくかったり、現地の決済方法しか利用できなかったりすることがあります。
SAZOでは、AIを使って商品情報の翻訳、為替、国際送料、関税などを処理し、海外通販を国内ECに近い感覚で利用できる仕組みを構築しています。名古屋工業大学も、AIが為替レート・関税・配送料・手数料を計算し、複雑な購入ではAIエージェントが翻訳や交渉を支援するサービスとして紹介しています。
現在も名古屋工業大学キャンパス内のインキュベーション施設に名古屋オフィスを構え、研究開発と事業運営を続けています。
ギル・マロが海外購入の不便さからSAZOを着想
SAZOの出発点は、ギル・マロさん自身の買い物体験でした。
韓国で育ったギルさんは、子どものころからプログラミングやパソコンの自作が好きで、海外のECサイトから部品を購入していました。しかし、海外通販では発送代行が必要になったり、商品が税関で止まったり、購入時には分からなかった費用が後から発生したりすることがありました。
その後、日韓共同理工系学部留学生プログラムを利用して名古屋工業大学へ進学。大学1年時にはコロナ禍の影響もあり休学し、韓国へ戻って兵役に就いた時期もあります。
日本と韓国を行き来する中でも、海外の商品を購入するときの不便さは変わりませんでした。
言語が違う。通貨が違う。送料が分かりにくい。関税の計算も必要になる。
ギルさんは、こうした海外通販に共通する複雑な作業をAIで解決できないかと考えました。
そこから生まれたのが、海外の商品をもっと簡単に購入できる「SAZO」の原型です。単に韓国の商品を日本で購入するサービスではなく、最終的には世界中の商品を国境を意識せず購入できる仕組みを目指しています。
URLから言語・決済・関税・物流の壁を減らすSAZOの仕組み
SAZOの特徴は、ユーザーに海外通販特有の複雑な手続きをできるだけ意識させない設計にあります。
海外ECの商品情報を取り込み、AIによって翻訳や価格表示を行うだけでなく、為替、送料、関税、手数料なども計算。購入後には商品の検品、梱包、海外配送まで一連の流れを支援します。
SAZOは、AIによる配送費・関税・手数料の予測精度を約95%と説明しています。商品翻訳から現地価格表示、決済、通関までAIエージェントで支援する仕組みです。
海外の商品URLをもとに購入を進められる仕組みも、ギルさん自身がエンジニアとして開発してきた技術とつながっています。
海外ECサイトはサイトごとにページ構成や商品情報の表示方法が異なります。
そこでAIにページの文脈を理解させ、商品名や価格など必要な情報を取り出すことで、特定のECサイトだけに依存しない越境購入の仕組みへ発展させてきました。
つまりSAZOが解決しようとしているのは、単なる「翻訳」の問題ではありません。
商品を探すところから、価格確認、決済、関税、物流、商品を受け取るところまでを一続きにすることがサービスの核になっています。
ビジネスコンテストの経済産業大臣賞から2023年の起業へ
ギル・マロさんが起業へ進む転機の一つになったのが、名古屋工業大学でのアントレプレナーシップ教育でした。
復学後、大学の起業部「NaSH」に参加。そこで東海地区の大学を中心とした起業家育成プログラム「Tongali」のビジネスコンテストへ挑戦します。
2023年6月の「Tongaliビジネスプランコンテスト2023」では、「家で簡単に韓国の買い物ができるSAZO」を発表し、NICT賞や愛知県賞などを獲得しました。
同年には「GLOW Pitch2023」で最優秀賞も受賞。名古屋工業大学の記録にも、チームSAZOによる「AIを用いたワンクリック越境ECプラットフォーム」として残っています。
そして学生ビジネスの全国大会「キャンパスベンチャーグランプリ」では、SAZOチームが2023年度全国大会の経済産業大臣賞・ビジネス大賞を受賞しました。
こうした起業家教育やコンテストを通じて事業計画を磨き、資金調達にも取り組み、2023年10月に株式会社SAZOを設立しました。
韓国から国費留学生として来日した学生が、海外通販で感じた身近な不便をアイデアに変え、大学で仲間を集め、実際の会社へ発展させていったことになります。
楽天市場と楽天ラクマとの連携で日本の商品を海外へ広げる
SAZOは当初の韓国商品を日本から購入するサービスだけでなく、日本の商品を海外へ届ける方向にも事業を広げています。
大きな動きの一つが楽天グループとの連携です。
2026年4月には「楽天市場」と韓国市場向けの販促活動で連携を開始。商品情報APIを接続し、韓国のユーザーがSAZOを通じて楽天市場の商品を購入できる環境を構築しました。
さらに2026年6月24日には「楽天ラクマ」とも連携。
韓国在住のユーザーがSAZOを通じて楽天ラクマの商品を閲覧・購入できるようになりました。
楽天ラクマの商品画像や価格、サイズ、色などはAPI経由でSAZOへ反映され、購入後はSAZOが日本国内で商品を購入。検品や梱包を行ったうえで韓国などの海外住所へ配送します。
複数店舗の商品をまとめて発送する仕組みや、商品情報を韓国語へ自動翻訳する機能なども提供されています。
この連携は、SAZOの役割が「日本人が海外の商品を買うためのサービス」だけではなくなっていることを示しています。
日本のアニメ商品、フィギュア、ファッションなどを海外の利用者へ届けるインフラとしても事業を拡大しています。
シリーズAで32.1億円を調達しグローバル展開を加速
SAZOの成長を象徴するのが、2026年7月22日に発表したシリーズAでの大型資金調達です。
日本郵政キャピタル、鈴与、NAVER、D4Vなどからの出資と金融機関からの借入を合わせ、シリーズAで総額32.1億円を調達しました。
内訳は株式による資金調達が16.6億円、金融機関からの借入が15.5億円。これにより累計調達額は39.7億円となりました。
SAZOは調達資金を、
- AIを活用した越境EC技術の研究開発
- グローバル物流ネットワークの構築
- 海外展開
- AIエンジニアや事業開発などの採用
- マーケティング強化
などへ投じる計画です。
事業の成長も進んでいます。
2026年度上半期には月間取引額が約7倍に増加し、海外売上比率は75%を超えました。日本版に加えて韓国版を展開し、さらに米国を含む世界各地への拡大を進めています。
SAZOが次に目指しているのは、利用者が海外ECの複雑さそのものを意識しなくても済む「エージェンティック・コマース」の構築です。
AIが商品情報を表示するだけではなく、情報探索、決済、物流、関税処理などを判断・実行し、海外ショッピングそのものを自動化する方向へ進もうとしています。
まとめ
株式会社SAZOは、名古屋工業大学から生まれたAI越境ECスタートアップです。
代表のギル・マロさん自身が海外通販で経験した、言語、送料、関税、決済、配送の不便さがサービス開発の原点になりました。大学の起業部やビジネスコンテストでアイデアを磨き、2023年10月に会社を設立しています。
その後、楽天市場や楽天ラクマとの連携まで事業を広げ、2026年にはシリーズAで32.1億円を調達。累計調達額は39.7億円となりました。
9月30日深夜の「START UP!!」で注目したいのは、AIという技術そのものだけではありません。
「海外の商品が欲しいのに、買うまでが面倒」という自分自身の経験を、国境を越えたショッピングの仕組みに変えたことが、ギル・マロさんとSAZOの大きな特徴です。
参考リンク
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