「デリンジャー」の歌手・刀根麻理子がいじめ問題に向き合い続ける理由
2026年9月9日放送のNHK『午後LIVE ニュースーン』では、大人になっても苦しみが続く「いじめ後遺症」を特集し、歌手の刀根麻理子さんらが取り組むいじめ対策と課題を紹介します。
刀根さんと聞いて、1980年代のアニメ『キャッツ・アイ』を思い出す人も多いかもしれません。しかし現在の活動をたどると、歌手という肩書だけでは見えてこないもう一つの顔があります。自身もいじめを経験した「いじめサバイバー」として、長年にわたり子どもの心や命に関わる活動を続けてきました。
この記事でわかること
- 刀根麻理子さんの歌手としての経歴
- 自身のいじめ体験と著書『いつも心にヤジロベエ』
- ヒューマンラブエイドを仲野繁さんと始めた経緯
- 現在行っているいじめ防止教育や相談活動
刀根麻理子は『キャッツ・アイ』の「デリンジャー」でデビュー
出典:刀根麻理子公式サイト
刀根麻理子さんは1984年9月25日、テレビアニメ『キャッツ・アイ 2nd Season』のオープニングテーマ「デリンジャー」でデビューしました。その後は「ラプソディ・アゲイン」「一秒の夏」「マリオネットの夜」などを発表し、歌手だけでなくラジオパーソナリティー、CM、舞台など幅広い分野で活動しています。
公式プロフィールによると、デビュー前には「マリエ」の名で五木ひろしさんとのデュエット曲「デュオしのび逢い」に参加。さらにミノルタα7000のCMソング「一秒の夏」など、1980年代を知る人には懐かしい作品を数多く残しています。
ただ、刀根さんのその後を大きく方向づけたのは、芸能活動だけではありませんでした。
子ども時代のいじめ体験がその後の活動につながった
ヒューマンラブエイドの公式サイトで、刀根さん自身は「いじめサバイバー」と紹介されています。
幼い頃から慢性的な不安や寂しさを抱えていたこと、そして大人になった今も、過去のいじめによるトラウマが心の中で顔を出すことがあると明かしています。
2018年の取材では、小中高時代にいじめを経験し、当時は「死んでしまいたい」と考えるほど追い込まれたことも語られました。だからこそ、いじめを受けている子どもの苦しさを「外から想像する」のではなく、当事者として理解できることが刀根さんの活動の大きな土台になっています。
刀根さんが繰り返し伝えている言葉の一つが、
「いじめの最大級の復讐は、倖せになること」
という考え方です。
ヒューマンラブエイドの「いじめ駆け込み寺」でも、過去の出来事を今でも思い出すことがある一方、いじめに人生そのものを支配されない生き方を伝えています。
1997年に自身の体験をもとに『いつも心にヤジロベエ』を出版
いじめ問題への取り組みは最近始まったものではありません。
刀根さんは1997年、自身の体験をもとに『いつも心にヤジロベエ』を主婦の友社から出版しました。書誌上の著者名は「刀根万里子」となっています。主人公と同世代の小学生だけではなく、大人にも向けた作品として刊行された本です。
公式プロフィールでも、1997年前後から「いじめ~死を乗り越えて」「社会的おせっかいの勧め」などをテーマに講演活動を行っていたことが確認できます。
つまり、2026年の『ニュースーン』で突然いじめ問題に関わり始めたわけではありません。
その活動歴は約30年に及びます。
骨髄バンクのボランティアから「命」をテーマにした活動へ
刀根さんの社会活動は、いじめ問題よりさらに前に始まっています。
公式プロフィールでは1989年から骨髄バンクの普及啓発活動に参加し、その後、厚生省の「ストップ・ザ・エイズ」推進メンバーや「国民の健康づくり推進方策検討会」の検討委員なども務めたとされています。
2005年からは、アメリカ同時多発テロ直後に実際に起きた出来事を題材にした舞台『IMAGINE 9.11』を企画・制作し、自ら出演しました。
長年の活動を通して一貫しているのは、「命」と「人とのつながり」を扱っていることです。
いじめ防止活動も、そうした流れの延長にあります。
仲野繁とヒューマンラブエイドを立ち上げた
現在の中心的な活動が、一般社団法人ヒューマンラブエイド(HLA)です。
共同代表を務めるのは刀根麻理子さんと、元・東京都足立区立辰沼小学校長の仲野繁さん。仲野さんは約40年間の教員生活の中で、子ども自身がいじめ防止に取り組む「辰沼キッズレスキュー(TKR)」を育ててきた人物です。
刀根さんは「いじめ被害を経験した側」、仲野さんは「学校教育の現場側」。
異なる立場の2人が組んでいるところに、HLAの特徴があります。
2018年の取材では、2人が活動を始める前に100時間ほど話し合ったことも紹介されました。学校現場を知る仲野さんと、被害者の立場から遠慮なく意見を伝えられる刀根さんだからこそ、タッグを組むことになったといいます。
子ども自身がいじめを防ぐ「辰沼キッズレスキュー」
HLAが重視しているのは、いじめが発生した後だけではなく「発生しにくい学校をつくる」という考え方です。
その原型となったのが辰沼小学校のTKRでした。
2012年に始まった活動では、「いじめを、しない、させない、許さない」を掲げ、希望する児童が校内をパトロールしたり、困っている子に声をかけたりしました。開始当初23人だった隊員が、数か月で200人を超えるまで広がったことも報じられています。
大人だけが「いじめをなくしなさい」と指導するのではなく、子どもたち自身が「自分たちの学校を安全にする」という当事者意識を持つ仕組みです。
新潟県のいじめ対策ポータルでも、仲野さんの活動は「子ども主体のいじめ防止」として紹介されています。
歌と芝居で伝える「ぼっこ」も刀根麻理子らしい活動
刀根さんの歌手としての経験がそのまま生かされているのが、歌舞台『ぼっこ~いじめの復讐は倖せになること!~』です。
2015年から「いじめ撲滅15ヶ年計画」の一環として始まり、歌、ダンス、芝居を組み合わせて、子どもたちにいじめや命について考えてもらう取り組みです。
講演だけでは聞き流してしまうテーマでも、エンターテインメントなら心に残る。
歌手として歩んできた刀根さんだからこそできる、いじめ防止教育の形です。
現在も学校に出向いていじめ防止教育を続けている
活動は過去のものではありません。
足立区立竹の塚小学校では2024年12月、仲野繁さんと刀根麻理子さんを招いて教職員向けのいじめ防止研修を実施。翌2025年1月には児童向けの「いじめ防止教室」も行われました。
HLAでは現在も、いじめ防止教育の講演、特別授業、学校危機管理のコンサルティング、相談・カウンセリング、教材開発などを活動内容として掲げています。
さらに2026年には「未来人会議」と題し、いじめ防止対策推進法について考える模擬立法ワークショップなども展開しています。第2回は2026年10月4日に青山学院大学で開催予定とされています。
実用情報|ヒューマンラブエイドの活動を知りたい場合
HLAの公式サイトでは、いじめ防止教育、ソーシャルスキルトレーニング、相談活動などを確認できます。
学校や教育関係者向けの講演・特別授業だけでなく、相談者向けに「いじめ駆け込み寺」も設けています。相談については、問題によって専門家と連携しながら対応する方針が示されています。
ただし、現在進行形で暴力や脅迫などがある場合は、民間団体だけに頼らず、学校・教育委員会・警察など必要な機関への相談を並行することも大切です。
まとめ
刀根麻理子さんは、1984年に『キャッツ・アイ』の「デリンジャー」でデビューした歌手です。
しかし、その後の人生で大きな軸になったのが、自身のいじめ経験を出発点とする社会活動でした。
1997年には『いつも心にヤジロベエ』を出版し、その後も講演、舞台、相談活動を継続。現在は元校長の仲野繁さんとヒューマンラブエイドを運営し、「起きてから対処する」だけではなく「子ども自身がいじめを防ぐ」という教育に力を入れています。
『午後LIVE ニュースーン』で刀根さんが「いじめ後遺症」を語る背景には、単なる著名人としてのコメントではなく、自身の経験と約30年に及ぶ活動の積み重ねがあります。
参考リンク
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