東陽精機が次の柱として取り組む「自動化」と移動式ロボット台車
2026年9月29日放送のテレビ愛知『開発現場へ行こう!』に登場するのが、愛知県豊田市の東陽精機株式会社です。
東陽精機は、オートマチックトランスミッションをはじめとする自動車用金属部品を長年製造してきた会社です。しかし現在、同社が次の成長分野として力を入れているのが「自動化」。番組では、その象徴となる「移動式ロボット台車」などの技術開発が取り上げられます。
この記事でわかること
- 東陽精機が開発する移動式ロボット台車とは何か
- なぜ自動車部品メーカーが「自動化」へ進んでいるのか
- 東陽精機が得意とする1/1000mm単位の切削加工
- 1947年創業から現在の自動化事業につながる歩み
移動式ロボット台車を開発し取引先へ提案

東陽精機の新しい挑戦として注目されるのが、「移動式ロボット台車」などを使った自動化技術です。
テレビ愛知は9月29日放送回について、東陽精機が自動車のオートマチックトランスミッションなどに使われる金属部品を切削加工する企業であり、現在は移動式ロボット台車をはじめとする自動化技術を開発し、取引先へ提案していると紹介しています。
ここで重要なのは、東陽精機が単に自社工場を自動化しているだけではないことです。
これまで社内で蓄積してきた自動化の知識や、グループ会社が持つ生産設備の設計・製作技術を生かし、顧客企業が抱える製造現場の課題そのものを解決する技術へ発展させようとしているところに大きな転換があります。
なぜ東陽精機は自動車部品から「自動化」へ進むのか
東陽精機自身が、今後の重要テーマとして明確に掲げているのが「自動化」です。
背景として同社が挙げているのが、少子高齢化による人手の問題や、海外生産を国内へ戻す動きなど、製造業を取り巻く構造変化です。
人を増やすだけでは対応できない製造現場で、機械やソフトウェア、ロボットを組み合わせて生産を支える。その技術を自社だけではなく、他社へ提供できる事業へ広げようとしています。
しかも東陽グループでは、今回突然ロボット開発を始めたわけではありません。
長年、自社の製造現場で自動化に取り組んできたほか、グループ会社の東陽エンジニアリングは工作機械や産業用機械、自動組立設備などを設計・製造してきました。
その延長線上にあるのが、今回注目される移動式ロボット台車です。
部品を高精度で削る会社から、「工場全体をどう効率よく動かすか」を提案する会社へ。東陽精機が進もうとしている方向が見えてきます。
本業はオートマチックトランスミッション部品の切削加工
東陽精機の本業は、自動車用金属部品の製造です。
特に主力となっているのが、株式会社アイシンのオートマチックトランスミッションに使われる部品。ほかにも駆動部品、制動部品、エンジン部品などを手掛けています。
製品として公式サイトに掲載されているのは、
- インナードラム
- キャリヤ
- プラネタリリング
- レースアウター
- ハブタービン
などです。
完成車を見ても、一般の人が「東陽精機の部品だ」と気付くことはほとんどありません。
しかし、自動車の内部で動き続ける部品だからこそ、高い寸法精度と品質が要求されます。
東陽精機では金属を刃物で削る「切削加工」を得意としており、その精度は1/1000mm、つまりミクロン単位が求められる世界です。
1/1000mmの精度を守る「工程内で不良を出さない」ものづくり
自動車部品では、わずかな加工誤差が部品の動きや耐久性に影響します。
そのため東陽精機では、各生産ラインに品質管理台を設け、一定時間ごとに製品を抜き取って検査しています。
同社が生産システムの基本として掲げているのが、「工程内で不良品を出さないこと」です。
この品質への取り組みは長い歴史を持っています。
1995年には品質管理に関するデミング賞実施賞を受賞。2000年にはISO9001、2023年には自動車産業向け品質マネジメント規格IATF16949の認証を本社工場で取得しています。
ロボットや自動化というと新しい技術ばかりに目が向きますが、その土台にあるのは、何十年も続けてきた精密加工と品質管理です。
始まりは1947年、刈谷市の「犬飼鉄工所」
東陽精機の歴史は、終戦から間もない1947年3月に始まりました。
愛知県刈谷市東陽町で「犬飼鉄工所」として創業し、現在の豊田自動織機にあたる豊田自動織機製作所の協力会社となりました。
その後、会社は自動車産業の成長とともに事業を広げていきます。
- 1947年:刈谷市で犬飼鉄工所を創業
- 1955年:現在のアイシンにつながる新川工業の協力工場となり鋳鉄部品加工を開始
- 1965年:東陽精機株式会社へ社名変更
- 1966年:豊田市に現在の本社につながる豊田工場を新設
- 1969年:オートマチックトランスミッション部品の加工を開始
- 1979年:設計部門を分離し東陽エンジニアリング株式会社を設立
- 1994年:アメリカに現地法人を設立
- 2011年:中国に現地法人を設立
- 2014年:愛知県東浦町に東浦工場を開設
- 2017年:TOYO三重を設立
- 2023年:本社工場がIATF16949認証を取得
現在の主力であるオートマチックトランスミッション部品の加工を始めたのは1969年。半世紀以上にわたり、自動車部品の加工技術を磨いてきたことになります。
東陽エンジニアリングが支えてきた「機械を作る力」
東陽精機の自動化事業を考えるうえで欠かせないのが、グループ会社の東陽エンジニアリング株式会社です。
東陽エンジニアリングは、工作機械、産業用機械、治工具などの設計・製造を担当しています。
手掛けてきた設備には、
- 自動車用エンジン部品加工用トランスファーマシン
- 自動車用ブレーキ組み付け専用機
- 回生ブレーキ自動組立ライン
- マスターシリンダー組立ライン
- ブレーキブースター自動組立ライン
などがあります。
つまり東陽グループには以前から、**「部品を作る技術」と「その部品を作るための設備を作る技術」**の両方がありました。
さらに東陽エンジニアリングでは、顧客ごとに異なる要望を設計へ落とし込み、専用設備をゼロから作り上げています。
この蓄積が、ロボットを含む高度な自動化へ進む大きな強みになっています。
自動化は「人を減らす」だけの技術ではない
製造業の自動化というと、「人の仕事を機械に置き換える」というイメージを持ちやすいかもしれません。
しかし東陽精機が掲げる自動化の背景には、それだけではない課題があります。
少子高齢化によって製造現場の担い手が減る一方、日本国内で製造を続けるためには高い生産性と品質を維持する必要があります。
さらに工場では、
- 部品を運ぶ
- 機械へセットする
- 加工する
- 組み立てる
- 検査する
- 次の工程へ送る
といった多数の工程が連続しています。
1台の機械だけを高速化しても、前後の工程が滞れば工場全体の効率は上がりません。
そこで重要になるのが、機械、ロボット、搬送設備、ソフトウェアを組み合わせ、工程全体を自動化する考え方です。
東陽精機が機械設計だけではなく、ソフトウェアやロボット分野の人材を求めていることからも、自動化を将来の大きな技術分野として位置付けていることが分かります。
東陽精機の会社規模と場所
現在の東陽精機は、豊田市に本社工場、知多郡東浦町に東浦工場を構えています。
会社概要は次の通りです。
- 会社名:東陽精機株式会社
- 代表取締役社長:大塚穣
- 創業:1947年3月
- 本社:愛知県豊田市高岡本町秋葉137番地1
- 東浦工場:愛知県知多郡東浦町大字藤江字前新田3番地6
- 資本金:4,801万円
- 売上高:186億円(2024年)
- 従業員数:350人(2024年)
- 事業内容:自動車金属部品の製造
- 主要取引先:アイシン、アイシン高丘、アイシン福井、アイシン機工など
国内だけではなく、アメリカや中国にもグループの生産拠点を持っています。
80年近い自動車部品技術がロボット時代につながる
東陽精機の興味深いところは、まったく別分野へ突然参入したわけではない点です。
1947年の創業以来、金属加工を続ける。
自動車部品を作る。
高精度な切削加工を磨く。
部品を作るための専用機を自社グループで開発する。
生産ラインを自動化する。
そして、その自動化技術を外部の企業へ提案する。
一つひとつを見ると別の事業に見えますが、実際には長年積み重ねてきたものづくりの延長線上にあります。
2026年9月29日の『開発現場へ行こう!』で紹介される「移動式ロボット台車」は、その転換を象徴する技術といえます。
まとめ
東陽精機株式会社は、愛知県豊田市に本社を置く1947年創業の自動車金属部品メーカーです。
主力はオートマチックトランスミッションなどに使われる部品で、1/1000mm単位の精度が要求される切削加工を長年手掛けてきました。
しかし現在、同社が未来の軸として掲げているのが「自動化」です。
自社工場で培った生産ノウハウと、東陽エンジニアリングが持つ機械設計・自動組立設備の開発力を組み合わせ、移動式ロボット台車をはじめとする技術を取引先へ提案する段階まで進んでいます。
自動車部品を高精度に「作る会社」から、工場の生産そのものを「動かす会社」へ。
『開発現場へ行こう!』では、東陽精機が約80年にわたり培ってきたものづくりの力が、ロボットや自動化という次の時代へどうつながっているのかが注目されます。
参考リンク
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