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鶴岡の煎じきゅうりの作り方と酸っぱくない理由|小雪と発酵おばあちゃん

レシピ

熱い漬け汁を毎日かけ直す、鶴岡の不思議なきゅうり漬け

山形県鶴岡市に受け継がれてきた「煎じきゅうり」が、2026年9月10日放送のNHK Eテレ『小雪と発酵おばあちゃん』で紹介されます。

材料は、きゅうり、水、塩という驚くほどシンプルな組み合わせ。それなのに普通の塩漬けとは作り方がかなり違います。最大の特徴は、漬け汁を毎日取り出して沸騰させ、熱い状態できゅうりへ戻すことです。

時間をかけて漬けるため見た目や風味には古漬けらしい深みが出ますが、強い酸っぱさは出にくいという独特の仕上がりになります。番組を見て「どうやって作るの?」「なぜ酸っぱくならないの?」と気になった人向けに、作り方から鶴岡の食文化、現在進んでいる科学的な研究までまとめました。

この記事でわかること

  • 煎じきゅうりが山形県鶴岡市で受け継がれてきた漬物であること
  • 熱い漬け汁を毎日かけ直す独特の作り方
  • 古漬けのようなのに酸っぱくなりにくい理由
  • ホットサンドなど現代風の食べ方と家庭で作るときのポイント

煎じきゅうりは鶴岡・大鳥地区に伝わる漬物

煎じきゅうり完成/さくたえ | Snapdish[スナップディッシュ] (ID:9uHOba)

出典:SnapDish「煎じきゅうり完成」

煎じきゅうりは、山形県鶴岡市、とくに山あいの大鳥地区に伝えられてきた発酵食・保存食です。

鶴岡と聞くと、だだちゃ豆や温海かぶなどを思い浮かべる人も多いかもしれません。実際、この地域には長い年月をかけて守られてきた在来作物や郷土料理が数多く残っています。

鶴岡市は山、庄内平野、日本海まで非常に変化に富んだ土地です。鶴岡食文化創造都市推進協議会によると、地域では60種類以上の在来作物が確認され、2014年には日本で初めてユネスコ創造都市ネットワークの「食文化」分野に加盟しました。

煎じきゅうりも、そんな土地の暮らしの中から生まれた料理のひとつです。

特別な調味料をたくさん使うのではなく、夏に採れるきゅうりを塩と水で長く楽しめる形にする。そのために考えられた方法が、「漬け汁を煎じる」という珍しい工程でした。

「煎じる」のはきゅうりではなく漬け汁

名前だけ聞くと、きゅうりを鍋で煮る料理のようにも思えます。

ところが、煎じきゅうりで繰り返し加熱するのはきゅうりそのものではなく漬け汁です。

基本となる材料は、

  • きゅうり
  • 水
  • 塩

だけです。

番組で紹介された製法では、きゅうりを洗ってヘタを取り、容器へ並べます。水に塩を溶かした漬け汁を沸騰させ、熱いままきゅうりへ注ぎ、上から重石をします。

ここまでも少し変わっていますが、本番は翌日からです。

きゅうりから出た水分を含む漬け汁だけを取り出し、鍋でもう一度沸騰させます。そして熱い漬け汁を再びきゅうりへ。

翌日も同じ作業をします。

さらに翌日も繰り返します。

この「漬け汁を沸騰させて戻す」作業を毎日続け、1週間ほどかけて仕上げるのが煎じきゅうりです。番組公式の紹介でも、最初に沸騰した漬け汁をかけ、その後も毎日同じ作業を続ける製法が大きな特徴として紹介されています。

つまり「煎じきゅうり」の「煎じ」は、この漬け汁を繰り返し熱する作業から来ていると考えると分かりやすいですね。

煎じきゅうりの基本的な作り方

番組で紹介された流れを家庭向けに整理すると、次のようになります。

まず新鮮なきゅうりをよく洗い、両端を整えます。

きゅうりが入る深めの容器を用意し、きゅうりを並べます。

鍋で水と塩を加熱し、塩をしっかり溶かして沸騰させます。

その熱い漬け汁をきゅうりへ注ぎ、きゅうりが浮かないよう重石をして漬けます。

翌日、きゅうりは容器に残したまま漬け汁だけを鍋へ移します。

漬け汁を再び沸騰させ、熱いうちにきゅうりへ戻します。

そして再び重石をします。

この工程を毎日繰り返し、およそ1週間が食べ頃の目安です。実際に番組のレシピを参考に作った人からも、1週間で完成させた記録があります。

一般的な浅漬けなら数時間から一晩なので、それに比べるとかなり手間がかかります。

ただ、切ったり混ぜたりする作業が毎日あるわけではありません。実際には「漬け汁を鍋に移す→沸かす→戻す」が日々の仕事です。

昔の人にとっては、このひと手間がきゅうりを長くおいしく食べるための生活の知恵だったのでしょう。

古漬けのようなのに酸っぱくなりにくい理由

煎じきゅうりで特に面白いのが味です。

普通の乳酸発酵する漬物では、時間がたつにつれて乳酸菌が増え、乳酸が作られることでpHが下がります。その結果、徐々に酸味が強くなります。

ところが煎じきゅうりでは、漬け汁を毎日のように沸騰させます。

番組では、この工程によって乳酸菌があまり増えないため、長く漬けても酸っぱくなりすぎないと説明されています。

発酵を完全に止めてしまうわけではなく、微生物の増え方を熱によって繰り返し抑えながら漬けていくところが面白い点です。

そのため、浅漬けのような若い味とも、乳酸発酵が強く進んだ酸っぱい古漬けとも違うところへ着地します。

実際に作った人からは、「古漬けのような深みがあるのに酸味は穏やか」という感想も見られます。

この「発酵させながら、発酵を進ませすぎない」ような絶妙な作り方こそ、煎じきゅうり最大の特徴です。

鶴岡高専が煎じきゅうりを科学的に研究

煎じきゅうりは、単なる「昔の珍しい漬物」にとどまりません。

現在、その仕組みを科学的に解明しようという研究も進められています。

鶴岡工業高等専門学校では、学生が鶴岡市大鳥地区の煎じきゅうりに注目。漬け汁のpH変化や含まれている菌を分析し、独特の製法と味の関係を調べる研究を行っています。

2025年には、煎じきゅうりを研究した学生チームが「発酵を科学する」アイディア・コンテストで最優秀賞を受賞しました。

研究テーマは「特別な製法?! 煎じきゅうりの文化と魅力」。

地元の羽黒・のうきょう食品加工有限会社や地域の人たちの協力も受けながら研究が進められています。

昔から「こうするとおいしくなる」と受け継がれてきた方法を、現代の科学で調べ直しているわけですね。

何気ない毎日の「漬け汁を沸かす」という作業にも、きちんと意味があった可能性が見えてきます。

鶴岡でこうした食文化が残ってきた背景

鶴岡には煎じきゅうり以外にも、多くの保存食や郷土料理があります。

その背景にあるのが、非常に多様な自然環境です。

市域には2000m級の山々から庄内平野、日本海までがあり、高低差によってさまざまな農作物や山菜、魚介が採れます。季節ごとに手に入る食材をできるだけ無駄なく食べるため、漬ける、干す、発酵させるといった加工技術も発達してきました。

一度に大量に採れる夏のきゅうりを、すぐ食べ切るのではなく保存する。

しかも酸っぱくなりすぎないよう、毎日漬け汁を煮返す。

煎じきゅうりは、地域の食材と暮らし方が組み合わさって生まれた保存食と見ると、その面白さがさらに分かります。

小雪さんは煎じきゅうりをホットサンドにアレンジ

伝統的な煎じきゅうりは、そのままご飯のお供として食べるだけではありません。

『小雪と発酵おばあちゃん』では、小雪さんが煎じきゅうりを使ったホットサンドにも挑戦しています。

さらに2025年に出版された番組公式書籍には、小雪さんが提案した「煎じきゅうりサンド」も掲載されています。

これはかなり相性のいい食べ方です。

煎じきゅうりには、普通の生きゅうりとは違う塩味と発酵による風味があります。ピクルスほど酸味が強くないため、パンやチーズ、ハムなどと合わせても味が尖りすぎません。

細かく刻んで、

マヨネーズと合わせてサンドイッチにする、

ハムやチーズとホットサンドにする、

タルタルソースのピクルス代わりに使う、

ポテトサラダへ混ぜる、

といった食べ方も考えやすい漬物です。

昔ながらの保存食なのに、洋風の料理へ自然に使えるところも煎じきゅうりの面白さですね。

家庭で作るときに覚えておきたいポイント

煎じきゅうりを自宅で作るなら、まず熱湯を入れられる容器を使うことが重要です。

漬け汁を沸騰させて毎日戻すため、熱に弱い保存容器は向きません。

また、きゅうりが漬け汁から浮いていると漬かり方に差が出やすくなるため、漬物用の重石や押し蓋があると作業しやすくなります。

毎日漬け汁を扱うので、鍋、容器、箸などを清潔にしておくことも大切です。

発酵食品だから何が起きても大丈夫というわけではありません。異常な臭い、カビ、普段とは違う強いぬめりなどが出た場合は、無理に食べないようにしてください。

また、煎じきゅうりは塩を使った保存食です。おいしくても一度に大量に食べるより、漬物として少量ずつ楽しむのが向いています。

実用情報

番組名:小雪と発酵おばあちゃん 選 山形・鶴岡「煎じきゅうり」

放送局:NHK Eテレ

放送日:2026年9月10日(木)

放送時間:22:30〜23:00

紹介される地域:山形県鶴岡市

煎じきゅうりが伝わる地域:鶴岡市大鳥地区

主な材料:きゅうり、水、塩

特徴:熱い漬け汁をかけ、翌日から毎日漬け汁を沸騰させて戻す

食べ頃の目安:約1週間

味の特徴:古漬けのような風味がありながら、一般的な乳酸発酵の漬物より酸味が穏やか

アレンジ:そのまま食べるほか、ホットサンドやサンドイッチなど

まとめ

煎じきゅうりは、きゅうり、水、塩という非常にシンプルな材料から作られる鶴岡の伝統食です。

最大の特徴は、漬け汁を毎日沸騰させてきゅうりへ戻すこと。

通常の漬物なら、なるべく触らず発酵を進めるイメージがありますが、煎じきゅうりでは人が毎日手を加えます。その結果、乳酸菌の増え方が抑えられ、古漬けのように時間をかけても酸味が強くなりにくい独特の味になります。

さらに現在は鶴岡高専によるpHや微生物の研究も行われ、昔ながらの知恵が科学の視点から改めて注目されています。

『小雪と発酵おばあちゃん』を見て「これなら作ってみたい」と思った人が多そうなのも納得です。毎日少しだけ手間をかけて育てるように作る、鶴岡らしい発酵食です。

参考リンク

NHKオンデマンド「小雪と発酵おばあちゃん 山形・鶴岡 煎じきゅうり」

鶴岡工業高等専門学校「発酵を科学するアイディア・コンテスト」

ユネスコ食文化創造都市・鶴岡「鶴岡の食文化」


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