認知症の親の延命治療を考えるときは、本人の希望と医療チームの説明を確かめる
認知症の親が治療の希望を伝えられない場合、家族だけで延命治療の可否を即断する必要はありません。本人が以前に語った思いや大切にしてきた暮らしを手掛かりに、医師・看護師などと方針を話し合うことが基本です。2026年10月28日放送予定のNHK総合『あさイチ』は、高齢の親・家族の「病院治療」の終(しま)い方を取り上げます。いざというときに役立つ、意思確認の進め方と質問の仕方を整理します。
本人の意思が分からない場合も、家族だけで結論を出さない
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、最初に本人の意思を確かめることを基本としています。本人が希望を伝えられないときは、家族などが本人の意思を推定できるかどうかで話し合いの進め方が変わります。
以前に「できるだけ家で過ごしたい」「苦痛の少ない過ごし方がいい」などと話していたなら、いつ、どんな状況で話したのかを含めて医療・ケアチームに伝えます。日常の言葉だけで特定の医療行為への賛否を断定せず、本人の価値観を理解する材料として共有することが大切です。
そうした発言がなく、希望を推定できない場合もあります。その際は、家族が本人にとって何が最善かを医療・ケアチームと十分に話し合います。家族に判断を委ねて終わり、という仕組みではありません。医療の専門的な見通しと本人の人生観の両方を踏まえ、慎重に方針を検討します。
医師から治療の選択を求められたときに確認する4つのこと
「延命治療をしますか」と尋ねられても、どの治療を指すかによって意味が異なります。主治医の説明を聞く場では、次の点を個別に確認すると、家族で同じ情報を共有しやすくなります。これは特定の治療を勧める一覧ではなく、説明を整理するための質問例です。
① 何を目的とする治療か。 命を支える処置なのか、回復につながる可能性がある治療なのか。提案されている医療行為の名称と目的を確認します。
② 行う場合と行わない場合の見通しはどう違うか。 期待できる効果だけでなく、負担、合併症の可能性、生活への影響、不確実な点も尋ねます。
③ 苦痛や不快な症状を和らげるケアは何ができるか。 特定の治療を行わない場合でも、痛みや息苦しさなどを緩和する医療・ケアについて話し合えます。
④ いつ、誰と方針を再確認するか。 本人の状態や医学的評価が変われば、方針を話し合い直すことがあります。次の面談の機会、説明内容の記録方法、相談窓口も確認しましょう。
説明が難しいときは、「今の状態で一番大切な判断は何か」「家族が考えるために必要な情報は何か」と聞き直して構いません。急を要する場面と、時間を取って話せる場面を分けて確認することも有用です。
認知症でも本人の希望を聞く工夫と、家族の意見が割れた場合

認知症と診断されたことだけを理由に、本人の希望を聞く機会をなくさないことが大切です。厚生労働省の認知症の意思決定支援ガイドラインでは、分かりやすい言葉でゆっくり伝える、必要な情報を繰り返し説明する、選択肢を具体的に示すといった支援が重視されています。ただし、日常生活の意思決定支援と、人生の最終段階での医療・ケアの方針決定は同一の手続きではないため、実際の治療判断は医療・ケアチームと相談します。
本人が話せる時期には、「これからどこで過ごしたいか」「どんなことを大切にしたいか」「気持ちを代わりに伝えてほしい人は誰か」といった暮らしに根ざした話題から始める方法があります。話し合いの内容は日付とともに残し、本人が考えを変えた場合は記録も見直します。
兄弟姉妹などで意見が分かれたときは、家族の多数決だけで決めようとせず、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーなどに相談してください。厚生労働省の指針では、合意が難しいときに医療・ケアチーム以外の専門家も交えた話し合いの場を設けることが示されています。
治療の選択は、病状、回復の見通し、本人の希望によって異なります。医療行為を一律に「すべき」「やめるべき」と決めず、厚生労働省の「人生会議」の案内も参考にして、本人を中心に話し合うことが重要です。在宅療養という選択を考える際には、当サイトの地域で在宅医療を支える七山診療所の紹介も参考になります。
まとめ
認知症の親の治療方針を考えるときは、まず本人の過去の言葉や大切にしてきた暮らしを確かめます。希望を推定できない場合も、家族だけで結論を背負わず、医療・ケアチームと治療の目的・負担・見通しを共有することが基本です。状況に応じて話し合い直し、決めた過程を記録しておくことが、本人の思いを尊重する手助けになります。
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